⑧⑨女の敵
基本身の丈に合った強さなので、チートは存在しません。
でも本当にくだらない方法で申し訳ない笑
「あの娘達を傷付ける訳にはいかん」
「丸太を投げる相手にどうすりゃ穏便に済ませる事が出来るんだよ?」
何か人族や余所者を憎む理由があるんだろうが、睨み続けてる若い女達は今にも斧や鉈で襲って来そうな勢いだし、俺達は関係ないと言っても治まってくれそうにない。
「お主達では無理であろう、先に戻ってても良いぞ」
「逃げても追い付かれるさ」
「オレはダイジョウブだけど」
「つれない事言うなよステト」
「じゃドーする?」
「ふむ~」
どうしたもんかなと考えると、我ながら碌でも無い事を思い付く。
「ナサさん」
「何だ?」
「失礼な事聞くけど鬼人族の女ってさ‥‥」
前で対峙しているナサにある事を尋ねる。
「何を考えてるのか知らんが、鬼人族にもあるぞ」
「そうか、じぁ良かった。ステトちょっと」
今度はステトに小声で考えを伝える。ステトは元剣闘士だから何とかなるかも知れないが、俺じゃ鬼人族の相手にもならない。我ながら酷いと思うけど、今は他に『力』を使わないで済ます方法を思い付かなかった。
「そんなコトで勝てるの?」
「勝つと言うか、戦意喪失させる」
「センイソスツ?」
「ソウシツ、やる気が無くなるって意味だ」
「こんなので?」
「いいから言った通りに頼むぞ、女達を無傷で大人しくさせたいんだ」
「ナンだか解んないけどフツが優しいのは解った」
寧ろ逆なんだけど。
「なにゴチャゴチャ言ってんだよ!いなくなっちまえ!!」
最初に出て来た女が痺れを切らしてナサに斧で襲い掛かる。
ガキィン!!
ナサも女達を傷付けたく無いのか、大剣の鞘でそれを受け止めた。
「俺達は敵では無い!」
「うるさい!ほらみんな!この混血はあたいが相手するから、そっちをやっちまえ!」
「まかせて、すぐおわらせてやる」
「あっち1人でじゅうぶんだよ」
「‥‥」
もっと近くまで来てくれないと上手く行かないので、話し掛けて距離を詰める。
「人族を恨んでるみたいだけど彼女は獣人だ、それでもやるのか?」
「獣族にうらみはないけど、人族といっしょにいるのがわるい」
「そうさ、ぜんぶお前たち人族のせいだ」
「‥‥」
「1人だけ黙ってるけどお前はどうなんだよ?」
「‥‥‥その子はにがしてやってもいい」
「へえ」
この女は他の3人と違って分別があるみたいで、問答無用な感じがしない。
何か聞き出せるかも知れないな。
「モト!」
「うらぎるつもり!!」
「ちがうけど、でも‥‥獣族の子はゆるしてあげようよ」
「よそものの味方するなんてしんじられない!」
「そんなんじゃないってば」
「かたきをうつ気あるの!!」
「その子はなにもしてないって言いたいだけ」
言い合いを始めたので取り敢えず静観する。
「ケンカし始めたネ」
「鬼人族にしたらまだ子供なんだろ」
「オレ達よりワカいのかナ?」
「歳は上だと思うけど、寿命が長いし比べるのには無理があると思うぞ」
ナサが五十前だと言ってたからその半分くらいだとして二十五、二百年近く寿命がある鬼人族の中では子供で人族に当てはまると十二~三歳くらいか、成人にも達してない子供なんだから聞き分け無い訳だよ。
にしてもこのままじゃ埒が明かないな、そろそろ終わらせて家屋に戻らないと、他の鬼人達が駆け付けたら手に負えない。
「もういいか?餓鬼の喧嘩に付き合う程暇じゃないんでね」
「なんだって!!」
「こどもあつかいするな人族」
「餓鬼だろが」
「やっぱりゆるしてやらないからな!」
「つづきはあとだよモトっ」
煽って行動を促すと2人が動いた。
「その辺が餓鬼だってんだよ、ステト」
「うん!」
「獣族のくせに人族のみかたするな!」
「人族のなかまなんて!」
「アタんないヨ~」
「く、はやいっ」
「どうどうとたたかえ!」
「コッチコッチ」
