さークルでの談義4
賛成、賛成とみんな騒ぎ出した。この浮かれように、これが善意から出た行動なのかと首を傾げたくなる。その内に誰かが、一番売れるのは全集物じゃないかと言い出すと、独り桜木は眉を寄せて腕組みをし始めた。福祉を掲げるサークルとして、これには夕紀も少しは胸を痛める。
「今一度言っておきますが整理は二の次で、これはあくまでも山下道子さんの遺産を国庫編入への阻止ですからね」
と念を押しても当然、当たり前だろう、今更何も言わなくてもそれに賛同する声が挙がる。独り橘美紀は「もっと真面目に議論してよ」と気炎を吐くが、男どものヤジに似た声に掻き消されそうだ。この周りから掛かる多数決の声に、夕紀は何処まで信頼して良いか途方にくれた。
とにかくそんな問題よりも世情に関心を寄せる。そんな連中だから、夕紀の提案は直ぐに受け容れられる。さっそく次の日曜日には、孤独死した山下道子さんの家に乗り込む事になった。
会議を終えて散り際には、みんなはお宝は眠ってないか、と耳が痛くなる雑談を聞き流して夕紀は部屋を出た。
解散した後に招待者の桜木が、夕紀の後を追っかけて来た。
彼を呼んだのは、事前に主立ったメンバーに、山下さんの大量の書物をまだ見ぬ前から「全集物が多いと聞いたけどどうだろう」と問えば、その方面の知識が乏しくて殆どがお手上げらしい。それで夕紀は本の価値を知る文学部の桜木を同席させた。
「その古本ですけれど全部引き取って新入生歓迎会のバザーで売ればどうですか。全集は一般市民相手のフリマでは売れないでしょう?」
夕紀の提案に桜木も頷くが、買い手とのマッチング、相性を重要視した。
「その前にどんな傾向の本があるか、話だけでは解らないですね」
彼はいたって慎重派で、あの適当に扱う連中からすれば、頼もしい存在でもあるが、桜木は「孤独死したおばあさんの本なんて大衆向きで知れてる」と取らぬ狸の皮算用だと笑った。




