依頼からの迎撃
コウイチは、魔王の城から更に南下し、魔王の森を抜けて’’最後の平原’’と呼ばれる場所までやってきた。
「・・・本来なら逆のルートで魔王を倒しに行っていたんだろうなぁ」
そんなことをボヤキながら、コウイチは敵を迎え撃つために準備を行っていた。
コウイチの周りを慌ただしく動き続けるゴーレムやモンスター達。彼らは、その平原に砦を築こうとしていた。
ゴーレム達が己の素材をどんどん複製させて資材を供出し、それらを力自慢の巨人やオーガ達が積み上げていく。そこにゴブリン達が補強等細かな作業を行っていく。どんどん資材が積み上げられ平原を見下ろすような巨大な砦が突然現れたのだった。
またその周辺にはワームと呼ばれる巨大なミミズのモンスターが穴を掘り、更に木のモンスターであるトレント達が植物の根や葉で足を引っかけるような罠を作り出し、転んだ先にはワームの作った穴。更にその中に鋭く尖った根が張り巡らされるという凶悪なものまであった。
「しかし凄まじいスピードで建ったな?まあ全員が同じ意識のもとでこの数で作業に当たればあっという間か・・・まだ敵が来るまで時間はあるな。よし!罠はもっと大量に配置してくれ!俺は武器の調達にあたる!」
そういってコウイチは前に使用した武器作成と防具作成を使用し、どんどん武器や防具を製造していく。
鋼鉄の棍棒+5が作成されました。ポイント50消費します!
鋼鉄の大剣+5が作成されました。ポイント50消費します!
鋼鉄の爪+5が作成されました。ポイント50消費します!
鋼鉄のナックル+5が作成されました。ポイント50消費します!
鋼鉄の盾+5が作成されました。ポイント50消費します!
鋼鉄の防具一式+5が作成されました。ポイント150消費します!
等々・・・鋼鉄で作成したのはモンスターが倒されて、誤って敵側に渡ってしまった場合の事を考えてだった。勿論中にはこんなもの使わなくても十分強力なモンスター達がいるわけだが、ゴブリンやオーク、オーガ、巨人と言った手に武器を持って戦えるモンスターや鳥系や獣系の爪を武器にするモンスターにも装備させるために作成しまくった。
「取りあえず行き渡る位には出来たかな?まあゴーレム達はその体そのものが武器だし、ドラゴンなんて武器要らないだろうしなぁ・・・」
山のように積まれた武器や防具、それらをモンスター達に配っていく。
「どんどん持っていけー!まだまだ武器も防具もあるからな!」
こうして1日で砦の構築と武器・防具の作成を完了してしまったコウイチであった。
それを遠く魔王城から見ていたアミナ
「任せたからにはこっちは城で成り行きを見届けるだけなんだけどね。あっという間すぎないかい?」
「それもこれもコウイチ様のなせる業かと・・・」
あっという間に砦を築き、武器や防具で完全防備している様子を見て呆然としている。
「幸い、人間どもはまだ平原の様子に気づいていないことが救いかなぁ。と言うか斥候なんて者が先行してもおかしくないんだけどね?」
「恐らく・・・相当にこちらを舐めているのかと」
「まぁコウイチが居なければ只の平原で通過するだけだからね。まあそれでも面白くはないけれどね」
「良いではありませんか。油断してくれればしてくれるほどこちらが有利になります」
「まあそうだね。準備してもし足りないだろうから。ここはコウイチに任せてみよう」
会敵まであと1日程となった頃。砦にはコウイチが1人だけといった状況になっていた。ただその割にはその砦から発せられる圧力が尋常ではないものとなっており、一般人ならば卒倒し、兵士であっても身動きが取れなくなる位の圧力であった。
「やれるだけのことはやった。後は敵が来るのを待つか・・・いや?まだできることがあるかもしれない。敵を逃がさず、殲滅させるだけの準備がまだ足りないかもしれない・・・」
