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波乱の予兆1

 桜木にすればありがた迷惑だが、一応はこの場をまとめる必要に迫られる。

「俺の去就をみんな心配してくれているようだが、まだこれで全てが終わった訳じゃない。だから道子さんの遺品が全て片づくまではまだ気が抜けないからしっかりやり遂げよう」

 桜木はこの場を何とか取り繕う。何故こうなっているのか、美紀が心配するならまだ解るが、ともかく夕紀があれほど桜木の去就に対して、意固地に主張するのも珍しい。だから米田と美紀は「なんで?」と反応しただけだ。

 この二人から同時に怪訝な顔付きで見られて、夕紀は慌てて「何でもない」と引っ込めた。しかし桜木は尚も傍観していると言うより、これに対する対処法のマニュアルが彼の頭の中では構築されていないのだ。いかに本から取り入れた物事には臨機応変に対処できても、現実に於いて男女の微妙な感情のもつれには、全く取り(つくろ)えない事を(さら)け出している。だから夕紀はそれをいち早く見抜いて前言を翻した。

「何だよ夕紀、お前、可怪(おか)しいんじゃないか。桜木はお前が本の整理に呼んだだけだろう。それ以上の事を求めてもしゃないやろう」

 米田は桜木のお役御免を強調している。そもそも学部が違う、総合人間学部と文学部の違いだが、しかしサークル活動にはそれは支障無い。しかしカリキュラムが違えば新学期が始まると活動日程の調整が難しくなり、美紀と夕紀はもっと関わって欲しいようだ。

「じゃあ桜木君に内のサークルに入って貰えば良いんじゃないの」

「今まで入部活動をしてこなかった夕紀がどうして急にそうするんだ」

 米田は尚も不満らしい。

「桜木君の実力を過小評価して入部活動はしなかっただけよ、でも彼ならこれからの活動にはなくてはならない存在になるでしょう。でも急に言われても部員全員の意見も聞かないとね」

 夕紀は一応は独走を避けた。


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