⑨③族長の呼び出し
前回後書きでお知らせしたように、私用で不定期です(笑)
次回更新は未定ですが7/1~3くらいにはするつもりなので良ければチェックしてみて下さい。
同時に最初から手直しもしていて未熟を痛感しています‥‥苦笑
「今何と?」
「お嬢様」
「ナサ様は黙ってて下さい、お断りしますと言いました」
カーラの即答に鬼人の男の雰囲気が一変すると、その様子に気付いたステトが食っていた肉を置いて俺の隣に来る。
「あんなコト言ってヘーキなの?」
「怒ってるな」
「ダレが?」
「カーラがだよ」
デンボに質問した口調のまま鬼人の男に受け答えしていて、演技も入ってるんだろうけど頭に来てるのも確かだ。
「セフ殿の孫娘に用は無い、そこの混血の小僧に族長が話があると言っている」
「小僧ですって?彼は私の従者です、貴方にそんな呼ばれ方をされる筋合いは有りませんし、話をするのに呼び出すなんて鬼人族は礼儀も知らないのですか?」
「鬼人族同士の話だ、お前には関係無い」
「いいえ有ります。彼は鬼人族である前にナンコー領の者です、種族の族長と言えど命令は出来ません」
「族長の言う事は絶対だ!!」
「話になりませんね、フツさんステトさん、ナサ様を連れて先に集落から出て下さい。私は『薬』をお渡ししたら直ぐ追い付きますから」
俺は相槌だけ打つ。
本気で言ってるんじゃない、これも交渉術だ。
「邪魔する奴はオイが殺す」
「彼等を?」
「人族に獣族、簡単だ」
「そうですか、ではナンコー領にとってツルギ領は敵になりますね」
「いけませんお嬢様」
「仲間を殺すと言われて黙ってろと?」
「しかし」
「でもこれってそういう事です、そうでしょフツさん?」
「その通り」
「お主まで止めぬか」
ナサの動揺してる様子が笑える。
「良いじゃねぇか、向こうがああ言ってるんだ」
それに俺はカーラの啖呵を楽しんでいた。彼女の言う通りで鬼人族の物言いにはちょっと腹が立つ。殺すなんて言われたら余計にそうだ。
「カーラさんもフツさんも落ち着いて下さい!」
「喧嘩売ってんのあっちだぜ?」
「本当に死にたいんですか!!」
「死ぬ?舐められてんなぁ俺等、そうだろステト」
「ナメられたら負け」
「勝てる訳無いでしょう!」
デンボの顔は真っ青だが俺と同じでステトも笑って楽しんでる。
最近平和だったから体が鈍ってるんだろう、彼女は傷を負うくらいじゃ授かった治癒能力でどうとでもなるし、いざとなったら俺も『力』を使ってやる。
「どうあってもか?」
「私達全員がお話をお聞き出来るのであれば良いでしょう」
「‥‥それはオイでは答えられん」
「ではヒラ様にお伝え下さい、彼を1人で行かせないと」
「‥‥‥また来る」
そう言って鬼人の男は客屋を出て行った。
「ふう」
「肝が冷えましたぞお嬢様」
「そうですか?このくらい商売じゃ普通ですよ」
人族相手ならそうだろうな。
カーラと出会って初めて襲って来た相手は彼女が解雇した前任の護衛の男達だった。助っ人の男も含めて雑な奴等で瞬殺、と言っても殺してないが彼女の指輪の魔具で痛めつけ、その後カーラは襲われた恐怖で震えが止まらず俺が背に負ぶったっけ。
今のカーラはあの時と全然違う、伯爵である父親さんもそうだったけど彼女は元々度胸があるんだ、それがナンコー領で父親さんと自分が襲われ更に度胸が付き、継母と異母弟が全てでは無いにしても加担した事件を乗り越えた事で物怖じしなくなってる。
「それに少し怒ってましたから」
「ご立腹なされた?」
「あの態度にです」
「あれは俺に向けてでお嬢様にでは」
「関係有りませんよ。ナサ様はこの集落の出身であって命令される筋合いは無いんです、それを小僧だの族長は絶対だのと失礼ですし、フツさんとステトさんにまであんな事言って」
俺達にも思いやってくれている。
「フツさんは見ていてどうでした?ハラハラしましたか?」
「いや楽しんだよ」
「ワクワクした~」
「うふふ、お2人ならそう言うと思ってました」
それとも俺達に対する信頼がそうさせたのか、彼女も楽しそうに笑って言った。
「カーラさん」
「はい?」
まだ不安顔のデンボが声を掛ける。
「あんな事言って良かったのですか?」
「何をです?」
「本気で争うつもりは無かったんでしょう?」
「有りますよ、ナンコー領が責任を持ちます」
