異世界召喚からの即死
「今日も疲れた・・・今日の晩飯もコンビニ弁当でいいかぁ」
そんなことをボヤキながら、仕事で疲れた体を引きずるようにコウイチはコンビニに向かっていた。
「ん?なんだこの光・・・」
そんなコウイチの足元が急に光を放ちだす。眩しいなどと思う間もなく目の前の景色が、コンビニに向かう何時もの街頭の風景から一変した。
「は?なんだこりゃぁ!」
叫んでしまうのも無理はない。目の前には見渡す限りの荒野、そしてそこを空まで埋め尽くすかのような化け物化け物・・・どいつもこいつも自分の居た世界でみかけたらUMAか怪獣か都市伝説になってしまうような、それこそゲームやアニメの世界のモンスター達と言えるような風体の化け物どもで埋め尽くされていたからだ。
「グルルル・・・」「キシャアアアア」「アアアアアアアアアアア!」
化け物達が急に現れたコウイチを目の前に威嚇を始める。状況が理解できないまでも命の危険に曝されている事だけは実感しているコウイチも震えが止まらず、自分が失禁しズボンが濡れていくのを感じていた。
「な、なんだここは?体がここから動けない⁉何が一体どうなって?」
体がその場から動けない事に益々の恐怖と混乱でおかしくなりそうなコウイチの頭上の急にスクリーンを投影したようなものが映し出された。そこには正にゲームに出てくるような姫を体現するかのような女性が映し出された。
「勇者様!この世界をお救いください!」
映し出された女性が早々にそんな言葉をコウイチに投げかけた。
「は?」
混乱するコウイチを尻目に、それが正に戦いのゴングのように一斉に化け物達がコウイチに向かって突っ込んでくる。
「ちょっと待って!なんだこれ!」
身動きもできず、叫ぶことしかできないコウイチの首を緑の小人が刃こぼれした片手斧で叩き切ったのはそれからすぐであった。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
激痛と死の体験をして間もなくその様なメッセージが意識の中に現れた。
「は?」
気が付くと死んだと思った瞬間、即復活したようでそれには化け物達も驚いているようだった。しかし次の瞬間!
「ペギッ」
巨人によってコウイチは踏みつぶされてしまった。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
「ちょっと!」
またその場から復活。そして次の瞬間粘液の塊のような化け物に取り込まれ体をドロドロに溶かされていくコウイチ。
「あああああああああああ」
その激痛に耐えられるはずもなくすぐまた死んでしまう。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
次に復活したときはまさにドラゴンと言うべき化け物から炎を吐かれ骨も残らず消失した。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
そうして勇者に化け物達の意識がいっている最中、そのコウイチの遥か後方から声が聞こえてきた。
「勇者様が我々の盾となってくださっている今が好機!最大火力で魔物を打ち倒すのだ!」
「撃てえええええええ!」
そんな声が聞こえたかと思うと、巨大な火球や水球。化け物を切り裂く突風。どんなものを凍てつかせる冷気。強烈な光線等々。それらがコウイチ目掛けて飛んでくる。
「あああああああああああああああああ!」
化け物」共々即死するコウイチ。その旅に
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
あなたは死んでしまいました。その場から復活します。
いつまで続くのか。自分が生きているのか死んでいるのかも分からない自分が消えてしまいそうな激痛と死の体験の中。微かに自分の中で声が聞こえた。
敵を倒しました。10P手に入れました。ステータスを確認しスキルかステータスを更新してください。
敵を倒しました。150P手に入れました。ステータスを確認しスキルかステータスを更新してください。
敵を倒しました。400P手に入れました。ステータスを確認しスキルかステータスを更新してください。
敵を倒しました。1000P手に入れました。ステータスを確認しスキルかステータスを更新してください。
敵を倒しました。30P手に入れました。ステータスを確認しスキルかステータスを更新してください。
「ス、ステータス?スキル?」
復活した際にまた即死させられる瞬間呟いた一言。これによりコウイチのステータス画面が浮かび上がった。
様々な化け物と遠くから飛んでくる様々な攻撃に即死と即復活により自意識が消えてしまいそうになりながらも、その画面を凝視する。特に目を凝らしたのはステータスの欄であった。
「どこだ・・・どこに・・・あった!」
それは痛覚無効と言うものであった。その痛覚無効に意識を向けるとまた謎の声が。
ステータス痛覚無効を有効にしますか?100P消費します。
「有効!有効!」
そう念じると痛覚無効のステータス欄が薄く光る。どうやら有効になったようだ。その瞬間今までの激痛が嘘のように何も感じられなくなった。ただ受ける衝撃や熱や寒さ等はまだそのままであった。
「と、とにかく有効有効!」
今自分の受けている状況下で不快になる部分に様々な無効化のステータスを有効化させていく。
「どうにか色々有効化したおかげか痛みもなにも感じなくなったな?」
そうは言っても即死させられ続けているのに変わりはない。その都度意識が途切れ途切れになってしまい。まだまだ状況を把握するほどの余裕は生まれていなかった。
「何かスキルでこの状況に合うものはないだろうか・・・?」
そうやって今度はスキル欄を眺めていく。
「お?TPS化?ゲームの画面みたいになるってことか?試してみるか」
そうやってスキル欄を漁って見つけたのがTPS化と言うものであった。
TPS化スキルを取得しますか?100P消費します。
取得を知らせる声が響くとと同時にTPS化と念じると急に三人称視点に切り替わる。勿論真ん中には今も即死させられ続けている自分の姿が。しかし死んでもまるで本当にゲームのように見ることが出来、意識がと切れることが無くなったのである。ゲームの出来としては最悪のものを見せれているかのようではあるが・・・
「これでやっと状況が把握できるか?なんにしてもこれはどうゆう状況なんだ⁉取りあえず自分のステータスをよく見ておくか?」
そうして自分のステータスを見ていると
「ん?勇者になってる。しかも状態異常が固定化だって?なんで最初からこんなことに?」
そう自分の職業が勇者になっている。現代社会では会社員で良いはずなのに。更には状態異常に固定化となっている。毒や睡眠では無く固定化。まさに自分が今身動き取れずただただ死んでいくのはこの為なのではないか?とコウイチは思い至る。
「スキルの中に状態異常を治せるものが、無いか?」
そうやってスキル一覧を見ていくと
「あ、あった!全状態異常回復」
全状態異常回復スキルを取得しますか?100P消費します。
早速取得し、それで固定化の解除を試みるコウイチにふと考えが浮かんだ。
「これで動けるようになったらなったであの遠くから攻撃してくる連中がどう対応してくるかわからないな」
そう恐らくコウイチを勇者に仕立てているのは後方から遠距離攻撃している連中で間違いないだろう。
そうなってくると解除し動けるようになったのを把握されたら次何が起こるか全くわからない。
「今の状態が続いているうちに、スキルやステータスを取得したり確認したりしてどうにかこの状況を脱出できないものか・・・」
まだまだ化け物からと遠くから飛んでくる攻撃に身をさらし、死に続けながらコウイチは考える。