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⑨⑥鬼の喧嘩

何て地味な肉弾戦を書いてしまったのか、でもそんな自分が大好きです!!笑

ポコポコ魔術や魔具(クジキ)を出すと何か、ねぇ~。

「お止めしなくても良いんでしょうか、もし何方(どちら)かが‥‥」

カーラは最後まで言わず俺の腕を掴む。

彼女が心配するのも無理もない、ヒウツとナサの喧嘩は激しく、その気迫はまるで本気で決闘してるみたいだった。


「それは無いと思う」

「そーだネ」

「え?」

よく見ればお互い急所を避けて致命傷を与える攻撃はしてないし、気持ちはどうであれ命のやり取りはしていない。


「まだ素手を通すか」

「必要無いと言った、そら!」

「はっ!」

ナサはその技術でヒウツの速さと力を巧く捌き、軽く切り傷を負わせる。


「ちっ」

「得物を持て、これでは戦いにならんぞ」

「ふん、大剣(それ)が無けりゃ何んも出来ん小僧が」

「騎士が剣を使うのは当然の事」

「何にが騎士だ、鬼人の戦い方を見せてやる」

そう言ってヒウツが回り込みながら近付き、ナサの大剣の腹を力任せに殴り始めた。


ガン!

「ぐっ」

「こっちだ」

ガン!

「ほらよ」

ガン!

「せい!!」

「遅い」

ナサは大剣を振るがヒウツは素早く離れ届かない。


「その邪魔っこい物を潰してやる」

ガン!ガン!ガン!ガン!

「ぐおおお」

ガン!ガン!ガン!ガン!


「フツ‥‥アレ」

「何て馬鹿力だ」

本身のナサに素手で向かうだけあって、何度も繰り返す内に少しずつナサの持つ大剣が曲がってきてる。ナンコー領属準男爵のタキ・ゴンゲも相当なもんだったけどそれ以上だった。

一旦距離を取ったナサは曲げられた大剣を投げ捨て拳を構える。


「素手で良いのか小僧」

「仕方あるまい、これ以上曲げられては直せんからな」

「ヒラ様が言ってなきゃ腕の骨を折ってやったのに」

「切り傷で済んでる事を幸運と思われよ」

「ほざけ」

「むん」

ヒウツは大剣を躱す必要が無くなったからか、真正面から突っ込むと左右の拳で連打し、ナサは脇を締めそれを受け止めた。


ガッ、ゴッ ドスッ ガッ ゴッ

「そりゃ、ほりゃ!」

ガッ、ゴッ ドスッ ガッ ゴッ

「うっ」

ヒウツは手を休める事無く打撃を打ち続ける。


「ナサ様‥‥」

俺の腕を掴んでいるカーラは目を背けていた。実際一方的に打たれていて、腕が折れるんじゃないかと思ってるんだろう。


「大丈夫だよ」

「でも」

「あれは釣りだ」

「?」

ナサはヒウツの打撃の衝撃を上手く逃して受けていて、逆にヒウツは押し切ろうと意識を打撃に集中させていた。ナサが何を狙っているか俺にも解るぞ。


ガッ、ガッ、ドスッ、ドスッ

「それしか知らんのか」

「受けるのが背一杯の癖に何を偉そうに!」

「ほら足元が空いておるぞ」

「おぉ!?」

ヒウツの意識が上に向いている所に足を払い、体勢が崩れる動きを利用して投げを打った。


ドン!

「く」

「どうだ?殴り合いだけの戦い方では味わえん痛みだろう」

「転んだだけだ、こんなもの痛くも痒くもない」

地面叩き付けられてもヒウツは素早く立ち上がり、拳を振るうがナサは腕を取ってまた投げを打つ。


「な、言った通りだろ」

「え?ええ、でもいけませんね」

「何が?」

「私がもっとナサ様を信用しないと」

「心配するのに信用も何も無い思うぜ」

「そう、ですよね。有難うございます」

「でも鬼人って奴は頑丈に出来てるなぁ」

これが人族なら最初の投げで気を失っているだろうし、他の種族でも此処まで持たないぞ。もう何回投げられ立ち上がってるのか、ヒウツはまだやるみたいだが‥‥。


ドォン!!

