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⑧⑤亜人族の集落

ちょっとずつ進んでますが笑

呼んで頂けると嬉しいです。

種族談義は続く。


「鷲人族ってさ、鳥人とは違うのか?」

「正確には同じだがそれは余りに大雑把な表現になる。鳥人と言っても色んな種族があるのだ」

「オレ達獣人だっていっぱい種族があるじゃん」

「確かに。じぁこの集落は鷲人族の集落なのかな?」


「そうだぞ人族」

答えたのはさっき中に入って行ったヤトと呼ばれた男で、お茶を淹れてくれていたらしく、それを俺達に渡してくれる。


「有難さん、喉が渇いてたんだ」

「かたじけない」

「アリガトー」

ヤトに礼を言って一口飲むと、美味いと感じた。


「お茶の味なんてどれも同じだと思ってたけど、これは何か違うと俺でも解るよ」

「嬉しい事言ってくれるぜ、まぁ美味いのは当然だがな」

「トウゼンって?」

「ツルギ領と言えば林業だけって思われてるが、茶葉の生産も盛んだったんだ」

「何故「だった」のだ?」

「味が良くてもこの険しい山地じゃ沢山作れないから、どうしても値が高くなる。茶にそんな金を出すのは、裕福か余程の好き者だ。そこにイクノ皇国や、その手前の「聖側領」が安くて味も当たり障り無い茶を大量生産するようになったんだ。あの辺りの山林は緩やからしいからそれが可能なんだろよ。だから今じゃ好き者が買う程度の量しか作らなくなったって訳だ。この茶もまだ特産品として売りに出してるが儲けは微々たるモンさ。でもアンタが美味いと言ってくれて良かったぜ、まだ質は落ちてないと解ったからな」

折角美味い茶なのに勿体無い。


「何処行きゃ買える?」

「褒めてくれた礼に一袋やるよ、後で持って来てやる」

「悪いな。もう一つ教えてくれ、この先には何の集落があるんだ?」

「何だ?デンボさんから行先聞いてないのか!?」

「ああ」

「だったら余計な事言えない、自分で聞きな」

そう言ってヤトはカーラとデンボに自慢の茶を運んで行く。

それを目で追ったナサが俺に呟いた。


「人族の集落では無かろう」

そうだよな。

人族なら高値とは言え院社(ヤック)から正規の『(コセ・ポーション)』を買えばいい。


茶葉の入った小袋をヤトが渡してくれ、礼を言って鷲人の集落を出る。此処から更に山林に向かって進むらしい。休憩を挟んだとは言え朝から登り傾斜の道を歩きっぱなし、なのにステトとナサの足取りは変わらず軽快で種族の体力の違いを痛感した。そしてもう山に入ろうかと思う様な場所に小さな集落が見え、前を歩いているカーラがデンボに何かを言われ俺達に向かって頷く。

