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第1章 母と子とその先へ

長い長い時を超えて、母親と養子はどんな時も一緒に過ごした。凍った湖で一日遊んだ後、ふたりはぐっすり眠りに落ちた。世界が厚い雪に覆われた日には、ルルリアは不器用に赤小悪魔のためにセーターを編んだ。太陽が顔を出すと、二人は衣服を洗濯し、洗濯物を外に干した。


毎晩、彼女は子に数え切れないほどの物語を読み聞かせた。


小さな丸太小屋は、スパイスと砂糖の甘い香りに包まれた。


春が訪れると、ふたりは川辺に出かけ、釣りという単純な楽しみを満喫した。


夏には外で遊び、冒険して、毎日が探検のスリルに満ちていた。


そして秋が訪れ、世界を金色、マゼンタ、深紅の色合いで染め上げ、暖炉の音に耳を傾け、この季節のご馳走に舌鼓を打つように誘う。


冬が戻ると、ふたりは厚手の毛布にくるまって寄り添い、ポカポカ暑いお気に入りの飲み物を味わう。


時間はあっという間に過 、季節は巡る、年月は何世紀にもなった。そして...



「ね、ママ、帰りたい」


「分かった」


手首をひらりと動かすと、ルルリアは魔法で彼らを連れ去った。一瞬にして、故郷の見慣れた風景に戻った。


眼前には、きらめく星々が織り成す果てのない織物が広がり、そのひとつひとつが広大で暗い宇宙の海に散らばるかけがえのない宝石だった。月は上空に垂れ下がり、夜の静謐な波間を航行する荘厳な船だった。

甘く土の香りが漂い、その下に咲く白い花の柔らかなざわめきに溶け込んでいた。青々とした花の絨毯はかすかに輝き、天の輝きを反射していた。そこは郷愁の楽園だった。永遠に続くかのような苦難の旅を終え、二人は始まりの場所、運命の出会い、その場所に戻ってきた。


「相変わらず綺麗...」キルヴァニャは、少し憂鬱な気分を漂わせながら、驚きのため息をつき、つぶやいた。「ママ、いつも迷惑をかけてしま

ってごめんなさい」


「ううん、迷惑じゃない。こんなの朝飯前だ。どんどんおねだりして!」


「もういいよ。これでいいの。最後の願いを叶えてくれてありがとう」


「ねえ、ママ」


「ん?」


「こんな僕を育ててくれてありがとう…」


「違う」とルルリアはつぶやいた。その声は、厳しく刺すような冬の風に吹かれたもろい葉のようにか弱かった。「逆だ。ボクを母親にしてくれてありがとう。キミはボクのすべてだ、キルヴァニャ。キミのいない世界なんて意味がない」


ええ、キミのいない世界なんて意味がない。


終わればいい。


何度も何度も、もしものこと考えてしまう。もしあの時、あの木の原始精霊の助言に従ってキミを養子にしなかったら、キミはもっと長く生きられただろうか?でも、本当にごめんなさい、キルヴァニャ。たとえ時間が巻き戻ったとしても、ボクはキミの側にいたい。


これは、母親と引き取られた悪魔の子との温かい思い出の物語。


そして


《世界》の終わり



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