そう言いながらコウイチは戦に向けて準備を続けるのであった。
「先日の祝勝パレードも大盛況!姫様からもお褒めのお言葉を頂戴できた!そしてこの魔王討伐!これが成功すれば我らの地位も安泰と言うわけですな!」
先日の戦で指揮を執っていた偉丈夫・・・ライゼル将軍が上機嫌に言う。
「将軍・・・油断はならさぬように・・・クククッそれでもここまで上手く行くと私も思わず笑いがこみ上げてしまいますなぁ」
同じくローブをまとった老人・・・宮廷魔法使いザナンもにやにやと笑みがこぼれる。彼らの軍勢は先日の勝利の勢いのまま魔王討伐へと抜擢されたのだった。
「この前の戦で魔王軍が壊滅したのはまことであったようだ!今の今まで魔王軍どころか野良モンスターもほぼ出会うことはなかったな!」
「お陰で非常に順調に進めておりますな。もう間もなく最後の平原でしょう。そこを抜ければ魔王の森・・・そして魔王城へと続くわけです」
「平原にもモンスターはほぼ居ないはず。問題は森というわけだ!」
「えぇ・・・非常に深い森の中そこにはモンスター達もまだいるでしょうから多少の被害は出るでしょうな・・・」
「何心配はいらん!1万もの軍勢で来ているのだ。多少の被害位森を抜けられるのなら問題はなかろう!」
「そして抜けた先は、魔王城。恐らく戦えるものは魔王以外ほとんど残っていないでしょうな」
「例え魔王と言えどこの軍勢の前には太刀打ちできまい!」
「そうでしょうな。早く魔王を倒して安寧秩序を齎しましょうぞ」
そう言いながら颯爽と土煙を上げながら進軍していく。そして最後の平原と呼ばれるエリアに差し掛かった。
「な・・・なんだあの巨大な砦なのか?」
「おかしいこの平原に建築物等なかったはず。数日前の偵察でもこのようなものは見られなかったはずですぞ」
目の前には巨大な砦が進軍を拒むように立ちふさがっていた。
「ならばどうやって・・・僅か1日2日で建てられるようなものではあるまい・・・しかし砦の上にも誰もいないようだ?妙に静かだな?」
「将軍お待ちください。探知魔法で探らせておりますが、どうやら魔法で幻を見せられているわけでもなく本当に建築物のようです。しかし生命反応がほぼ見られません」
「なんと。ここまで巨大な砦を建てておいてもぬけの殻と言う事か?」
「うーむ?お!どうやら1人分の生命反応を検知しました。どうやら砦の上におるようですな」
その言葉に釣られる様に砦の外壁沿いを見上げるとそこに1人の人物が立っていた。
「距離がまだありますから遠目の魔法で見てみましょう。全身黒ずくめに仮面をつけておりますな」
「四天王は前の戦で全員打ち取ったはず。ならば数少ない生き残りが決死の覚悟で我らの前に立ちふさがったというわけか!」
「その様ですな。ん?あやつめ何か話しだしましたぞ」
「おぉ・・・すごい数の軍勢だな。どうやらあの時の偉そうな奴らも来ているみたいだ。俺の事も見つけたようだな。よし、それじゃあ・・・」
コウイチは拡声のスキルを用いて敵軍勢にも届くように話し始める。
「人間どもよ!既にここは魔王の領域。引き返すがいい!さもなくばこの場で血祭にあげてくれる!」
一応それらしく脅し文句を言ってみる。すると向こうからも拡声を使用してきたのかライゼル将軍が声を上げる。
「笑止!何が血祭だ!貴様1人しか居ない砦で何ができる!」
そう言いながら進軍してくる。
「そうか!ならば我が力お見せしよう!掛かれ!」
その瞬間。コウイチしか探知魔法に引っかからなかったはずの平原に大量のモンスター達が一斉に現れた。
「なんだこの数は!どこから現れた!」
「探知魔法にも引っかからなかっただと!そもそもこの数は一体。魔王軍は壊滅したのではないのか!」
一気に現れた軍勢に大混乱に陥る人間たち。
「さぁ!血祭だ!」
コウイチは凶悪な笑みを浮かべながらモンスター達を指揮し始めた。