どうやらそこが案内先の様だ。


「ふう、ようやくかってあれ?」

気が付くとナサは俺達より随分後ろに居る。


「遅れるヨ、兄さん」

「どうしたナサさん?」

「‥‥この景色、見た事がある」

「知ってる場所か?」

(とお)の時の記憶だが‥‥我等の集落があった辺りだ」

「ナサ兄さんの?」

「うむ、間違いない」


「その通りです」

ナサの言葉で振り向いたデンボがそれを認めた。


「あそこにある集落は鬼人族の集落で、カーラさんがお持ちの商品を所望してるのは鬼人族の族長になります」

(おさ)とな」

「はい、カーラさんは当然として、ナサさんにも会いたいと族長が」

「何故だ?俺達家族が集落を出て四十年になる、今更俺に何の用があるのだ」

「私は案内するのが仕事ですのでそれは。先ず集落に参りましょう」

そう言うとデンボは集落に向かって再び歩き出す。


「兄さんみたいにツヨいのかなフツ?」

「もっと強いのが居ると思う」

ナサさんは混血だ、生粋の鬼人族の力はそれ以上だろう。


「カーラは大丈夫??」

「それは心配しなくていいけどな‥‥」

「ナンだよ?」

「全くの余所者(よそもん)の俺達はどうだろ」

「えええ~??」

「冗談だよ。でもこれが終わるまでの俺達は彼女の護衛だし、いつもの様にお前はカーラを頼むぞ」

「うん!」


集落にしては規模も今まで見た中では一番小さい。

ナサは自分の記憶を辿るかの様にゆっくりと敷地に足を踏み入れると、何か違いを感じた様で立ち止まる。

「もっと、色々有った筈なのだが‥‥」

「四十年も経ってるんだぞ?そりゃ変わってるさ」

「そうか。うむ、そうかも知れん」


デンボが一つの家屋に案内して俺達に中で待つ様に言って何処かへ消える。

中は広い一室だけで真ん中に囲炉裏があり、薪に火が付いたままで湯も沸いた状態だった。

「この家屋は集会や話し合いをする為の場所でしょう、取り敢えず座って待ってましょうか」


カーラがそう言い、俺達は腰を下ろす。

「お嬢様はセフ殿と鬼人族との関係をご存知か?」

「いえ、祖父は何も。フツさんにも言いましたが「行けば解る」とだけです。族長がお相手なのも全く知りませんでした」

「何を用立てなされた?」

「ん?ナサさんは知らなかったのか」

「俺はお嬢様を無事クスナ様の元へ帰す為に同行しておるのだ、商いの事など聞かん」

「カーラも言ってなかった?」

「はい。商品の情報など無暗に吹聴しませんから」

それが「信用と信頼」に繋がってるんだろうな。


「注文の品はこれです」

カーラはナサに『(コセ・ポーション)』の瓶を一つ渡す。


「これは‥‥(ポーション)!?」

「混血って院社(ヤック)での扱いはどうなってる?」

「門前払いだ」

「そうか、じゃあ(ポーション)の事は詳しく知らないよな」

「オレも全然ワカンナイ」

「お前は知らなくていい」

「えええ~ナンでさ?」

「いやだって‥‥何でもない」

「?」

お前は傷を負っても自然に治っちまうから、と口に出掛かって止める。


「お嬢様様、これの効果とは?」

瓶をカーラに返しながら『(コセ・ポーション)』の事を聞く。彼女はかいつまんでナサに説明し、俺もナンコー領での出来事で侍従コヒ・メズの命が助かった事を付け加えた。


「そんな効果のある(ポーション)を何故鬼人族が欲するのか‥‥」

「単純に考えたら誰か死に掛けてるってのが普通だよな」

「でも三か月も前に依頼を受けたんですから」

「そんな前だともう死んじゃってるヨ」

「むぅ‥‥」


埒も無い事を話して考え込むナサを見たカーラが声を掛ける。

「族長から何かお話があると思うので、先ずはそれをお聞きしましょう」

「しかしこの様な(ポーション)を鬼人族が必要としてるなど、由々しき事が起こっているのでは?」

「気になるのは解ります。でもお届けした品をお相手がどう使おうが私達が関知するべき事では有りません。冷たい言い方になりますがナサ様はナンコー領属の騎士爵を持つ者、故郷とは言えツルギ領の内情を探るのは礼を欠く行為です」

「は‥‥申し訳ありません」

「思い詰めるのは駄目ですよ、もし私に出来る事が有ればナサ様のお力になりますから」

「お嬢様」

カーラは将来良い領主になる。


「お待たせしてすいません、もうじき族長が参られます。何分老齢ですので少し手間取っておられる様で」

1人で戻ってきたデンボが説明する。

そんなよぼよぼな鬼人なんて想像出来ない。


「鬼人族は長寿なんだろ?どの位生きたら老齢になるんだよ」

「さぁ私は解りかねます」

「ナサさんは解るか?」

「二百歳くらいが寿命となる目安だ」

「スゴ~い!!」

「ナサさんの母親は?鬼人族だったのに」

「病だった、人族の父の方が長生きしたくらいだ」

「そうだったんだ、それは残念だな」

「いや幸せだったのか知れぬ。もし父が先に死んでいたら、残りの長い人生を1人で生きる事になっていたのだ。母にとって辛かろう」


長寿だからって良い事ばかりでもないか。

次回は6/4更新予定です。


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