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⑧⓪異世界の作物

定番は出しとかないと(笑)

「何でこれがこの世界にあるんだ?」


手に持っている赤茶色の芋は紛れもなく『スイートポテト』だ、異世界(あっち)で食った事がある。

乾燥した土地でも育つし収穫時期が長い。保存が効くうえ作るのも比較的簡単で、酒にしたり家畜の餌にしたりと俺が居た村でも重宝されていた。


一言に「異世界」と言っても俺が経験した世界は、その世界のベトナムと言う国だけ。ただアメリカと言う大国の援助を受けていたので色んな文化にも触れる機会があった。勿論知らない事の方が多いと思うが、多少なりこの世界との違いは解ってるつもりだ。


一番大きな違いは異世界(あっち)には亜人族は存在しない事だった。人族は肌の色に違いはあれど俺と何ら変わらないし、牛や馬、鶏などもこっちの世界と変わりない。他にも細かい違いはあっても同じ様な生物や飲食物は存在していた。

しかし『スイートポテト』は違う。

こっちの世界に存在していない、言うなれば「共通していない」物の一つだ。

確かにこの(スイートポテト)ならツルギ領の様な痩せた土地でも育てる事が出来る。問題は異世界の産物である『スイートポテト』が何故この世界のツルギ領にあるのか、これを誰がどうやってこの世界に持って来たのか、今の所全くの謎でしか無い。


(スイートポテト)だけか?それとも他にも何か栽培してるんだろうか?

正直俺は農業を詳しくは知らない。とりあえず他の異物が植えられてないか、杭が立ててある所を重点的に雑草や延びた葉を引っこ抜き確認してみよう。


「フツ~、ヒマだよぉ~」

周りを警戒してくれてたステトの声で手を止める。そろそろ黒輪集落に戻った方が良いか。結局腰が痛くなるまでそれを続けたが何も見付けられなかったしな。

(スイートポテト)を一つだけ懐に入れ、思い彼女の元へ行く。


「ナニか見つけた??」

「ん~」

「アったのナかったのどっち!?」

「ま~あった‥‥けど、今は言えない」

「えええ~?」

「一応確認してからだ」

寝言の振りとは言え自分達の決まりを破る危険を冒して教えてくれたんだし、元舎弟だからってその事を軽く考えちゃ駄目だよな。

やっぱりこれはニノに断ってから言うのが筋ってもんだろう。


来た道を戻って黒輪集落に着くと、入れ違いに住人である奴隷達が出て行くところだった。

これからあの杭の場所に向かうのか、それか別の場所にも杭があって、そこでも(スイートポテト)を育ててるかも知れない。


「女王ステト、お帰りなさい!」

声を掛けて来たのは守役ヨトだ。

もうすっかり女王の奴隷だなお前。


「ん?ただいま?でイイの??」

「いいんです!いんです!!女王ステト、ニノさん達はあちらに居ますんで!」

「フツも一緒」

「お、おう」

ヨトが案内すると言ってステトの前を歩き出したが、彼女はそれに乗らず俺の腕を取る。

腕に胸が当たってるですけど。


「チッ」

聞こえてるぞ舌打ち!!


出て行く時に座ってた場所に行くとまだカーラとナサがそこに居た。

「お帰りなさいフツさん、一体何処に行ってたんですか?」

「ん、まぁちょっと。それよりお告げをしたのか!?」

「助言の事でしたら、ええ。大してお力になれなかったかも知れませんが」

「そうなのか?」

「そんな事無いでヤンすよ!女神カーラのお言葉は大変参考になったでヤンす!!」

ニノが茶を持ってこっちに来て、その茶をカーラに出すと自分も元居た場所に腰を下ろした。


「俺達に茶は?」

「どうぞ女王ステト、粗茶ですが」

今度はヨトがステトに茶を出す。


「扱いに差があり過ぎるのは気のせいか?俺には無いのかよ」

「自分で淹れるでヤンす」「自分で淹れろ」

(ひで)ぇ!!

ステトが一口飲んだ自分の茶を俺にも飲むかと進めてきたが、ヨトの目が鬱陶しいので遠慮する。


「それで結局宿はやるつもりなのか?」

「そのつもりでヤンす、その為に女神のお告げに従って必要な設備を作るでヤンす」

「セツビ?」

「女王ステトの様な女客専用の寝床をあっし等の寝床と少し離して建てるでヤンす」

「女がこんな集落に来ると思えないけど?」

「必ず男の連れが居るでヤンす。一緒なら安心でヤンしょう?」

「まぁ女1人でツルギ領に来るとは考え辛いしな。寝床は別にするのか?」

「兄貴の様な乱暴者だったら困るでヤンすからね、男はあっし等と同じ寝床にするでヤンす。他にも便所は別々、体を拭く場所も立てて鍵を付け、今みたいな野外で食べる場所の他に食堂も造りヤす」

