⑦⑨杭がある場所
設定がユルユルなのはご勘弁を(笑)
朝目が覚めると先に寝ていたナサの姿が無iい。
寝過ごしたかな?
結構遅くまで話し込んでいたから勘弁して貰おう。
奴隷達が作っている余所者に漏らしてはいけない物とは何か。
それをニノは下手な寝言の振りして少し教えてくれた。
芋は芋でも一般に出回ってる芋では無い『芋』らしい。
「ニノ、おい起きろ」
「ぬにゃ?」
「さっさと起きろ、俺の連れが居ないし女性陣の様子も確認したいんだからよ」
「え?兄貴??どう、、し、、、はっ!!」
「外で寝るのをぶつくさ文句言ってた割には深すぎるだろ眠りが」
「急かさなくても起きるでヤンすよ、ふあ~っ」
ニノは体を伸ばして立ち上がる。
「兄貴と再会出来たのは夢じゃ無かったんでヤンすね~」
「夢でも良かったんだけど?」
「さっそく酷い言い草!爽やかな朝が台無しでヤンす!!」
「お前に爽やかとか無い。それより顔洗いたいんだけど『飲水魔具』とか置いてないか?」
「奴隷集落に魔具なんてありヤせんよ、あるとすればこれだけでヤンす」
ニノは自分の首に嵌められてる「付輪」を触って言った。
あくまで奴隷だからな、魔具を持たせる訳無いか。
「じゃあ朝飯食わせてくれ、腹減った」
「どっちが奴役か解らないでヤンすよ」
四つある平屋は向かい合う様に建っている。その真ん中にある広場で煙が上がっていて、黒輪集落の住人である奴隷達が集まっていた。
「何騒いでんだ?遊んでるみたいだけど良いのかよ」
「まだ仕事の時間じゃ無いでヤンすから良いんでヤンすけど、何でヤンしょうね?行ってみるでヤンす。」
ヤンすヤンすうるせえな!
近くまで行くと朝飯の準備か火を起こしてるみたいで、奴隷達が何を焼いているみたいだ。奴隷達全員が輪を作り何かに夢中で、纏め役である奴役が現れたのに誰1人挨拶をして来ない。
「何だ?」
「さぁ?でヤンす。オイお前等!道を開けるでヤンすよ!!」
その言葉でようやく気付いたのか挨拶をし始めた。
集まってる輪の中心に居たのはカーラとステトで、ナサは護衛の為カーラの横に立っている。
「ステトの奴、こんな所でその格好は可哀想だろ」
ステトはマントルを脱ぎ、あの卑猥な服姿を露わにしていた。
襲われても文句言えない格好だけど決まりがあるから手を出せない。
こりゃ女日照りの奴隷達にとって拷問だぞ。
少しは考えてやれ、って無理だろうけどさ。
「女王ステト、俺の菓子をどうぞ!甘くて美味いんだぜっ」
「いや俺が買ったこのジャムの方が甘い!!」
女王ステト?
拷問どころか喜んで自分達の食い物を献上していた。
「あ、フツ!!」
ステトが俺の方に寄って来る。
「何だ『女王ステト』って?」
「え~?知らないよ??」
「お前何かしたろ?」
「オレをヘンな目見るし、キモチ悪いからぶっ飛ばしただけ」
「お前のその際どい姿は見られて当然だ。」
「フツはイイのっ」
それもある意味拷問です。
「アンタ!俺達の女王とどんな関係だ!?」
ニノの守役ヨトって奴だ、お前は硬派だと思ってたけど。
「フツはオレの相棒だよ」
「相棒?それってつまり、女王をあんな事したり?」
「あんなコト?」
「そんな!!」「優男に女王ステトが??」「嘘だと言ってくれ女王~!!」
してねぇし!
「アンタみいな優男に女王は似合わねぇ!!」
バコ!
「フツをそんな風に言うな」
「おお!!女王ステトに殴られた!」
「俺も!俺も!」「ズルいぜヨトさん!」「女王の手が汚れるっ」
バコ!
