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滝川は道子の家に来る3

 それだけ若さが冒険心を引き立てて、未来が拓ける。が恋には諸刃の剣だと滝川さんは、あたし達に遠回しに語っているようだ。その心境に浸る前に道子さんの住まいに到着した。そこで夕紀は戸を開ける前に、先ずこの前のように小さな郵便受けから中を覗いて彼女の発見時を再現した。

「そうでしたか」

 滝川は神妙に道子の死を受け止めて家に入った。三和土(たたき)で三人は(おごそ)かに合掌して家に上がった。

 中はそう広くないが夫婦二人なら十分すぎる広さがある。滝川が踏み出す足の運びまで何処か初々しさが感じられたのは、夕紀ばかりで無く桜木も同感らしい。そんな二人の眼差しには滝川は無頓着に、まるで子供の様に上がり込んで行く。それは五十年の過去を埋めるような軽い足取りに、思わず滝川さんの八十近い歳を忘れさせた。

 人を思う心に歳は関係ない。ましてその原動力が初恋の人ならば尚更らしく、当事者以外は何人も計り知れないものだ。

 滝川はこの時に道子の短歌の創作ノートを持参していた。彼はそれを遺品と照合するために持参したらしい。

 家の中は主立った家具は殆どがなくなり、がらんとした中に本棚だけが有り、さしずめこぢんまりした家庭的な図書館のようになっている。その他には私物が詰め込まれた幾つかの段ボール箱があるだけだ。

 三人は居間の書棚と二階の道子さんが使っていた和室の書棚に並ぶ書物を検分した。


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