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⑧⑦従伯母

ナサの父親が鬼人としてましたが、母親に変更しました。

「よっこらせっと」

俺は立ち上がって出口に向かう。


「まさか外に行くおつもりで?」

「暇なんだ」

「それは無謀です、族長もああ仰っていたでしょう」

「だから?」

「‥‥‥」

デンボは何を考えてるんだみたいな表情を浮かべてるけど、その族長(じい)さんの言う通りにするのが癪なんだよ。


「外出るのフツ?オレも行くー!」

「別に目的あって出るんじゃないぞ?」

「だってヒマじゃん」

「俺も集落を今一度見ておきたい」

ステトとナサも外に出たいと言い出したんで許可を求める。


「俺達ちょっと出るけどいいか?」

「そう言うと思いました。何か言われても怒ったら駄目ですからね」

「解ってる、追い掛けられたら逃げ帰るよ」

別に喧嘩売りに来たんじゃないしな。


外に出て辺りを見回すと思ったより敷地が広い事に気付く。そのせいか殺風景でどことなく閉塞感が漂っている印象を受けた。

「何かガラーンとしてるネ」

「他の鬼人族達は何処だ?」

「仕事で山へ入ってるのではないか」

「ダレも見ないのもヘンだヨ?」

「確かに‥‥」

「他の領にも鬼人族は居るのか?」

()る、ただ鬼人族の故郷(さと)は此処に帰結すると母から聞いた事がある」

「本家本元ってか」

「ホンケホンモノって?」

「ステト、「本物」では無い「本元」だ」

「じゃホンモトはニセモノ?」

「‥‥‥忘れろ」

気持は解るけど諦めんなよ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

3人が外に出た後、カーラさんにお茶を淹れてそれを渡す際に尋ねてみる。

「頂きます‥‥これは美味しいお茶ですね」

「本当に良かったのですか!?」

「何の事です?」

「族長が言った事は嘘では有りません、集落の鬼人族達が彼等を見掛けたらと思いますと‥‥」

「彼が一度言い出したら止めるのは無理でしょうね」

「彼は貴女の従者でしょう」

「ヒラ様も集落の皆様をお止めにならないのですからお互い様では?」

「それは‥‥心配では無いのですか?」

「彼等は喧嘩騒ぎに慣れてますから」

「本気で仰ってるのですか?鬼人族の戦闘能力は亜人種の中でも特に高いんですよ!?」

「鬼人族の方達は争い事の訓練をされていないでしょう?それでは喧嘩と同じです」

「その必要も無いくらいの能力を持っております、貴女が想像する以上に」

「ナサ様を見ておりますので想像は出来ますが」

「彼は混血で純血種とは比較になりません、ステトさんも獣族とは言え鬼人族には到底敵わないでしょう、ましてやフツさんは人族、手加減されても大怪我で済むかどうか」

「でも命を奪ったりはしないでしょう?」

「それはそうですが」

「デンボさん、いくら素材が良くてもそれだけで全てが勝ると私は思いません。ナサ様は騎士として日頃から研鑽を積み重ねてますので心配しなくでも大丈夫でしょう、それにステトさんは剣闘士として修羅場も経験なさってますから、ご自分の身は守れますよ。フツさんは、彼は何とかするでしょうね」

「何とかって‥‥」

「飽きたら帰って来る思いますし、待ちましょう」

「‥‥」


何とかする?鬼人相手に?フツと言う人族の男は一体何者なのだ?何故そんなに安心しきれる?3人に何かあってはと心配で申し上げてるのに、彼女の態度を見ていると騒いでる私が馬鹿みたいに思えそれ以上何も言えなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜~~~~~~~~~~~~~~~~


何を見る訳でも無く適当に集落の散策を続けてるものの、集落は集落だから変わり映えはしない。

違うのは鬼人族は大柄なので家屋が一般的な物より遥かに大きい事だ。


族長(じい)さんには角があったけど、ナサさんは混血だから角が無いのか?」

「父が鬼人なら俺にもあったであろうが、母がそうなのでな」

「お母さんがキジンだとツノ生えないってコト?」

「必ずしもそうでは無いんであろうが、父親が鬼人の方が血が濃く受け継ぐ物も多いと聞く」

その目と牙に角まであったら鬼人にしか見えないぞ。


「風呂は無いんだろ?」

「風呂の文化が無いのだ」

「井戸があったら体を拭きたいんだけどなぁ」

昨日泊った「コシエ舎」で軽く拭いたし、流石に一日一回は体くらい拭かないと気持ちが悪い。


「井戸は俺が住んでた場所の直ぐ(そば)にあったが‥‥」

「兄さんが住んでたトコを探せば?」」

「ステト、俺が集落(ここ)を出て四十年経っておるのだぞ」

「流石にそのまま残ってないかぁ~」


そして自然と散策は井戸探しになった。長い荷車が数台置いてあるのは伐採した材木を運ぶ為だろう、他にも火事場があったり、狩猟の解体に使う台座が外に設置されている。こうして見ると少しずつ鬼人族の生活が感じられたが、その鬼人の姿はまだ見てない。