「‥‥失礼ながらフツさんとステトさんはナンコー領の方では無いですよね?それなのに当主でない貴女が決められる事柄とは思えませんが」
「デンボさん、私がツルギ領に来たのは取引の他にも理由が有ります。貴方にお見せする訳には行きませんが父の名代としてハヤ様に手紙をお渡しする為に来ました。その内容の一部には彼等を傷付けたらナンコー領は黙ってはいないとハッキリ入っているんですから」
「え‥‥」
いやもっとやんわりとした表現だと思うけど。
デンボが俺達を見た。
「貴方達は何者なんですか?」
「朝に言っただろ、ただの雇われ従者だよ」
「アト護衛」
「間違ってませんよ。お2人は本当に私が雇っています、ただ」
「ただ?」
「ナンコー領の恩人でもあります」
「恩人‥‥」
「さぁこのくらいにして、あの方が再び来るのをゆっくり待ちましょう。次は全員にお声が掛かると思いますし」
「は」
「ウン」
「おう」
「‥‥‥‥」
デンボは何か考えてるみたいでそのまま動かない。
ナサとステトは食事の続き、俺とカーラは茶の売り出し方などの話をし、暫くするとデンボが俺達の向かいに座り頭を下げた。
「すいませんでした」
「何をですか?」
「貴女の仰る通りです、私は諸々の理由を知っています」
「でも言えないんだろ?」
俺が口を挟む。
「申し訳御座いません」
「デンボさん」
「はい」
「商人と言うからには信用が大切なのはお解りですよね?」
「はい」
「情報を隠すのは非難しませんが、騙すのはどうかと思います」
「いえ、決してその様な」
「確かに貴方が言ってる事に嘘は有りませんでしたが、相手が困る結果が解ってるのに言わないなんて騙し討ちと同じですよ?それで信用を得れると思いますか?それに雇い主でも無い方の言いなりになるなんて背信行為と言われても仕方がない。商人には商人の矜持がある筈です、貴方には有りますか?」
「矜持?」
「お客様に不利益になる様な事をしない、取引相手には対等に接する、です。私達が対等な関係とは思えません。フツさんに貴方が担っている役割りをお聞きしました、貴方はどちらの立場で私達を案内されてます?」
「子爵様に言われてご案内しております」
「では何故鬼人族の方々の言いなりになってるのですか、これでもし本当に争う事になったら貴方はどう責任を取るおつもりだったのです?」
「私は」
「貴方にも事情がおありなんでしょうが、信用出来ない相手とは商売は成り立ちません」
「‥‥貴女が正しい」
「これが最後の取引になるかはこれからの貴方を見て判断しますけどよろしいですね?」
「それは!」
「でしたら言える範囲で結構ですので、鬼人族の皆様に何があったのか教えてください」
「‥‥‥」
相手の非を認めさせ、脅しを掛けて情報を引き出す、優しくて頼もしいけどカーラを怒らすと怖い。
この混血の商人が気の毒に思えて来たので言い易い様に助けてやる事にした。
「毒を盛られたんだってな」
「え?何故それを‥‥」
「誰かは言えないが聞いたんだよ」
「そう‥‥ですか」
「私達はこの話を聞いて憶測しました」
「想像だけど、それで集落の男が減ったんだろ?」
「今集落に居る鬼人族の男性は族長ヒラ様と、さっきの方だけです‥‥」
「他の方々はお亡くなりに?」
「それは言えません」
「じぁ何が言えるんだ?」
「それを行ったのは人族でした」
ドンドン!!
その時引き戸を叩く音がして慌ててデンボが入口に行く。
「どういうことでしょう?」
「さぁな」
混血も嫌われてると言ってたけど、人族が犯人なら何故そうなった?人族だけでいいだろ。
カーラを見ると彼女も戸惑ってる顔をしている。
丁度食事を終えたナサとステトも俺達の所に来て身構えるが、入って来たさっきの男の態度が違う事で力を抜いた。
「ヒラ様が全員とお話するとの事だ」
「感謝します」
「ただし客屋ではない、見せたいものがあると仰せでオイが案内する」
「解りました、では皆さん行きましょう」
「デンボ、お前は待ってろ」
男に言われたデンボは頭を下げる。
「貴方を何とお呼びすれば?」
「オイはヒウツ」
「宜しくお願いしますヒウツさん」
「孫娘は度胸がある」
軽く笑うヒウツの後に俺達は付いて行った。
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