「くはっ」

ドォン!!

「これしき」

ドォン!!

「ちょこまかと」

ドォン!!

「がぁ」

ドォン!!

「ぐ‥‥」

ナサはどんな体勢からでも投げを打ち、何度でも立ち上がるヒウツも凄まじい頑丈さだが、もうその顔からは先程までの余裕が感じられない。まるで生粋の鬼人であるヒウツを(もてあそ)んでいるかの様だ。


「兄さんスゴい!」

「ああ」

「あんなのオレにはムリ」

「知らない事は出来ないさ」

あの体術は素手で相手を制圧する為に訓練されたものだ。ステトも剣闘士としての訓練は受けているが、それは殺す為のもので全く性質が違う。それなのに素直に出来ないと言う辺りが彼女らしかった。


「ヒウツ!」

「もう少し待って下せぇ」

「何を遊んでおるか!」

「無傷はちと」

「ならん!」

「‥‥はい」

ヒウツは痺れを切らした族長(じじい)に横から口を出され、改めてナサを無傷で捕まえろとの命令に頷きナサを睨む。


「五体満足でいられるのをヒラ様に感謝しろ」

「大人しく捕まるとでも?」

「小僧が調子に乗るな、お前を捕まえるなんぞ訳無い」

「ならばやってみるがいい」

「そりゃ!」

ヒウツはまた羽交い絞めを狙ってナサの背後に回り込んだ。


「ほれ簡単だ、捕まえ‥‥」

「せい!」

後ろからヒウツの手が伸びたと同時にそれを掴み、今度は腰を入れて投げながら重なり合う形で自分事地面に叩き付ける。


ドスン!!!

「ぐっは」

鈍い音が響き渡って倒れてるヒウツは動かない。


「ありゃ効いたな」

「ヤッター!!」

「ナサ様」

ナサが立ち上がって俺達の方に来るとカーラに頭を下げる。


「終わりましたお嬢様」

「ご無事で良かった、でもヒウツさんは‥‥」

「あのくらい平気で御座ろう」

目線の先は倒れたままのヒウツだ。


「流石は男前」

「同じ手は食わん」

「兄さんのアレって何て言うヤツ?」

「あれとな?何の事だステト」

「あの体術の事言ってるんだよ」

「俺達ナンコー領の騎士と兵が訓練してるものだ」

「全員してるのか?」

「うむ、無力化する時などに用いる」

確かにナンコー領の犯罪者は詐欺やコソ泥が殆どで暴力沙汰は少ない。あっても喧嘩くらいで、その他の大半は酔っ払いだった。俺がその喧嘩で捕まったから知ってるんだけどさ。野盗や賊や魔獣など命の危険がない限り剣を使う必要は無いし、騎士達や領兵達にとって体術の方が使う頻度が高いから訓練してるんだな。


「‥‥‥」

「うぅぅ」

無言の族長(じじい)とやっと動き出したヒウツをカーラが見つめる。


「故郷の方とこんな事になってしまって」

「構いません、向こうが始めた事です」

「ああ、自業自得さ」

「ジゴージトク?」

「ナサさん頼む」

面倒臭いので説明係に振ってやった。


(おのれ)の行いで不幸を招いたと言う意味だ」

「イヤなコトなのに誘うんだ」

「‥‥まぁ遠からず間違っておらん」

おい!段々説明が適当になってるぞ!


「もう行こうぜカーラ」

「そうですね」

ともあれ喧嘩は終わったし、もう鬼人族の集落に用は無い。いや最初から用は無かったんだ、カーラとナサと会いたいって言うから来たのにこの仕打ち。『(コセ・ポーション)』は依頼主のツルギ領主のハヤ子爵にまとめて渡して後はご自由にって事にしたらいい。


「それではヒラ様、私達はこれで失礼します」

「サヨナラ~」

「‥‥‥」

カーラとステトは挨拶を口にしたが、ナサはまだ思う事があるのか無言だった。俺は嫌味でも言ってやろうと族長(じじい)を見てみると何故かにやついてやがる。


「ひひひひひひ」

そして次第に声に出して笑い始めた。

時々嘘つきますが次回更新は7/10辺りになると思います。



読んで頂き有難う御座います。

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