「イドがあるよ、イエもある!」

「まさか」

「何だよ、本当に残ってたのか!?」

ステトが指差す先には井戸の水を汲み上げる滑車が確かに見えた。


「スゴイじゃん!!」

「まだ解らんぞ、もっと近寄らねば」

そう言ってナサは確かめる為に近くまで行いき、俺達も後に続く。


家屋(そこ)に近寄るんじゃないよ!」

振り返ると鬼人の女が1人俺達を睨み付けている。


「ナサさん」

ここは任せよう、人族の俺じゃ火に油だ。

集落(ここ)に来て族長(じじい)以外の初めて見た鬼人だし悪い印象を与えたく無い。


「怪しい者では無い、我等は族長殿に呼ばれて訪ねて来たのだ」

「セフさんの孫が来るって聞いてたけど、アンタ達はその連れかぃ?」

「そうだ」

「ウロチョロするなってヒラ様に言われただろ」

「言っておった」

「だったら大人しく引っ込んでな」


この鬼人の女は言葉はきついものの、敵意が少ないのかあからさまな態度を取っていない。

想像してたより親切なくらいだ。

「獣族の娘っ子も集落(うち)の奴等に見られる前に客屋に戻るんだ」


そう言ってから俺を見る。

「お前さんがセフさんの孫‥‥じゃ無いみたいだね」

「孫は女だよ」

「全くデンボも何考えてんだか、他にも人族を連れて来るなんて呆れるよ。ほら!突っ立てないでサッサと姿を隠すか消すかしな、余計な手間取らせるんしゃないよ!」

いや消せないから。


「待ってくれ、この人は集落(ここ)の出身なんだよ、ちょっと見させてやってくれ」

「住んでたトコ見つけたんだって」

それを聞いて鬼人の女はナサを値踏みする様に見る。


「この集落の出身?」

「うむ」

「名は?」

「ナサだ」

「そうじゃ無い、家の名だよ」

「ミツクだ」

「そんな名の一族なんか知らないね、大体アンタ混血だろ?ホントに集落(ここ)で生まれたのかい?」

「家の名は父のだからな、母が鬼人だ」

「母親が鬼人の混血‥‥まさかあんたクデの子、ナサ坊かい!!」

「そうだが‥‥母をご存知か?」

「知ってるも何も、アンタの母親とは従姉さね!!ほら、覚えてないかい?あんたが小さい頃よく抱っこしたもんだよ」

「解らん」

「何だいツレないねぇ」

「容赦されよ、幼かったのだ」

ナサが抱っこされてる姿なんて、想像しただけで笑える。

この鬼人の女はナサの親戚らしい。母親の従姉って事は従叔母(おとこおば)になるんだっけ?

長寿の種族だしナサを知る同族が居ても何もおかしくはないけど母親の血縁者かぁ。




「『ナサ坊』だってよ」

「あの人兄さんの知り合いみたいだネ」

「親戚らしいけど、ナサさんは覚えて無いみたいだぞ」

ステトに従叔母とか言っても解らないだろうから親戚とだけ言っておく。


「アタシの名はシデだ、久しいねぇ」

「世話になったのに覚えて無くて済まぬシデ殿」

「いいさ、それよりクデは?元気にしてるのかい?」

「母は病で死んだ」

「死んだ‥‥いつ!?」

「30年前だ」

「‥‥鬼人が病で死ぬなんて何の皮肉だろねぇ」

「母が残されるより良かったと思う」

「寿命が違うのは解ってたんだ、クデなら乗り越えてたよ。あの男は、アンタの父親は!?」

「父も既に死んでいるが病では無い、寿命だ」

「そうかい‥‥あの男は人族にしては悪く無かった」

「シデ殿は父とも親しかったのか?」

「止しとくれ、話をしたのも数える程さね」

「では何故(なにゆえ)父を褒められる」

「根性だけはあったからね、アンタ父親は」

「良ければ聞かせてくれぬか」

「‥‥少しだけだよ。そうさねあれは」

シデと名乗ったナサの従叔母は懐かしむ様に語り出した。

次回は6/10更新予定です。



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