遺品を調査する3
桜木と米田は一階のタンスの引き出しを捜す。二階の和室では夕紀と美紀が手分けした文机から、最近の消印のある山下さん宛ての封筒で、裏には神戸の住所と宇田川由香と書かれた手紙が見つかった。
「これって山下さんが亡くなる前の日付けの消印だ。最近この家の人を訪ねて解らずに夕紀の店に来た人じゃないかしら」
「お父さんが云う、最近山下さんと会った人がこの宇田川由香さんなら、この前は亡くなった知らせに動揺して直ぐに帰ったらしいの、だからジックリと話せば何か親兄弟、親戚でも解るかも知れない」
取り敢えず固定電話が在れば電話帳に載っているかも知れないと、さっそくみんなはこの家にある古い電話帳をめくってみた。繋がったのは宇田川由香の実家だった。三千院のはずれ道で営業している喫茶店ですと名乗り出て、宇田川由香さんに折り返し電話を頼んだ。
文机の引き出しから他に山下道子さんの、おそらく若い頃の写真が四枚出てきた。そのうちの一枚はアベックで白い車の前で写っている写真だった。当然彼女の隣に写る歳の近そうな男性にみんな注目した。
「いつ頃の車だろう、こんなダサい普通車なんて見かけないね」
「これは昭和のしかも空冷エンジンの車だ。昔は急な長い登りの坂道とか渋滞するとオーバーヒートして車を停めてボンネットを開けてエンジンが冷めるまで待たないで、そのまま走り続けるとエンジンがイカれてしまうんだ」
「エッ ! 信じられん」
米田が目を剥いて言った。あの頃は水冷エンジンなんて少なくて、オートマチック車なんて夢の時代だ。それでも戦中、戦後に生まれた山下夫婦には青春の一コマだった。




