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家路に着く4

   京都大原三千院 恋に疲れた女がひとり

   結城に塩瀬の素描の帯が 池の水面みずもにゆれていた

   京都大原三千院 恋に疲れた女がひとり   

「こう言う歌だったのね、なんか小さいときに聞いたような感じがしてきた」 

 優香は想い出したように口ずさんだ。浩三もなるほどこの唄なら恋多き若者が刺激されてやって来そうだ。

「俺のような中年になっても和服の女性が憂い顔で佇んでいる姿を想像すると行きたくなるわなあ」

 と語りかけても、優香はこのメロディーしか今は聴きたくないと云う顔をした。

 二番は京都、栂尾、高山寺、大島紬に綴れの帯で、三番が京都、嵐山、大覚寺、塩沢絣に名古屋帯と続く。

「これって市内から外れた洛外だから、おそらくバスであの杉林と川に挟まれた国道をずっと走り続けていれば、この唄もなんかしんみりしそうね」

 と言われて、今度は浩三が無視する。

 いつもあの近所の老人連中がかけている時は、仕事に追われていたが、今こうして店を閉めて聴くと「しみじみとしてくるものが確かに有るなあ」とCDを仕舞い、優香には珈琲を飲み終わるように催促した。

「あんたは家へ帰ればあの婆さんが食事を用意して待ってるが、あたしはこれから食材を買って作るのだから、もうちょっとゆっくりさしてよ」

「秀樹が待ってるだろう」

「今日は遅くなるって言ってある。今頃はあの子はレトルト食品を勝手に出して食べてるわよ」

「それじゃあ栄養バランスが偏るだろう。お前はうちの母親を馬鹿にするがちゃんと栄養を考えてくれてるからなあ」

 お陰で夕紀はおばあちゃん子になって、しっかり者になってくれた。そこが秀樹とはえらい違いだと優香に当てつけた。

「分かったわよ。もう帰るわよッ」

 彼女は息子を貶されて気分を害したが、自分の育て方にはまだ踏ん切りが付けられないようだ。


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