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⑨①鬼人族の男

展開が遅いのはいつもの事なんですが、作中の進行してる日も遅いとは苦笑

「毒を飲まされた」


父親(おっとう)の仇だと最初に言ってたし、本当だとしたら人族を憎んで当然だ。

鬼人族の女達は無事だから男達だけ飲まされた?

この集落に来てから男達を見てないのは毒で殺されたからか?

何故人族が鬼人族の男達にそんな凶行を犯した?

それに殺されたなら『(コセ・ポーション)』は必要ない筈だが‥‥生きてるのか?


そうして歩きながら思考にふけってると、カーラとデンボが待っている客屋は目の前だった。

「取り敢えず冒険は一旦終わりだな」

「女の子達のズボン脱がしたのがボウケン?」

「まだ言うかそれ」

「女のテキ」

「何も言えねぇって」

早く忘れてくれ。


ナサが急に止まる。

「‥‥‥」

「どうしたナサさん」

「ドコ見てんの?」

「誰か()る」

ナサが見た先には誰も居ない。

俺達も注意深く周りを見渡すがそれらしいものは見えなかった。


「ステトは?」

「オレはナニも感じないけど」

「気のせい、じゃ無いよな」

「兄さん?」

「待て」

獣人のステトが気付かない出来ないなんて珍しい。

それだけナサの、鬼人の気配を察する能力が高いんだろう。


何方(どなた)か存ぜぬが出て来られよ!!」

ナサも相手の居場所を特定出来てないみたいで、辺りに向かって呼び掛けるが反応が無い。


()られるのは解っている!」

もう一度呼び掛けると家屋の屋根から影が落ちて来て、音も立てずに着地したのは額に角が二本有る鬼人の男だった。


「ありゃ駄目だ」

「ツヨそう」

ナサより大きく筋骨隆々、何よりステトに気配を感じさせない俊敏さは異常で、この鬼人相手ではナサも勝てないかも知れない。

客屋はもう直ぐそこだし見逃してくれないかな。


「気付かれるとはオイも歳を食ったか」

自嘲気味に呟き軽く。


「失礼したな客人」

「我等をずっと見張られておられたか?」

「シデと話していたのを見掛けてからだ」

「何故監視なさる」

「客人達ではない、娘達を心配しての事だ」

「我等に敵意は無いが」

「あの娘達はまだ年若い、物事の分別を知らないから客人に迷惑を掛けると思って見ていたが‥‥客人達の行いは余り感心しない行動だ」

俺の事言ってるんだろうけど、そっちの躾が悪いからだぞ!と言ってやりたかったが自殺行為なので我慢する。


「容赦されよ、この男も娘達を傷付けたく無かったのだ」

「そうで無ければ死んでいた」

「殺されそうになったのは俺達の方なんだけどな」

「ヒラ様が言っていただろ、聞かないからだ」

「だってヒマだもん」

「クデの事は残念だった。だが今は客人、大人しくしている事だ」

無視かよ。


「お主も母をご存知か?」

「同じ事は言わない」

「俺に話があると族長は申しておるが‥‥うお!」

その時一瞬でナサに近付き、脇を抱えて彼を持ち上げる。


「シデと一緒でオイもお前をこうして抱っこしてやったもんだ」

「何と‥‥?」

「お前の幼い頃を思い出す。混血の割には見込みがあった」

「‥‥‥」

「夕餉は持って行く、それまで大人しくしていろ」

それに答えられないナサを下ろすと再びそう言って立ち去った。


「とんでもねぇなありゃ」

「兄さんが子供みたいだったヨ」

ナサも色んな意味で驚いて固まっている。

やはり生粋の鬼人はナサ以上の能力があると見て間違いない。


「帰ったよカーラ!」

「只今戻りましたお嬢様」

「ただいま、あれ?」

客屋に戻るとデンボの姿が見えない。


「カーラ1人か?」

「お帰りなさい。ええ、デンボさんは何か予定があるそうで先程出て行かれました」

「戻って来るって?」

「今日はどうでしょう、明日になるかも知れませんね」

「まぁ今日はもうあいつの役割は終わってるもんな」

「あの方は商人と言うより役人みたいな印象を受けます」

「実際そうだ」

俺は囲炉裏の前に腰を下ろしながら、早朝のデンボとのやり取りを話す。

カーラは聞きながら全員にお茶を淹れてくれ、ステトは客屋に置いていた自分の背嚢から蜂蜜を取り出しお茶に足して座り、ナサは姿勢正しくカーラに頭を下げて腰を下した。


「他に商人は居ないんでしょうか?」

「奴隷が大半で余所者を嫌う領でなんてやりたい奴が居ないんじゃないか?」

「悪循環ですね‥‥」

カーラも自分の分を淹れ一口飲む。


「すいません。フツさんが置いて行ったこのお茶勝手に頂いてました」

「貰いもんだけど美味いだろ?」

「確かに美味しいです。これは売れると思いますけど何故そうしないんでしょう?」

「売ってるみたいだけど今はそれ程儲からないから作る量も減らしたってさ」

鷲人のヤトに教えて貰った内容をそのまま話した。


「こんなに美味しいお茶なのに大量生産に負けるなんて勿体無い」

「カーラがそれ言うか」

「フツさんの勿体無いとは意味が違いますから、それで外はどうでした?」

「驚く事ばっかりだったよ」

「デッカい木が飛ん来たんだ!」

「?」

「フツがね」

またしてもステトが鬼人族の娘達との事を話し出す。

いや他にもあるだろ!


「女の敵ですね」

「だから何も言えねぇ」

やっぱり食い付いくのはそこか。

ステトが端折った所、シデと言うナサの従叔母に会った事と男に会った事を話した。


「ナサ様の血縁者の方がいらっしゃるとは」

「は。俺も驚いております」

「でもご両親のお話をお聞き出来て良かったです」

「この茶は父が始めた事らしく」

「え、本当に?」

「シデって従叔母さんはそう言ってたぞ」

カーラは俺に確認の意味で顔を向けるので頷いて答える。


「ナサ様にとって大切な意味を持つお茶になりましたね」

「‥‥お嬢様」

「お気持ちは解ります。ハヤ様にお会いしたら、このお茶をナンコー領に卸して頂ける様にお願いしてみましょう。需要が出来れば御父上のお茶が無くなる事は有りませんし、そこは商人としての腕の見せ所ですから」

「‥‥感謝致します」

ナサは深々と頭を下げた。


多分ナサは自分の父が作り上げたこの美味い茶を何とか残したいが、やり方が解らないから商人で伯爵令嬢のカーラならと思ったんだ。それに応える辺りはつくづく良い上司だよ。

次回は6/23更新予定です。



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