往生極楽院2
「道子さんの話は判りにくいけど、それが途切れ途切れで時間が飛んじゃうの、でも亡くなって身寄りが居なけりゃあ生前に知り合った人から聴くしか無いわね」
事件で無い以上は警察も介入しないが、そうは言っても厄介でそれでいて、チョッピリとセンチメンタルに、因果な言付けを頼まれたものねと宇田川さんはここでも理解を示した。
「でもそれって役所の仕事じゃないの、大家さんは元よりあなた達も関係ないのに」
「誰も手を付けない、そう言うのを無報酬でやるのがこのサークル活動なんです」
そうか、とちょっと間を空けると「女一人」と謂う唄の最初のワンフレーズを口ずさんだ。
「随分と昔にあたしが生まれる前に流行った唄なのに結構知ってるのよね」
そこが恋に悩んだ宇田川さんと道子さんとの共通点らしい。
山下道子さんは五年前に亡くなったご主人とは、知人を通じて紹介されて、半年ほど付き合ってから一緒に暮らし始めたらしい。それが四十年ぐらい前かしら、丁度今のあたしと同じ歳だと思いながら聴かされた。
「紹介した知人はご主人の知り合いだったんですか」
「そうだと思います。そこの所は余り詳しく話さなかったもんですから」
どうしてだろう、過去を知られたくないのなら、なぜ部分的でも過去を話そうとするのか。彼女だからこそ解ってほしいものと彼女でも話せないものを、分けて語ったのだろうか。
「もっと詳しく山下道子さんの事を話せれば良いんですけど、なんせまだ会ったばかりですから、向こうも何処まで話そうかと警戒するでしょう。お互いの気持ちが通じるに従って小出しするのが普通ですもの。大事な物とそうでないものをその場の雰囲気で小出しすれば話が飛び飛びになるのでしょうね」
夕紀が抱いた不信感に先走って、宇田川は説明し更に山下さんの思いを補足した。




