⑨④眠れる鬼
急ぎ投稿なので誤字脱字すいません!また後々修正します!!
「これは‥‥」
「おい、此処って」
「兄さんのイエだ」
夜なので暗いが、ナサが住んでいた家屋の周りには松明が焚かれていた。
「知ってるんですか?」
ヒウツと名乗った鬼人の男が案内した先が、昼に見かけたナサ達家族が住んでいた家屋だと留守番してたカーラに説明する。
「ナサ様が住んでらした家」
「でも昼は見させてくれなかったんだぜ?」
「オバさんがケチだった」
「その様に申すでないステト、シデ殿が余所者は駄目だと言っておったではないか」
家屋の前まで来るとヒウツが振り返り「人族には中は暗いが我慢しろ」と言ってヒウツは引き戸を開ける。その言葉には人族を馬鹿にした様な響きがあった。
「来たかい」
「シデ殿」
「・・・・・」
出て来たのはナサの従叔母であるシデで、ナサが真っ先に声を掛けたが、ヒウツはその様子も面白くなさそうだ。
「入りな、ヒラ様が御待ちさね」
「貴女がシデさんですね、セフの孫カーラです」
「祖父さんの事は聞いてるよ、残念だったね」
「有難うございます、生前祖父が世話になりました」
「何言ってんのさ、お互い様だよ」
「シデ」
「うるさい男だね、急かすんじゃない。さぁ挨拶はこのくらいにしてお入り」
シデが先頭でヒウツが続き、2人の後を俺達は付いて行く。家屋も室内灯魔具が無かったが、油の灯明で客屋より室内は明るい。
「ナニこのニオい?」
「油だな」
「うう~ヘンなニオい」
蝋燭と違って油を使う灯りは鼻が利くステトには臭いか。
住居になってる家屋は俺達が居た客屋と違って数部屋に分かれていて、シデが一番手前の部屋の引き戸を開けると中に族長ヒラ・ヨスタが座っており、俺達を案内したシデとヒウツもヒラを挟む形で座る。
「遠慮せんでよい、お前達も座れ」
「失礼します」
カーラが答え腰を下すと隣にナサ、後ろに俺とステトが続いて腰を下ろした。
「このヒウツを手古摺らせるとはセフの孫だけあるもんじゃの」
「恐れ入ります」
「しかし感心せん、内輪の話に首を突っ込むとは」
「そうは行きません、彼はナンコー領にとって大切な方です」
「もう同席も認めたんじゃから内輪も何も無いがの、但し口出しは無用じゃ」
「彼が納得するお話でしたら」
「納得、か」
「はい」
「するであろうよ、あれを見ればな。付いて参れ」
族長のヒラが立ち上がると両隣のシデとヒウツも立ち上がり、ヒウツが彼の為に引き戸を開け、シデは俺達に合わせ歩を進める。
「見よ」
奥の部屋の戸を自ら開けると、薄暗い部屋の中には10人以上の鬼人の男達が横たわっていた。
「これは‥‥」
「死んでる、のか?」
「ムネが動いてるから息してるヨ」
「その通りだよ、生きてる」
ナサは驚きで言葉に詰まり、俺とステトの声が聞こえたらしくシデが答える。
「ヒラ様、この方々は?」
「集落の者達じゃ、危篤状態のまま意識が戻らん」
「何時からですか?」
「四十年近くは経つじゃろ」
「え‥‥」
「何と」
「スゴく長い」
「よく生きてるよなそれで‥‥」
族長の言葉に俺達全員が絶句した。
この状態で四十年?鬼人族の頑丈さが裏目に出たのか?
