尋問からの反撃
ノアツ王国に魔王討伐に出た軍が戻ってきた。1万の兵を持って挑んだ魔王討伐であったが、戻ってきたのはザナンとライゼルそして歩兵の3人のみ。民衆は如何に過酷な戦であったかに思いをはせた。それでも3人が戻ってきたのだ。魔王の討伐に成功したに違いない。歓喜を持って3人を出迎えた。
そして3人は特に多くを語らず、ただ姫様に1番にご報告したいことがある。そう言うのみであった。
そして3人は、真っ直ぐ姫の居る王城へ向かったのであった。
3人の帰還の報告を受け、直ぐに姫であるアンナが3人からの報告を受けるため彼らを王の間の来るよう伝えられた。
「良く帰ってきた!俺らの英雄よ!」
作戦の成功を疑っていないアンナ王女は、満面の笑みで3人を迎えた。
「姫様自らお声かけ頂けるとは光栄の極みにございます」
2人がニコニコを声をあげる。
「して?成果はどうだったのだ!まさか3人しか帰ってこないとは思わなんだ」
そこで沈痛な表情をするアンナ。それを見て王の間にいる他の大臣たちもこの戦で亡くなった兵たちの事を思い、王の間全体が沈んだ空気になる。それを払しょくしたのもアンナ王女であった。
「だが、お主達が帰ってきたのだ。魔王討伐は成ったのであろう?これで平和な世が訪れる!」
その言葉に他の大臣たちも「おぉ!」と歓喜の表情を浮かべる。
しかしその場に水を差すような言葉がザナンとライゼルから齎された。
「申し訳ありません姫様。此度の戦我らの敗北でございます」
「我々は捕虜となり、そして敗北を伝えるようにと解放されたのでございます」
次の瞬間、歓喜の表情が驚愕、そして憤怒の表情となるアンナ王女
「貴様らはふざけているのか!嘘であろう?前もって魔王軍のモンスター達は勇者を使って殲滅させたはず。それらも指揮したのはお前たちであろう?」
その言葉に兵士の鎧が擦れた金属音がした。それには気にも留めず2人が返答する。
「如何にもその戦で魔王軍の壊滅を戦果を持ってご報告したのは我々でございます」
「しかし、戦果の中に1つご報告していたことがございましたな?」
「何・・・?」
考え込むアンナ王女
「勇者様でございます。姫様」
「あの強制召喚したどこのだれとも分からぬあの青年ですよ」
「勇者?それがどうかしたのか?あんなもの無理やり幾つもの勇者を合わせて作った存在。貴様らの何千、何万と言う攻撃に耐えきれず消し飛んだのではないのか?まさか・・・」
「その通りでございます。勇者様は生きておられました」
「そしてタイミングを見計らって転移し、たどり着いたのが魔王城とはこちらとしては何とも運の悪いことでございます」
「と言うことは勇者が魔王側に付いたという事か!」
「左様にございます」
「し、しかし勇者とは言え何も知らぬ戦うすべも持っていなさそうな人間であっただろう?それが何の脅威となる?」
「魔王軍を壊滅させた作戦の時に倒されたモンスター達のポイントはどこへ行かれたのでしょうな?」
姫に対する問いかけのような返答にイラつく
「・・・まさか勇者に?」
「その通りでございます。そしてその計り知れないポイントを消費したのが今の勇者様でございますれば・・・」
「なんという事だ・・・魔王の前に勇者が敵として現れるなど・・・」
「同盟を結んだ国々にも中々説明するのが大変かもしれませぬな」
「しかし、そんな姫様の懸念を解決するある案がございます」
怪訝な表情のアンナ王女
「なんだその案とやらは?」
「同盟をこの国含めて全て魔王様に差し出せばよいのです!」
「貴様!捕虜になっている間洗脳でもされたか!衛兵!こやつらを捕まえろ!」
「残念ながらそれには及びません」
「我らを含めておしまいでございます」
そうゆうと無言を貫いていた歩兵が立ち上がる。
「な、なんです!」
いきなり立ち上がる歩兵に不敬であることも忘れて狼狽えるアンナ王女
「王女様。こうしてお目にかかるのは2度目ですね」
歩兵がそう王女に問いかける。
「二度目・・・?」
こんなやつ会っただろうか?と記憶を呼び起こす。それでも該当の人間が思い出せない。
「まあその程度だったのでしょうね。勇者等と言う存在は端からどうでもよくて、大切なのは魔王討伐の後同盟の覇権を握ること。そうでしょう?」
正に目的を言い当てられて頭が真っ白になる王女。その記憶の中に微かに前に立っている歩兵の記憶が呼び起こされてきた。
「まさか・・・貴様勇者⁉」
「やっと思い出していただけましたか。そうです貴方方が無理やりこんな世界に連れてこられて魔法の的になっていた男ですよ」
「そんな・・・ライゼル!ザナン!貴様らの手引きか!」
「これこそが!我が国を栄光に導く手段なのですぞ!」
明らかにライゼルとザナンの顔は先ほどとは打って変わって恍惚とした表情を浮かべており、目の焦点は合っていないようにも見える。
「もうよい!近衛兵!勇者共々この3人を打ち取れ!」
王女の命令に近衛兵たちが動き出す。
「それには及びませんよ?」
勇者が手を叩くとあっという間に王の間の各所に様々なモンスターが現れた。
「な!この国には結界によってモンスター達も入ってこれないはず!」
驚く王女
「今召喚したんですから、結界なんて問題になりませんよ?」
そう言いつつモンスターの数は増える一方であった」
「なんという数・・・これがあの戦のポイントを全て自分の物にした勇者の力だとでも言うのか?」
「自分の物と言うか死にながらどんどん入ってきたんですがね?あぁ・・・ちなみに」
そう言って窓の方を指さす。
「この城だけでなくこの国全体にランダムにどんどん召喚させていますからね?」
その言葉に各所から黒煙が上がる。剣戟の音もするからに戦闘が始まっていることは確実であった。
「近衛兵たちよ!何としてでもこの場所を死守するのです。このままではこの国が滅んでしまいます!」
「その滅ぼすのが勇者なんですけどね」
「黙りなさい!」
そう言うと近衛兵たちがどんどんモンスター達を駆逐していく。流石に先日戦った兵たちより実力は上のようであった。その隙に王女は王の間から逃走。追いかけようにも近衛兵たちからの攻撃が来る。
「まあここに到着した時点で王女がどこにいても分かるように地図スキルに王女とターゲットにしているのですがね?」
そう言いながらオリハルコンの装備一式を身に着けるコウイチ。
「まあ前回はモンスター達に任せてしまったから今回が初戦かな?」
そう言いながら棍棒を振り回すと3~4人まとめて棍棒によって吹き飛ばされる。人との戦闘への忌避感もスキル’’対人戦闘’’によって無くなっていた。
「ようし!じゃあこのまま城を破壊して回るぞ!そうすれば王女も出てくるだろう!」
近衛兵たちだけでなく壁やドアありとあらゆるものをモンスターと一緒に壊し尽くしていく。
「待っていろ!王女様!」