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滝川に会う3

 亡くなった相手は知らないが、多分道子が読んでいただろう。時代物の大衆小説の方は、おそらく亡くなった相手かも知れない、面白可笑しく受けを狙ったものには彼女は興味を示さなかった。

「嗚呼、ひとつ、短歌を投稿した事が有ると言っていた」

「それでどうなったんです」

「それっきりだから結果はよく無かったんじゃないかなあ。それ以後は一度も話題にしなくて黙っているけど、相当の葛藤を胸に秘めていたと思うから聴けなかった。だからこそそう云う時代物の娯楽小説に真髄する人を相手に選んだのかも知れない。それで私は振られたと言ってもいいだろう」

 少しでも恋が絡むと桜木は理解するのに手を焼くようだ。この隙間を埋めるようにここで夕紀が言い出した。

「でも素敵な出会いがあったんでしょう三千院で、あたし道子さんを知る別な人から伺いました。宸殿から往生極楽院が正面に見えるあの場所に佇む滝川さんの深刻な顔付きに驚いて声を掛けられたそうですね。三千院で初めて巡り会った道子さんはどんな素敵な人だったんですか」

「深い洞察力と慈悲の心を持ち合わせていたからこそ声を掛けられたと思っている」

「だったら振られたんでなく、滝川さんだと創作に支障が出ると思ったのでしょう」

「そんなことはない。私は全面的に協力する」

「じゃああの車は手放されたんですか」

 ここで夕紀に代わって桜木が問う。なんか二人に交互に攻められると辛いが、それだけ道子の事を考えてくれていると思うと、嬉しさも少しは込み上げてくるようだ。

「いやそれが、やっと手に入れた憧れの車だからそう簡単にハイそうですかとはいかない」

「それは滝川さんのエゴみたいなもんじゃあないのかなあ」

「男のあんたにそう言われたくはないが、それを道子にそのまま言われてしまったよ」

「あたしはそうとは思わない」

 美紀が突然言い出す。


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