「先ずこれを見せたかったのじゃ、集落の現状をな」
戸を閉めた族長はさっきの部屋に戻って行く。
そして同じ場所に座ると今度は別の鬼人の女がお茶を持って来て、シデに渡すと頭を下げて出て行った。昼に絡まれた4人娘とは違い大人の女だ。シデがそれぞれにお茶を配ると族長がナサに話し掛ける。
「どうじゃ」
「何がで御座ろう!?」
「この現状を知って戻ってくる気は無いかえ?」
予想した通りでナサを集落に居着かそうとしてるな。
「‥‥申し訳ござらぬ」
「お前は集落で生まれたんだぞ!」
ナサが断るとヒウツが責めた。
「生まれはそうでも俺はナンコー領の者」
「クデの子ナサよ、このままでは血が絶えかねんのじゃ。母の故郷が無くなっても良いと申すか」
「まだ女達が居るではないか、混血の俺で良いので有れば人族と新たに子を作れば宜しかろう」
「人族はオイ達の敵だ!そんな事認められん!!」
またそれだ、頭が固まってやがる。話が進まないだろ。
「ちょっといいか?」
ステトばりの空気の読まなさで口を挟む。
「人族、これは鬼人族の話だと族長が言っていただろ、黙って聞いておれ」
何だよこいつ?人族人族と。
「うるせぇんだよ」
俺はこのヒウツにむかついて来てた。
「俺の仲間が嫌だって言ってるのに黙っていられるか」
「何だと人族」
「何だよ鬼人族、俺にはフツって名前があるんだ、『人族』で一括りにするんじゃねぇ」
「死にたいのか」
「笑えるなそれ、鬼人族でも冗談が言えるんだ?」
「お前‥‥」
ヒウツから殺気が発せられるとステトが短剣を出した。
「お前も死ぬぞ獣族の娘」
「オレもステトって名があるんだヨ、オジさん」
「ヒウツ」
「フツさん、ステトさん」
立ち上がろうとしたヒウツを族長が止め、俺達もカーラに名を呼ばれ大人しくする。
「済まんかったの、こ奴は今の集落で儂以外の男では唯一意識がある者じゃ、それ故責任感が強いのじゃよ。ヒウツ、カーラの供は敵では無い、自重せんか」
「‥‥申し訳有りません」
ヒウツは族長に頭を下げたが俺達を睨んだままだ。
「いいえ、此方も失礼致しました。フツさん何かお聞きになりたいのは解りますけど、ヒラ様のお話が終わってからにして下さい。ステトさんもそれを仕舞って下さい」
「解ったよ」
「ゴメン」
俺達もヒウツを睨み返したがカーラの言う事を聞き大人しくする。
「話が逸れたの、改めて聞くが儂等を助け様思わんか?」
「その言い方は卑怯で御座ろう、それに俺1人が戻った所で集落を救えるとも思えん」
「それは違う、お前の血は特別なのじゃ」
「俺の血?」
「クデの血と言った方が正しいがの、その血を引き継いでおるお前もそうなるんじゃよ」
「母の何が特別だと申される」
「それを言う前に鬼人族の血筋の事は知っとるのかえ?」
「いや」
「血統があるんじゃ、この集落は我等鬼人族の、この世の鬼人族達の里だと聞いた事はないか?」
「それは母が言っておった」
「鬼人族が何時の時代にどうやってこの世に生まれ落ちたのかは解らん、じゃが言い伝えでは千年前には存在しておった」
長寿種だから満更与太話でもないんだろうけど千年か。
ワヅ王国が建国するより五百年の前からこの土地でに住んでるって事になる。手順を無視して他領の騎士のナサに戻れと言う辺りは王国が決めた領と法とか関係ないと思ってるんだろう。
「始祖の血を引く直系が代々の長となって鬼人族を纏めておった」
「『おったとは』?」
「血は薄まるものよ、次第に直系が少なくなり傍系がその役を務める様になったのじゃ。かく言う儂も傍系の血筋での、もう今は直系は居らん」
「では母の血と言うのは‥‥」
「儂の姪じゃ」
「何と」
「そこに居るシデも姪になる」
族長の兄の子がナサの母で、妹の子がシデだと言い、直系が居なくなってから出来るだけ傍系の
血筋を守りたいと話す。
「シデの夫と息子は先程見せた者達の中に居る」
横に座るシデは族長の言葉に気丈に頷いた。
「あの者達が目覚める希望は棄ててはおらん、じゃが現状儂の血を引く男はお主しか居らんのじゃ」
鬼人族は男の血がより濃く引き継がれるからナサでは対象にならない筈だったが、シデの息子が眠り続けてるのでナサを頼るしか他に手立てが無いと言って話を終える。
次回は、7/6~8くらいになると思います。早まる可能性もあるので、ちょいちょい覗いて頂けたら幸いです。
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