第七話新たな魔法と特殊スキル
「うーん,やっと一冊読んだわね」
薬草図鑑を読み終えて肩と首にこりを感じ,肩を擦ったり首を回したりする。
「お嬢様肩をお揉みしましょうか?」
「ありがとう,お願いするわ」
ヴィオラが気を遣って肩揉みをし始め,程よい力加減でとても気持ちいい。
「ねぇ,ヴィオラこの後少し庭まで歩いてみたいのだけど,いいかしら?」
「そうですね,今日はお天気もいいですしお庭でお茶にされますか?」
「えぇ,お願いするわ」
ここで体調を気遣われ反対されるようなら魔女の涙を発動しようと思ったが,あっさりと了承してくれたので宛が外れる。
「本当にいい天気で気持ちいいわね」
庭に着くと程よく日が差して庭が暖かく,心地よいので絶好のお茶日和だろう。
「あら?この花って」
「鈴蘭ですね〜キレイに咲いてますね。お部屋に飾りますか?」
鈴蘭の小さな花が沢山咲いて大変可愛らしい。
しかし,その可愛らしい見た目とは裏腹に強力な毒を持ち,吐き気・嘔吐・頭痛・眩暈・心臓麻痺などの症状を引き起こす可能性があると図鑑に書かれていた。
(お父様は知っているのかしら?まさか誰かを毒殺する為じゃないわよね…)
「待って頂戴。確か図鑑にこの花は毒があるって書いてあったから,年の為にお父様に確認しましょう」
「えー!!本当ですか!?触る前に教えてくださりありがとう御座います。急いで旦那様に確認してまいります」
ヴィオラは急ぎ足で父の元へと確認しに行く。
ヴィオラの姿がいなくなるのを確認してから,椅子から立ち上がりポケットからハンカチを取り出す。
(毒魔法の練習の為に少し拝借しましょう)
そしてハンカチで包み込むようにサッと小さめの鈴蘭を一輪千切り取り,鈴蘭に触れない様に丁寧に包み畳んでポケットに入れておく。
そして周囲に人が居ないことを確認し素早く着席しお父様とヴィオラが来るのを待つ。
「鈴蘭の毒なら屋敷に植える前に浄化魔法で打ち消して貰っているから大丈夫だ。好きなだけ部屋に飾りなさい」
「安心しましたわ,お父様。教えて下さりありがとう御座います」
お父様の説明を受けて私は一安心し,ヴィオラは花瓶に入る程度の鈴蘭を鋏で切り取る。
部屋のテーブルに透明なガラスの花瓶に鈴蘭を生け,より一層白さが際立つ。
「では余った水と鈴蘭を包んでた紙を片付けて来ますね」
ヴィオラが一礼して退出すると,ポケットに入れていた鈴蘭を取り出し,メモ用紙に包み直し,本棚にある本を適当に一冊選び鈴蘭を挟む。
(魔法の練習は夜にするとして,取り敢えずここに鈴蘭を隠しましょう。毒はないのだから,見つかっても押し花作ってました。と言い訳すればいいものね)
我ながら完璧なシナリオに思わずフフフと笑みが溢れてしまう。
夕食と入浴を済ませてベッドへと入る。
因みに夕食から皆と同じメニューになり,それはもう歓喜の余り綺麗に完食してしまった。
(久しぶりにいつも通りに食べて満腹だわ〜)
お湯で体がポカポカと温まり,満腹感との相乗効果で物凄く睡魔が襲ってきてしまう。
「それではお休みなさいませ,お嬢様」
「うーん,お休みヴィオラ」
バタンと扉が閉まり,それに安堵してスースーと寝息を立て始める。
「って!!寝てる場合じゃないわ!!」
思いっきりベッドからカバっと起き上がり,ふぅと一息つく。
危うく夢の世界に旅立つ所になり,お風呂と満腹感の魔力に恐れ慄く。
「夕飯は少し少なめにしてもらいましょう」
一人で呟きながら本棚から鈴蘭を挟んだ本を取り出し,鈴蘭のあるぺージを開く。
「魔法って確か大まかに分けて四つに分類されるのよね」
魔法を放つ放出系
生物・器物に効果を与える付与・干渉系魔法
精霊や使い魔と契約する使役形魔法
