殲滅からの尋問
「おぉ!おかえり!無事でよかった」
コウイチの無事を心から喜ぶ魔王。そして帰還したコウイチの両側に捕まえたライゼルとザナンが意識を失い宙に浮いた状態で連れてこられていた。
「この2人が、指揮官なんだね!復讐してもし切れない位恨みがあるけど、まだお楽しみは取っておこうか・・・」
魔王アミナは表情や口調は笑っていると取れるものであったが、目だけは笑っていなかった。
それを知ってか知らずか、コウイチはその2人を牢に閉じ込めるようモンスター達に指示をする。
「まあ先ずは色々と聞きださないといけないことがあるからな・・・アミナのお楽しみは最後まで楽しみにしておいてくれ」
「そうだね。ほんの一瞬だったけれど怒りが先になってしまったよ!」
「それは仕方ないだろう?自分の軍勢を倒した連中なんだから」
「それもコウイチ含め酷い酷い手でね!そこら辺も聞きださないとね」
モンスター達に連れられながら牢に押し込められる2人。その後ろをコウイチとアミナとノアが歩く。
「ところで、尋問なんて言うけどこいつら口を割るのか?無理やり拷問でもして聞き出すとか?」
「いやいや、そう言うスキルもコウイチも持っているんだろうけどね?まずは任せてみようかなって」
「ん?誰にだ?」
「ノアにだよ!戦闘は苦手だけどこういった事ならノアの得意分野だからね!」
「だからノアが付いてきたのか。意外だな尋問が得意だなんて」
コウイチがそうノアに問いかけると、少し恥ずかしそうにノアは答える。
「い、いえ私が得意なのは尋問というか・・・拷問の方が得意なものでして・・・」
顔を若干恥ずかしそうに赤らめて言うノアに若干引きながら
「じゃ、じゃあノアに任せてみようかな?」
「はい!お任せください!あっという間に聞き出して御覧にいれます!」
ふんす!と意気揚々と2人の居る牢に入るノア
「じゃあコウイチよ。疲れただろう?別室で休憩でもしながら待って居ようじゃないか!」
「そうだな・・・じゃあノア頑張ってくれ」
そう言いながら2人は牢を後にする。その牢を出るか出ないか辺りで薄っすら悲鳴が聞こえ始めていたが、コウイチは気にしないことにした。
別室でアミナと茶を飲みながらノアの報告を待つ。
「・・・ノアも張り切っているみたいだな」
「それは勿論!コウイチのおかげでほぼ無傷で殲滅出来た上に重要人物も捕らえられたんだ。ノアも興奮していたよ!」
「それは良かったよ」
そして程なくしてノアから報告したいことがあると知らせが入った。
「お待たせしました!遅くなり申し訳ございません。」
「いや・・・全然待ってないというかお茶も1口2口くらいしか飲んでいないんだが・・・」
「流石はノアだね!もう聞き出せたんだ」
「それは勿論!もうなんでも喋っていただけるくらいにはなっております」
ノアの肌が若干つやつやしているような気がしないでもないなとコウイチはお茶を3口目を付けながら盗み見る。
「それでは、折角ノアが仕事してくれたんだ。その成果を見に行こう!」
「あ、ああ・・・」
休んでいる間も無いなと思いながらアミナに引っ張られるようにコウイチは先ほどの牢へ戻ることとなった。
その牢で捕らえた2人を見た瞬間
「・・・うわぁ」
「流石ノアだね・・・」
コウイチもアミナも若干引き気味である。それもそのはず。牢にはかなり血まみれになっており彼方此方で血が固まりかけて黒ずんできている。それなのに2人は無傷である。体には傷は全く見られない。
しかし、2人の髪は恐ろしい目に合ったためか真っ白になっており、焦点が定まらぬ目で何かを繰り返し呟いているのだった。
「こんなに何をしたんだ・・・?」
「そもそもこんな状態で聞き出せるのかい?」
そんな2人を他所に上機嫌なノアはその2人に声をかける。
「それでは、先ほど私に教えてくれたことをもう一度皆に聞こえるようにお話してくださいますか?」
ノアの声を聴いた途端。一気に正気に戻ったように・・・若干体が震えていることを除けば・・・2人は話し出した。
「はい!私はノアツ王国で勇者騎士団を任されております!ライゼルと申します!」
「同じく!ノアツ王国で宮廷魔法使いのザナンと申します!」
「はい。良いお返事ですね」
「ありがとうございます!ノア様!」
「・・・本当にノアは何をしたんだ?」
「そればかりは魔王である私にも分からないんだ」
酷く従順な様子を見て益々ノアの方を見れなくなるコウイチ。アミナもコウイチからの問いかけに応えられず目を逸らした。
「うふふ・・・大丈夫ですよ。まだまだ自我も残したままで済ませてありますからね」
それを聞いて益々何が大丈夫なのかとツッコミたくなるコウイチ。それでも2人がしゃべりだす内容に耳を傾けていくと、そんなことも気にならなくなってきた。
あなた達の目的から説明してとノアがお願いすると、堰を切ったように2人は話し出す。
「我々の目的は、そこの魔王を倒しこの世界に平和を取り戻すことです!」
「如何にも!その為に我々の国と勇者を輩出したことのある国々で同盟を結び今回の作戦となったのであります!」
何時もの魔王討伐であれば、勇者を輩出した国が一心に支援することによって討伐していたのだが、今回はその国々が手を結んでいたことに魔王は驚く。
「なんとあの国々が手を結んだとはね」
「意外なことなのか?」
「あぁ、どの国もうちの勇者が一番であると公言しているからね。最悪それが原因で軍事衝突になったりするし」
「なるほど、そんな国々が手を結ぶなんで普通はありえないか」
魔王とコウイチが驚いていると
「その同盟を成功させたのが、我らの姫アンナ王女様なのです!」
「アンナ・・・」
あの召喚させられ、勇者と呼ばれた時の女の映像がフラッシュバックする。
「更には、前回の戦での勇者を囮にしての作戦。その為にどうやったのかは分かりませぬが、各国での勇者が出現する因果律?等を操作し数人分の勇者としての力を強制召喚した人物に無理やり押し付け、更に固定化させて動かぬ的とし数人分の勇者のヘイトと言う凄まじい吸引力によって全ての魔王軍のモンスターをくぎ付けに成功したのです!」
「あれは、我が国始まって以来の大勝利と言っても過言ではありませぬ!ただ、姫様が言うには勇者は死なないという事でしたのに消えてしまったのはどうゆう事だと疑問がありましたが、些事。我らは英雄として凱旋出来たのです」
「その的にされたの俺なんだけどな・・・」
「今のお前は隠蔽によって勇者とも分かりにくい風体になっているからね。あの2人が分からないのも無理はないさ」
「しかし、今回の戦で我々は壊滅!そして今ここでノア様に如何に我々が罪深いか教えていただいていたのです!」
「そうです。我々は目覚めました!魔王様のお役に立てるならば何でも致します!」
「ほう・・・なんでもかい?」
そこで魔王はにっこりとほほ笑む。
「なあコウイチ?復讐の機会が回ってきたみたいだよ?」
「あぁ、どうせこのままでは第二弾第三弾と攻めてくるんだろうから。一気に決着付けたほうが早いな」
「折角役に立ちたいと言ってくれているんだ。働いてもらおうよ」
こうしてこの捕らえた2人をどう使って復讐を遂げるか?コウイチにはある考えがあった。若干可哀そうと言う考えもあったが、この2人にされたことを思い出すとお釣りが来るなと考えを改めたのだった。