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滝川の告白3

 選別され研ぎ澄まされた老いた者の経験に従えと言ってるようなもんだ。と滝川老人は若い彼女らに良い人生の師匠に育てられたと自負している。

「でも恋だけは千差万別で理屈じゃないですよ、だからそれを間違えれば人生そのものが狂ってくる」

 道子が狂わしたのかわしが狂ってしまったのか、彼女が亡くなった今は確かめようがない。五年前に出した手紙は感情抜きにしてそれを確かめたかったが叶わなかった。若いこれからの諸君らに、恋の真髄をどう説明すれば良いのか解らない。

「その心配は要りませんよ。僕たちは大学で勉強してますから」

 と言う米田に、老人はちゃんちゃら可笑しいと言う顔をした。

「それは学ぶ物でなく会得してゆくもんだよ。いろんなタイプの人間がいる。そんな物を十把一絡げに学問として教えられるもんじゃないよ。だから一つ言っておくと成就された恋も片思いの恋も同じ恋なんだ。俺が片思いしたから言うんじゃないが片思いと言うが向こうだって自分は思われていると知ってれば気に入るかどうかは別にして、いつか笑って会える日が有れば立派に恋は成り立つ。諸君はそんなの恋じゃないと思っているがそうじゃない、相手に対して気持ちが(ひらめ)けば、そして相手も自分に心を寄せてる存在に気付けば拒否しょうが受け入れようが、そこに感情移入が働けばそれは恋だと思う」

「滝川さんのおおらかなところに甘えてひとつお聞きしたい。仰るのは一般論でそれが道子さんとの恋に当てはまるのですか」

 桜木にすれば生の本当の恋が聞きたい。

「先ず恋は憎しみを募らせるので無く、何処まで許せるか許容力が試される。これが恋の秘訣だとこれから恋に落ちる皆さんにひとこと助言しておきたい。で道子との恋ですが彼女は打ちひしがれてどん底の時に現れたから私にはまさに天使でした。でも天使が恋をしたらもう天使じゃなくなるんです普通の女になるんです」


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