「それっぽくなるじゃねぇか、でもどうやって客を呼ぶんだ?」

「後は余所モンを見掛け、客になりそうなら案内して、そうで無いなら襲うでヤンす」

「襲うのかよ!」

「あっし等は犯罪奴隷の集まりでヤンすからね、これも決まりでヤンすよ」

おまえは契約奴隷だけど。


用は済ましたからそろそろ出発する事にする。

黒輪集落(ここ)から領都アラギまでの道と距離をカーラがニノに確認していた。

今からだと順調に進めば夕方には着けるとの事だった。


「領都までは別の「黒輪」奴隷達しか()りヤせん、「黄輪」は領都に、「白輪」は逆のクルス領側の領地に集落が有りヤす。山に近い程道は険しいでヤンすが、そこを通った方が絡まれる可能性は低くなると思いヤすんで。良かったら帰りも寄るでヤンす、女神達なら集落(うち)奴隷達(やつら)も喜んで歓迎するでヤンしょう」

「ニノさん、有難う御座いました。」

「ドクヤク、アリガトね。」

「毒薬では無い、奴役(どやく)だ。世話になった」

俺以外の3人が挨拶を済まし歩き出したが俺はまだその場に居る。


「ニノ」

「へい」

「俺の仲間には見た物を言っていいか?」

「あっしは何も言っちゃおりヤせんぜ?あれは寝言でヤンすから、兄貴が自分で見付けたモンを誰に言おうが関係無いでヤンす」

「随分男を上げたじゃねぇか」

「何言ってるでヤンすか、前からでヤンすよ。兄貴が気付くのが遅いだけでヤンす」

「言ってろ、じぁな」


「兄貴!」

「何だ?」

「3年経ってあっしが自由になったらまた舎弟にしてくれるでヤンすか?」

「俺は『ゴート』に戻るつもりは無いぞ?」

「それでも良いでヤンす、やっぱりあっしは兄貴と一緒の方が楽しいでヤンすよ」

「物好きだよなお前は。俺の事を「兄貴」って呼んでる時点でまだ舎弟だろ」

「‥‥そうでヤンすね、うんそうでヤンすよね!!」

「また会おうぜニノ、それまでしっかりお勤めしとけ」

「それって何か悪っぽいでヤンすね!良い響きでヤンす!!」

「子供か!」

ニノは最後までニノ節だった。

そして俺は3人の後を追って足を速める。


皆に追い付き山の(へり)のあぜ道を目指し、そしてその道を領都アラギ方面に向かって歩き続ける。ニノが言った通り他の集落の奴隷達に出くわす事も無く順調に距離を稼いだ。


「フツさん、さっきは何処に行ってたんです?」

「昨日の夜、ニノが奴隷に課せられてる仕事場を教えてくれたんだ」

「決まりを破ってくれたんですね」

「下手な寝言の振りしてだけどな」

「その場所で何か見付けたんですか?」

「ああ」

「でも教えてくれないんだよカーラ!」


俺が意地悪してると思ってるステトに説明する。

「だからかぁ~、フツがケチなはずナイモンね!」

「悪かった、一応ニノにも仲間に言って良いか聞いてからと思ってさ」

「相変わらず義理深いですねフツさんは」

「後味悪くなるのが嫌なだけだよ」

「ふふ、そういう事にしておきましょう。それで何を見付けたんです!?」

「これだ。多分これがツルギ領の新しい産業だと思う」


俺はマントルの懐に入れてあった『スイートポテト』をカーラに投げた。

「え?これは‥‥何でしょう?見た事が無いですね」

「オレもこんなの知らない」


それはそうだろう、でも知らないだけで前からツルギ領にはあった可能性も否定出来ない。

ナサにも確認しておいた方が良いな。

「ナサさんがツルギ領に居た頃に、これを見た事があるか?」

「いや俺も初めて見る。これは何なのだ?」

「お父様が仰っていた(ポーション)の原材料とか?」

「それは『芋』さ」


ステトがカーラの持っている『スイートポテト』の匂いを嗅ぐ。

「ウソだぁ~匂いするもん、パタは匂いなんかしないヨ」

「パタじゃ無い、でも『芋』だ」

「それって新種って意味ですか?」

「ある意味ではそうだな。これはこの世界には存在しない筈の『芋』なんだよ」


俺の言った意味をカーラとステトが理解した。

「フツが飛ばされたトコにはあったんだ?」

「あったし、実際に食った事もあるぞ」

「どんな特徴があるのですか?」


呼び名から栽培にまつわる事まで俺が知ってる事を話す。

カーラとステトは興味深く聞いてるが、ナサはと言うとその意味を察して俺を見つめていた。

次回は5/20更新予定です。


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