橘美紀3
米子市や松江市は都会と思っていたが、関西へ来てガラッと生活様式まで、彼女は短期間で夕紀の影響もあるが変えてしまった。それでもこの孤独死は、美紀にはかなり堪えているようだ。それはサークルの連中が、バカ騒ぎする中で、美紀が独り沈んでいたからだ。
「それで今日の夕紀の話、山下さんだったけ脳溢血って自然死じゃないでしょう。発見が早ければ助かる可能性が高いけど三日後に玄関でしょう、きっと頭痛がして病院へ行こうとして倒れたんでしょうね、でも誰もそんな話をしなかったのが怖過ぎる。みんな人ごとには違いないけれど、それでも人の死をどう思ってるんだろうね」
「桜木を除いてはね」
「そうか、あいつ文学部か。だけどあいつ哲学を専攻しているから専ら尊厳死を扱ってるんだろう。だから変に気取って話に乗ってこれないんだ」
「でもあの談議で孤独死の話はみんな人ごとみたいに全然乗らなかった。もっぱら家財道具をどうするかで熱中するなんて、バッカーみたい」
「都会じゃあみんなそうなんだ。だから他人が世話を焼く、そこを煮詰めるのがこのサークルの利点だけど、美紀はそれが逆の発想で入ったんだ」
桜木の場合は、死は単なる終着点だと云うが、それが尊厳死と繋がっていると理屈を付けて入部を誘った。けれどそれは遺された者たちの考えであり、あの世へ旅立った者には何の意味も無い。まさに遺された者たちの自己満足にすぎない、と主張するあいつは本の虫だった。そんなもんは本の中で追求すべきで、現実社会は生きることを目的にして福祉は考えるべきだと、意見してもけんもほろろにあいつに無視された。偉い人が書いたそんな絵空事で本当の人生が解るか、と桜木にひと説教しても、それは住む世界が違うと一蹴されてしまって、彼の入部は諦めてもっぱらオブザーバーとして呼んでいる。




