今日の反省会4
雷鳥も大切に扱われたけれど、それだけに道子さんも旦那さんから大事にされたかも知れない。だからその想い出をサッパリと忘れる為にも、五年前に綺麗になくしたのだろ。それで後に残ったのは、あの膨大な大衆本だけって云うわけか。
「あの本は旦那さんの趣味で読み集めて道子さんは整理の片手間で読破して行ったのならどうだろう」
「なるほど、そうなると二人の共通点になる本は特に汚れるわなあ」
「それで中里介山の大菩薩峠か、それで美紀は持ち出して読むつもりだったのか」
「そうじゃあない。桜木の気を惹こうとしただけよ」
ハア、試行錯誤も甚だしい。それはないでしょうと夕紀は顔を顰める。
「でもいつから気になったのかは知らないけれど、ちょっとは効果が有ったみたい」
とほくそ笑んだ。
「それで美紀はどうなの」
「エへへ、向こう次第」
「誤魔化すなハッキリ言え」
云えば協力するかと美紀は夕紀に迫った。まあ桜木なら他のメンバーと違って、真面目で面白目には欠けるけれど。あいつも真剣さを出せばとんでもない行動に打って出るかも知れない。第一真面目くさがっている者ほど、慌てふためくのを見るのも面白い、と夕紀は協力を申し出る。
「いいけれど、それでどうなの」
「あの何事も理論化して取り組む姿勢が気に入ってるの」
「恋はそう言う訳には行かないわよ」
「だから頼んでるのよ」
「向こうもあの本にあたしが興味を持ったことに関心を示した」
それは伝わった。だから全二十巻を桜木は引き取った。美紀は頃合いを見て、あの本を読みたいと駄々を捏ねれば。桜木は乗ってくる。後は一回二冊として十回はあの部屋と往来できるから、チャンスは相当増えると夕紀がこの作戦を提案した。




