⑨⑤鬼の勝手
隙間で何とか更新しました!!
しかし、相変わらず地味ですけどね!!笑
次の回の戦い(喧嘩)も地味ですよん、お許し下さいませ。
「ナサ様」
族長の話が終わるとナサに向かってカーラが声を掛ける。
「は」
「どうされますか?」
「俺は‥‥」
「貴方が戻りたいと思うなら私が父に言って然るべき手続きをお願いする事も出来ます」
「‥‥‥」
ナサは彼女の言葉に返事が出来ず俯く。
迷い始めたのか考えが変わったのか、母親の故郷が絶えるかも知れないと聞き、それを避けるには自分が必要だなんて話の後じゃそうなるよな。この男が鬼人族の里に戻ると決めるなら俺も口は出すつもりは無い、ただ俺は別の事が気になっていた。
「カーラ、族長に聞きたい事があるんだけど」
許可を求めるとヒウツがまた睨んでる来るが無視する。
「ヒラ様、ここに居るフツさんが質問したいみたいなのですが宜しいですか?」
「申してみよ」
「毒を飲まされたのが四十年前って事で良いんだよな?」
「‥‥今日来たお主が何故その事を知っとる?」
「さぁね」
族長は隣に座っているシデに疑いの目を向けた。
「アタシじゃないですよ」
「では誰じゃ?」
「う~ん、多分娘っ子達じゃありませんかね。何かやり取りが有ったとヒウツが見てたし」
ヒウツが頷くと族長が大きくため息を吐く。
「しょうのない小娘達じゃの」
「今は毒云々は置いといてくれ」
教えてくれたモトに悪いし、聞きたいのは別の事だ。
「では何じゃ?」
「その前にナサさん、あんた達家族がナンコー領に移ったは十歳頃だろ?」
「うむ」
「当時の事はよく覚えて無い?」
「大した事を知らんのはお主も解っておるだろう、俺は鬼人の血が混ってるから歳の食い方が違う、十と言っても人族の四~五の年頃と同じなのだ」
「責めてるんじゃないさ、それを確認したかっただけだよ」
以前ナサはナンコー領に移った理由は知らないと言っていたし、当時の事はよく覚えて無いって事だ。
「儂等鬼人は長寿での、それがどうしたんじゃ?勿体ぶらんと早よう言え」
「じぁ聞くけど」
ナサへの説得が上手く行きそうだと思ったのか、途中で口を挟んだ俺を快く思ってないのが態度に出ている。期待通り邪魔してやるよ。
「四十年前にナサさん家族がこの集落から出て行った事と関係あるんだろ?」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
族長だけじゃなくシデとヒウツも何も言わない。
ナサが知らない何かをしたんだな、ナサもそれを察して腰を浮かせる。
「沈黙は認めたのと同じだと思うけど?」
「どうなのだ長?」
「‥‥勝手に里から去りよった」
「それは真であろうな?」
「追い出したんじゃないのか」
「余所者は黙っておれ!良いかクデの子ナサよ、クデは儂の姪じゃ追い出す筈が無かろう、お主の父親が勝手に出て行ったのじゃ、クデとお主を連れてな」
語るに落ちたってやつだ、痛い所を突かれて親父さんのせいにしやがった。
「もういいぜカーラ」
聞きたい事は聞いたし、どうするかはナサ次第だ。
「どうされますかナサ様」
「‥‥俺は戻りませぬ」
「本当に良いんですね?」
「は」
「解りました、そう言う事ですのでヒラ様」
ナサの表情から迷いが消えたのを見てカーラが立ち上がる。
「待つのじゃ!のうナサよ、このままあの者達が目覚めんかったら、儂の亡き後このヒウツかお主かがいずれ族長になるのじゃぞ」
「説得出来なかったからって餌で吊ろうってのかよ」
「邪魔するでない人族めが!!」
物わかりの良い族長を気取ってたのにこれが本音か。
「あんたの口癖が移ったみたいだぞ」
「‥‥‥」
「あれ?」
ヒウツを見て嫌味を言ったがいつもみたいに噛み付いて来ない。
「ははぁ~ん」
「何だ」
「気持ちは解るよ」
「黙れ」
「へいへい」
族長の座を四十年振りに戻って来た混血と自分が天秤に掛けられるなんて複雑なんだろう、でも族長の言葉は絶対で、ナサが戻って来ないと言ってる事に少なからず安心したんだ。
