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片桐浩三2

 テーブル席へ座ったのはあの日だけで、それ以後は必ずカウンター席に座って対面するようになった。

 やって来ると、いつもあの日の再会いを思い出す。その度にあれは気まぐれな春の雪が優香を運んで来たと思っている。一度はそれを口に出してみると、優香はふくれっ面をする。だが本心は怒っていない。それが証拠に直ぐに笑って誤魔化されていた。

 今日もまたその優香がお客で来ている。どうやら公立を二度続けて落ちた秀樹の相談らしい。

「それは夕べ娘から聞いたよ」

 夕紀は公立の大学を諦めて私立か働くか、お母さんでなく自分でどっちかにしろと云ったらしい。要するに秀樹に、もうそろそろ自立しろと促したのだ。それを息子から聞かされた優香は相当に落ち込んでここへやって来た。もちろん息子の前ではいつもの威勢を張ってるそうだ。

「それでお前はどうするんだ秀樹の本音を何処まで聞いたんだ」

「あんたのとこへ行きたいって」

「俺の実家で暮らすのか?」

 秀樹の部屋は俺が使っているが、来るのなら空けてここで寝泊まりしても良いと考える。だが何処まで本音なのか、優香は確かめていないようだ。曖昧な返事でそれが解った。

「本人から話を聞いてやるから一度ここへ秀樹を寄越せ」

 そうね、と優香はまた曖昧な返事を続けるから、迷ってるのはお前なのかと問い質すと、そうだと優香は白状した。そこへ賑やかにカウベルが鳴った。若い女の子の三人ずれで、三千院帰りの旅行者だ。


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