往生極楽院3
「ひと月前に初めて会った人ですから、これから交際を続けてゆく内にもっと接点が広がりそうな人だと思っていたのに、こんなことならあの日もっと聴いておくべきだった。けど、人の命なんてこれだけはいつ途切れるか解らないものだとつくづく知らされました。あの時にあたしは十五、六段もある急な石段の上から逆さまに滑り落ちて頭などの打ちどころが悪ければあたしはあの日あそこで死んでいたかも知れないんですから、それを助けてくれた山下道子さんが亡くなられるなんて、判らない物ですね人生は」
と宇田川さんはちょっとセンチメンタルに俯いた。
「山下さんの生まれはこちらでしたか ?」
と美紀が突然に聞き出すと、ふと彼女は気を入れ直すように顔を起こした。
「それが……、その時は殆どが他にどんな観光スポットがあるのかしらと、観光名所の話で大半を占めていて、ここでこんな風に仏像やお庭をゆっくり観賞しているときですから、お互いの事を聴き合うところまで話が行かないもんですから……」
「そうか、身の上話を聞きに来たんじゃないもんね。観光で来てるから、それが当然なんよね」
美紀が納得した。
「でも話しぶりからすると道子さんは良く聴くと、ちょっと微妙にアクセントがいつもの関西弁とは言葉の語尾が少し違うのよ」
「へえー、そうなの、そんなの美紀、余り気付かないなあ」
「うん、夕紀もそうだけど。お互いの話に気を取られてそこまで考えない」
「それはあなた達は確か京大生ですね、じゃあ地方から来ている人もたくさん居てごちゃ混ぜで喋りまくっていればおそらく気付かなくて、その人の癖だと勘違いするんでしょう」
エッ、と夕紀と美紀は顔を見合わせた。




