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遺品を調査する1

 片桐は娘から昼食をご厄介になると連絡を受けていた。少ないメニューが幸いして四人分は腕によりを掛けた味付けが出来た。それが証拠にみんなが頼んだ物は、後の食器洗いが楽なほど綺麗に食べてくれた。これで仕上げは更によりを掛けて、選んだ豆を精製した珈琲を淹れた。苦み、酸味、甘みこれが見事に調和したブレンドコーヒーが出来上がった。四人は至福の時を口に含んで瞑想するように飲んでくれた。今時の若い者には珍しく全く作りがいのある者達だから、話す内容まで澄んで聞こえるから勝手なものだ。

 四人は食後の美味い珈琲を味わいながら、本の整理はひとまず置いといて、日用品の中から探そうとする。これに誰も異議を唱えない。即ち書物から得られる思想信条では本人以外の身内には、中々辿り着けないと云う結論に達したからだ。それに何処にでもあるような大衆小説が、書棚の大半を占めているのにも、みんな辟易し始めていた。    

「一番がっかりしているのは桜木君だろうね。お目当ての本が余りなくて」

 夕紀ゆきは誘った見返りがなくてどう慰めて良いか思案しているようだ。そこへ美紀が中里介山の大菩薩峠を持ち出して「ねえあの本あたしが貰っても良いかしら」と急に言い出した。

「お前、急に老けたのか」

 桜木君にお前呼ばりされたくない、と美紀は膨れっ面する。

「どう言う風の吹き回しであんな化石のような本に気が向くなんて」

 だって老巡礼者を理由もなく最初に殺してしまってから、生きているのか生かされているのか、その意味を問うためにまた人を切る。まるで救われぬ魂を追い求める自虐的な行為に、一体どんな活路を見出せると云うのか。また主人公がそんな泥沼の深みにはまり込めば、まるで終わりの無いエンドレステープのようだと云う桜木君の寝言が気になったらしい。


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