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三千院への想い1

 三千院はずれ道の喫茶店は、春休み最終日まで賑わっていた。孤独死のばあさんの身元が判り一段落して夕紀は店を手伝っている。母もいつもより空いた時間をやり繰りして父に会いにやって来る。これには夕紀もお母さんは何を考えているのだろうと思うが、それだけ親の恋は娘でも思いも寄らないものだ。

 朝の開店前に父と共に準備をする。父はまさかあの孤独死のおばあさんの身元がこんなに早く解るとは、流石に夕紀はたいしたもんだと言われたが本当は桜木君のお陰だ。それを遂に言いそびれ、まあいいかと準備に追われているところへ母がやって来た。

今日はパートは休みらしいから来るとは思っていたが、まさか開店前に来るかと呆れているが、お父さんは気前よく迎えている。

 そんな母を知りたくもないのに「どうした」と父はいつもの癖で聴いてしまう。それで母は調子に乗り横暴に構える。いつも最初が肝心だと言っているが、そんな父を見ると夕紀も意見が出来そうもない。

 両親は開店前のカウンターを挟んで向かい合ってお母さんは座って父の淹れる珈琲を眺める。父はお客さんと同じ要領で蒸らせて淹れている。そこに何の感情移入も見られない。この二人は珈琲が出来上がるまで、時が止まったように表情にも変化がなかった。それが淹れ終わり母の前に湯煙の漂う珈琲を置くと、先ず表情を崩した母が一口飲んで父を褒めた。

 テーブル席を拭いている夕紀にはそれが味なのか接客マナーなのか思案するが、父には珈琲の味だと直ぐに見極めるところに、夕紀には及ばない微妙な空気の流れを読み取る元夫婦らしい一面を見せられた。


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