猫人族特有の素早っしこさでステトがぐるぐると回り、攻撃を加える振りを繰り返して2人を翻弄する。
「ステト」
「え?もうイイの?」
「ああ」
「ナニも起こってナイけど?」
「大丈夫だ、まぁ見てろ」
ステトは短剣を下ろして聞いて来たが俺はやる事をし終えていた。
「ちょこまかとにげまわってるだけじゃないか」
「それが獣族のたたかいかたか」
何をしたかったのか解らない様な顔をして一旦動きを止めたが、再びこっちに向かって来ようと2人は走り出す。
「あんまり動かない方が良いぞ」
「なに言って‥‥うわ!」
「きゃぁ!!」
「ほら言わんこっちゃない」
ステトが気を逸らしてくれた時に俺はナイフで女2人の履いていたズボンの紐を切り、そのせいでズボンがずり落ちつんのめって転んだ。
「コノ女の子達はナンで座ったままなんだろ?」
「そりゃ人前で下着丸出しになったからさ」
ナサに聞いたのは鬼人族の女でも、女子としての恥ずかしいとかの感情が有るかどうかだった。若いから余計に恥じらいがあるんだよな、2人は必死に下半身を隠して座り込んだまま俺を睨んでる。
「オレはこんなのヘーキだけど」
「平気でも人前では脱ぐなよ」
「フツの前は?」
「駄目だ」
「え~」
ステトは生死を掛けた剣闘士だったから下着姿で恥ずかしがってる場合じゃ無かっただろう、でももう違うからその辺の常識を教えないと色々と問題になる気がする、特に俺が。
「まだやるか?」
「さいていな人族‥‥」
「こんなのひきょうだ!!」
「いきなり丸太投げ付けて来た癖に何言ってんだ、あれ当たってたら死んでたんだぞ」
「うるさい!やりなおしだ!!」
「まってろよ」
「おっと」
2人がズボンを上げ様としていたので裾を踏んでそれを止めた。
「そのまま大人しくしてればいいのに。ステト、2人のズボン剥ぎ取っておいてくれ」
「ズボンを?」
「また襲い掛かって来れない様にさ」
「ソレだけで?解った」
ステトは蹴られない距離からさっと女達のズボンを引っ張って脱がす。
「きゃぁ!お前は女なのになにすんだ!!」
「かえせーっ!お前はみるな!!」
「餓鬼に興味なんか無ぇよ」
やり方は酷いけど、これで女達を傷付けずに大人しくさせる事に成功した。
「何でやっちまわなかったの!」
「だって獣族はてきじゃないでしょ?」
「人族のなかまなんだからっ」
「だからって‥‥」
「止めとけ、お前も恥ずかしい思いするぞ」
まだ常識的なモトと呼ばれた女が、必死に下半身を隠している2人に責められ始めたので割って入る。
そして改めてモトに俺達は敵じゃない事を説明した。
「なぁ、お前等の敵が誰か知らないけど本当に俺達は族長に呼ばれ来たんだぞ」
「ソーだよ。フツはウソ言ってない」
「ヒラさまが‥‥どうして人族なんかを?」
「セフって人の事は知ってるか!?」
「あのじっちゃんならしってる。いろいろものをくれてた」
「そのセフさんが死んだんだ」
「じっちゃんが?」
「ああ、それでその後を継いだのが孫娘でさ、俺達は彼女に雇われて一緒に来ただけなんだ」
「従者?と護衛だヨ」
「じゃ、鬼人族にわるさしようとしてるんじゃないんだ?」
「初めからそう言ってるじゃねぇか、信じられないならシデって人に聞いてみろ」
「シデおばさんに?」
「向こうでやり合ってる混血の人はシデさんとは親戚で、さっき俺達も会って事情を話したんだよ。あの人は解ってくれたみたいだし、だからあの2人にも暴れない様に説得してくれ」
「ズボンをかえしてやって」
「ハイどーぞ」
ステトが下にズボンを渡してやる。
「でもあの人族たちは許せない‥‥」
「酷い事されたんなら許す必要は無いと思うぜ。でも俺達はそいつ等とは違う」
「オレ達は敵じゃナイよ」
「でもその人族はおんなのてきだ」
女の敵って‥‥何も言えねぇ。
次回は6/19更新予定です。
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