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遺品を調査する2

「俺の忠告を寝言で片付けられれば世話ないよ、だから読むのは止めとけ。あれは俺が持って帰って美紀の気力が充実するまで封印しておくよ」

「その方が良いなあ、あの本だけ汚れているから多分買い手がないだろう」

 米田が真っ先にそろばん勘定で、あの全集を売却目録から真っ先に閉め出した。

「それより、あの本は奥さんかご主人かどっちの愛読書だと思う」

「旦那さんがどう言う人かサッパリ解らなければ無理よ」

「俺が思うに、あれは多分上司から理不尽な扱われ方をしていた人があの本を愛読していたと思う」

 桜木が特定の人物を避けて一般論を語った。これにはみんなは訳もなく沈黙した。

 そこでカウベルが新たな来客を告げると、あのベルがなんか籠もったフラットな音色に聞こえるのは何なの、と美紀はボソッと囁く。

「そんなことは無いだろう。草原に放牧された牛が草を咀嚼して育む牧歌的な風景を思い起こさずにはいられない響きだと俺は想う」

「流石は立原道造を愛読する詩人さんね」

 夕紀はちょっぴりと皮肉っぽく喋る。

 来客はこれから三千院へ行く客か、帰って来た客か解らないが、ちょっと疲れて離れたテーブル席に座った。その女同士の二人連れは、良い珈琲の匂いに誘われて、これ頂戴とマスターに注文していた。

「ひょっとしてこの店はもう三千院からの帰りの人が立ち寄る時間帯じゃないか。もう昼過ぎだからこれからお客さんが増えれば俺たちはお邪魔虫に成るよなあ」

 桜木のひと言でソロソロおいとましないと、と引き揚げた。夕紀はテーブル席の後片付けをしてから、表で待たした三人と一緒にあの家に戻った。


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