滝川は道子の家に来る1
お母さんが離婚して家を出たのは、おばあちゃんとそりが合わなかっただけで、決してお父さんを嫌いになった訳じゃ無い。母の最近の行動でそう確信したが、お父さんの母への理解が足らなかったのも一因だ。夕紀はそう思うと気持ちが軽くなった。そうでないとサークルでの対立が起これば、めげずに立ち向かう気力を養う必要があるからだ。先日の鴨川デルタでの一件から夕紀はそう念うようになった。
道子さんの遺品に付いては最終的には滝川さんが納得すればこれで終わる。今日の案内は夕紀に取っては、これで肩の荷が下ろせて気持ちを楽にになり、バス停へ向かう足取りも軽くあぜ道の花にも目が向いた。
出町柳が始発の三千院行きのバスの到着より早く着いて、夕紀がバス停で待っていると滝川さんはやって来た。
桜木君に付き添われて一緒に降りた滝川さんを迎えた。道子さんは想い出が詰まった三千院の近くで暮らしていた。それを知った滝川さんは胸がキュンとなっているようだ。それはやって来る足取りからも解った。どうやら桜木君からここに店を出している事情を説明したのか、父についても滝川さんは羨ましがっている。
三人はバス停を離れると一路、道子さんの借家へ向かった。新学期が始まる前の最後の春休みを私事で潰して申し訳ない、と滝川に言われたが。これで終わると思えば悪くない気分でもある。桜木君もそう言う顔をして快く引き受けたらしい。
「市内からかなり外れた郊外だけあって長閑な所ですね」
バス停に繋がる国道沿いから裏道に入ると、滝川はスッカリ気に入っている。
「でも、近所にはスーパーマーケット擬きのコンビニに足が生えたような店が一軒在るだけですから、日用品以外の物が欲しいときは苦労しますよ」
桜木君が夕紀の不満をホローしてくれてありがたい。




