サークルでの談義1
夕紀は午前の講義を終えて、昼食を摂りに学食へ行くと、弟の秀樹に出くわした。学食で食べている彼の前に、トレーに昼食を載せたまま前の席に座った。
「まだ大学生でもないあんたがここへ何しに来たん」
「見りゃあ解るだろう昼飯食いに来たんだよ」
ばっかじゃあ無かろうか。もっと気の利いたものが言えないか、と夕紀は笑った。
「あんた、お母さんにお弁当作ってもらえなかったんか、それでわざわざここへやって来たってわけか、浪人生じゃあしゃあないけど。いつまでも脛を齧ってないで進学を諦めて働いた方が良いけれどなあ、あの母さんがあんたをまだ一流大学に入れるのを夢見ているのならもっと頑張れよ」
「俺は姉貴と違って京大は無理なんだよなあー」
「そうか、今年も無理で二浪目ならもう私学に入るか、でも母さんが泣くよなあ。でも母さんの詰め込み主義が悪かったのなら自業自得だ。秀樹もソロソロあの母さんから離れろ、自立しろ」
「でもよ、お袋はもう諦めてると思う、ただ意地っ張り何だよ。それより親父の店は結構上手く行ってるだろう、いい加減によりを戻せば俺ももっと楽に生きられるのになあー」
「それで母さんから逃れても目的があればいいが無ければどうするの。いよいよニートになれば母さんもだけど、内の父さんも嘆くどー。でもそれはおばあちゃんが許さないわよッ」
「どう許さないんだ」
「おばあちゃんに言わせれば、生きる値打ちが無い者はサッサと死ねと云うもんね」
ばあちゃんは必ず死ねとは云わずいねと言う、これが唯一の思いやりらしい。
それは早くから自立心を促す祖母なりの、人生に立ち向かう為のシグナルなんだ。弟はどうやらそれに気付き始めたらしい。それで弟はおばあちゃんの家に行きたいと言い出すと、自分の尻拭いは自分でしろっとサッサと夕紀はトレーを持って席を立った。
お父さんもお母さんを、夕紀と同じ目で見ている。それは最近になって店にやって来るお母さんを見て「夕紀、あいつは何しに来てると思う。俺が思うには秀樹からかなり云われていると睨んでいる」と云った通り。今度の受験で落ちたのが、母と弟に相当な亀裂が生じて、危ない事になっているらしい。それは店で母が、父に突っかかる姿で確信できた。