傷の回復や病気の治療に呪いの解除など行える浄化系魔法
因みに魔女の涙は付与・干渉系魔法に分類され,鈴蘭の毒を打ち消したのは浄化系魔法に分類されるのだろう。
「そこから更に枝分かれするらしいけど,魔法の応用系授業を選考しなかったから詳しくはわからないのよね」
皇太子の婚約者として礼儀作法やダンスの授業など社交界に役立ちそうな物を選考していたので,魔法に関する詳しい知識はないのである。
「放出系を今練習すると魔法が使えるって皆にバレてしまうから,付与・干渉系を練習したらいいわね」
そう言ってテーブルの上に置いた鈴蘭を両手で優しく持ち上げる。
「取り敢えず自分の魔力を鈴蘭に込めればいいのかしら?麻痺毒をイメージしてと…」
目を閉じて鈴蘭に魔力を送り込むように意識を集中する。
頭の中がグニャグニャした感じがして気持ち悪くなってきたが,段々とクリアになっていき頭の中に紫の鈴蘭が浮かび上がる。
「えっと…,これで成功したのかしら?」
目を開けると白い鈴蘭の押し花が鮮やか紫色になっており,気になって触ってしまった。
(不味いわ!!もし毒があったら誰もいないから助けを呼べないわ!)
咄嗟に手を離したが手遅れだと思い,ギュッと目を閉じてしゃがみ込むが数分経過しても何も起きずしゃがんだまま首を傾げる。
「何も起きないわね?魔法は失敗したのかしら。先ずはステータスで確認ね」
〜ベレーナ・ドナマルバージャLV.2〜
魔力15/25
属性毒
使用可能魔法
毒玉LV.1
消費魔力5
麻痺毒LV.1
消費魔力5
魔女の涙LV.2
消費魔力10
☆
特殊スキル
二度目の叡智
☆
☆
レベルと魔力量が上がっており,星マークも三つも増えている。
「魔女の涙のレベルが上がっているのは,朝ヴィオラに掛けたのが成功したからね。先ずは1つ目の☆を確認しましょう」
1つ目の☆に触れると
〜毒性付与LV.1
魔力消費5〜
毒属性を付与する
という説明文が映し出され,魔法が成功した事にホッとする。
続いて二つ目の☆に触れると
〜特殊スキル〜
毒無効化
自分の魔力より同等又〜下の毒を無効化する。
と説明文が出てくる。
「このスキルのお陰で鈴蘭の毒が効かなかったのね。でも自分より上位の毒魔法は無効化できないから気をつけないと」
フムフムと納得して三つ目の☆に触れると
〜特殊スキル〜
毒の禁書録
今まで知り得た毒の記録の閲覧・生成が可能になる。但し高性能の毒は必要なレベル・魔力量が必要
と書かれており,今まで図鑑で読んで来た薬草・植物がズラリと明記されていた。
殆どが薄暗い文字で,明るい文字は少なめだった。
(何よこれ凄いじゃない!!あっ,麻痺毒の付与は消費魔力5なのね。つまり明るい文字が私が生成出来る毒成分ということね)
自分で納得してステータスを閉じると椅子に腰掛ける。
「物凄い大収穫だけど,こう特殊スキルをポンポン獲得してると何だか怖いわね」
少し不気味に思いながらも,一度目の人生の時は発動しなかったので,やはり二度目の人生を送っているのが関係していのだろうかと考える。
「いけない,いけない。日付も変わってしまったしもう寝ないといけないわね。また寝不足になってしまうわ」
ふとテーブルの上に置いてある時計が視界に入ると,深夜一時になっていたので,紫鈴蘭(勝手に命名)を紙に包んで本に挟み本棚に片付けてから,ベッドに入ってぐっすり眠るのだった。
〜ベレーナの破滅脱却プラン〜
殿下と婚約しない!(現在進行中)
刺客に襲われても大丈夫なように鍛えて貰う (お母様の修行まで後3日)
毒魔法を判定時に知られないようにする
為に,魔女の涙を使いこなす(レベル2に上がったわ)