「話は終わりましたお嬢様、行きましょう」
「‥‥帰す訳にはいかん」
「本人が戻らないと仰ってます、お話をお聞きする前に言った筈ですよね、彼が納得しなければいけないと」
「偉そうに言うでないわヒウツ!!」
「気を付けろ!」
「ナサ様!」
「兄さん後ろ!!」
「ぬうっ」
族長が叫ぶとヒウツが素早くナサの背後に回って羽交い絞めにし、元居た場所まで引き摺って行行く。
「この様な事したく無かったがの」
「俺は戻らん!」
「駄々を捏ねるでない」
「離せ」
「大人しくしろ」
「ぐう‥‥」
そして抵抗するナサをヒウツは締め上げる。
「ドーするフツ?」
「ちょっと待て」
いざとなったら『力』を使って助けられると思うが、それだとナサは故郷と完全に縁を断つ事になってしまう。毒を飲まされて追い込まれたんだし、ナサを傷付ない事は解ってるから出来れば穏便に済ませたい所だ。ナサとは別の欲しい物はまだ渡してない、それを使うか。
「カーラそれ一瓶無駄にして良いかな?」
「何に使うんですか?」
「ちょっと考えがあるんだ」
俺言葉に彼女は頷くと持っていた瓶を渡してくれる。
「ところで『薬』はどうする?要らないのか!?」
「‥‥置いて行け」
「あんた自分で何言ってるのか解ってんのか?そんな勝手通る訳ねぇだろ」
「それが無ければあの者達が持たん」
「それは気の毒だけどな、ナサさんは関係無い」
「この男は我等の希望なんじゃ、渡さんぞ!!」
「そうかい」
そう言って俺は瓶を開け『薬』を少しずつ床に落とすと踏み潰した。
「な!止めい!!」
「だってナサさんを選ぶんだろ?」
「薬も必要なんじゃ!!」
「あれも欲しいこれも欲しい、長く生きてても頭は餓鬼か」
「何じゃと」
「聞こえたろ、せめてどっちかにしてくれ」
隣でナサを捕まえているヒウツを見る。
「あんたも新入りにでかい面させたくないとか思ってるんだろ」
「死にたいのか人族」
「人質取って言う台詞じゃねぇよ、それで族長さんどうする?」
「何がじゃ!!」
「どっちにするんだ?薬とその男前」
瓶から更に『薬』を床に落としていく。
「早く答えてくれ勿体無だろ」
正確な値段は知らないけど結構高いんだぞ、こんな茶番させやがって。
そしてまた踏み潰す。
「ヒウツ!その人族を止めい!!」
「今だナサさん」
それが俺の狙いだった。ヒウツが手を伸ばそうと羽交い絞めにしてる両手を片手にした隙に、ナサが振り解いてヒウツを押しのける。
「ナサ様お怪我は有りませんか?」
「兄さん」
「申し訳御座らん、もう油断致しませぬ故」
自由になったナサに2人が駆け寄ると落としていた自分の大剣を拾って本身を出した。
「お主に助けられたな」
「あんたでないと鬼人に対抗出来ないからな」
「ふ、後は任せよ」
大剣を族長とヒウツに向け構えるとじりじりと距離を詰める。
「傷を負わすで無いぞヒウツよ」
「解っとります」
「ナサ様」
「命は取りませぬ」
「ぬかせ」
ヒウツが前に出て来ると一気に場が緊張に包まれた。
「素手で良いのか?」
「お前相手に要らん」
「負けても泣き言は聞かんぞ」
「‥‥躾が必要な様だな」
「それはお主の方であろう」
「オイはヒラ様程優しくない」
「元より遠慮は無用、来られよ」
ヒウツが先に動きナサがそれに反応して大剣で牽制すると、今度はナサがヒウツの足を狙って振り払いヒウツは飛んで躱す。
「フツさん」
「フツ」
「任せようぜ」
カーラは不安気に俺の腕を握り、ステトは加勢しないのかと聞いてる表情だった。お互い命を取る気が無いならこれはただの喧嘩だし、手出しするのは野暮ってなもんだろう。
納得するまでやり合ったらいいさ。
7月一週目は遠出していますので不定期続きます。
でも案外進める事が出来てるので、早めに更新するつもりです。
時間が有れば覗いてやって下さい。
読んで頂き有難う御座います。
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