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橘美紀4

「でも中々顔を見せ無かったのに残された本の処分で呼び掛けると一も二もなくやって来るんだから……」

 夕紀はそれでも何とか福祉に対して、理論武装する桜木の鎧を、少しでも払拭出来ればと成果を期待している。

「でも案外に身内とか恋人とかの急な死に直面すれば恥も外聞もかなぐり捨てて泣きわめくタイプだよ、あの桜木って男は」

 美紀は何処からそんな発想に結びつくのだろう、とぬるくなった紅茶を啜ると、「おう、そうだ、島根から届いた煎餅があった」と出してくれた。ついでに熱い紅茶を淹れ直してくれた。

「これは島根の特産なの?」

「さあ解らんなあ。とにかくばあちゃんが好きだったからそのまま引き継いでる」

「なーんだ美紀もおばあちゃん子なんだ」

 でもうちと違って家族が多いらしい。それで忙しい美紀の家ではおばあちゃんが一番、手が空いていたらしい。そこがうちのお父さんのように、離婚して男親では娘は育てきれんと、おばあちゃんに任されたうちとは違った。田舎では出戻りは目立つらしいけど、みんな表だっては騒がない。でもこちらでは気付かないせいか、世間話でそんな話を噂好きなのかよく聞くらしい。それを美紀は、都会の人は油が切れた機械のようでギスギスして、みっともないと云っている。

「でも夕紀もおばあちゃんに育てられたせいか、そう言う処がないからあたしもサークルへの誘いにはすんなりと受け容れられた」

 他の男どもがそう言う話を表立って堂々と喋るところは、却って気にならないらしい。そこが他の女の子と違って、美紀はちょっとサッパリしていた。


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