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片桐浩三3

 旅行者は帰りのバスを気にして飲み物以外は頼まない。今日は久し振りに珈琲以外にクリームやフルーツのチョコパフェの注文を受けた。片桐は直ぐに奥で作業を始めた。優香はカウンター席から、片桐の手際よい手作業で出来上がる各種パフェを物珍しそうに眺めた。

 あいつにこの仕事が務まるのなら、俺の一存で引き受けても良いぞと。もし来るなら母の芳恵には、秀樹の事は納得させると云っている。

「あの子、台所に立ったことがないのよねぇー」

 不安げに答える優香に「甘やかしすぎて何の役にも立たないのか、それでまた三浪させるとは呆れる」と云う間に、出来た三つのパフェを丸い銀盤に載せてお客の居るテーブル席へ持って行った。

 優香はテープ席から戻って来るまで片桐の一連の流れを目で追っていた。奥の流しで手を拭き取ると、またカウンター席の前に立った。

「頭になんぼ詰め込んでもしゃあないやろうと思うのならここへ秀樹を寄越せ。その方があいつにはいい勉強になる」

 優香は考え込んだ。

「マスターまた来ちゃった」

 とそこにリピートの旅行者がやって来た。彼女は端のカウンター席に座ると、沈黙する優香を置いて、片桐もそっちへ移動した。

 彼女はカウンター席に座るなり、ひと月前に三千院で出会ったおばあちゃんに会いに来たらしい。何でもここから下にある駐車場の向こうの方に住んでいるらしい、と彼女はおばあちゃんに聞かされた。そのおばあちゃんに書いてもらった住所と名前を見せられた。

「ここだけど、どう行ったらええの」

 どれどれと注文の珈琲を出しながら受け取った。

「ウッ! これは、この人に、あんたいつ出会ったの?」

「マスター、その人どうかしたん」

「どうもこうもあらへん、二週間前に亡くならはった」

「ハア? でもこの前は元気にピンピンしてはったけど」

「そうらしいがなあー」


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