「もう!ウルサい!!」
更にステトが殴ると歓声が上がる。
うん何か解った、変な趣味に目覚めたんだな奴隷達は。
一方のカーラも奴隷達に囲まれている。
やけに行儀が良いぞ?隣にナサが目を光らせてるからか?
その中には案内させたお喋り3人衆のナワ、グン、ハタの姿もあった。
「女神カーラ、もう少しで焼けますからね~っ」
「馬鹿!お前の焼いたヤツはいつも生焼けなんだよ!!女神、俺のが美味いっすから!!」
「何言いやがる!焦がしてるだろがお前は!!」
今度は女神カーラ??
「起きたんですねフツさん」
「え?ああ」
「昨日は私達だけ建物の中ですいませんでした」
「いや、外も悪く無かったよ」
「オレもソッチが良かった~」
「ふふ、次は皆で野営しましょう」
そう言いながらカーラも俺に寄って来たが、今は近寄らないで欲しいとか思ってしまった。
だって先の展開が読めるから。
「近い!離れろ!!」
「女神に馴れ馴れしい!!」
「女神と女王を独り占めしやがって!!」
「死ね!」「羨ましいぞ!」「地獄へ落ちろ!」「ちょん切ってやる!!」
ほらなって、おい最後のは何だ!
うるさいので俺は女神と女王から離れ、ナサの所に行く。
「ステトが『女王』になった理由は解ったけど、カーラが『女神』になったのは?」
「お嬢様があの者達に朝の挨拶をしたらああなった」
「彼女は何て言ったんだ?」
「普通に朝の挨拶を仰っただけだが?」
カーラは丁寧な言葉を使ったんだろうな、彼女の気高い雰囲気や人柄も相まって後光でも見えたか。
「何となく解った、と思う。」
「そうか?俺には全く解らんが、お嬢様に何かをするとも思えんから放って置いた。」
「決まりが無くても『女神』じぁ手出しなんて出来ないさ」
逆に「女王』には出して欲しいみたいだけど。
ニノが一喝すると奴隷達は散り散りになり、恨めしいそうに俺を見て焼いていた朝飯の串焼きを食べ始めた。腹が減っていたので俺達もご相伴に預かる事にする。女神と女王の為に焼いた串焼きだからか、焼き加減も丁度良く中々美味い。
俺達4人が木で作った机で串焼きを食ってると、ニノにカーラとの関係性を聞かれたので彼女は商人で俺達はその護衛だと説明した。
「女神カーラ」
「お前まで女神呼ばわりしなくていいだろ」
「皆が呼ぶならそれを尊重するのも奴役の役目でヤンすよ。女神カーラのお告げが欲しいでヤンす」
お告げって、設定に忠実だなこいつ。
「助言の間違いだろ」
「兄貴は黙ってるでヤンす、女神が仰る事は何でも「お告げに」なるでヤンすよ」
昨日俺が言った宿でもすればいいって話を本気で相談するつもりの様だ。
「助言と申しますと?」
「へい、実は」
「ちょっと待てニノ。悪いカーラ、こいつの話は長くなるから少し出て来ても良いか?」
「え??別に構いませんが何処へ!?」
「オレも一緒に行ってイイ?」
もう黒輪集落は安全だし、外に出る方が危険かも知れないからな。
「ナサさん1人で良いか?」
「構わんぞ」
俺は立ち上がるとステトに頷いた。
彼女も動けるのが嬉しいのか、嬉々として立ち上がる。
「悪いが頼むよ、カーラはそいつの話聞いてやってくれ」
「ちょ、フツさん!?」
「直ぐ戻る」
決まりを破れば罰を受けるのに、ニノは俺の顔を立てて教えてくれた。
先に俺が見てそれから皆に話すか判断しよう。
早速ステトを連れ黒輪集落を出る。
東の方角に少し行った所に杭があると言っていたから、それを探そう。
「ドコに行くのフツ?」
「この先で杭を見掛けたら教えてくれ」
「杭?昨日あったみたいなヤツ?」
「そう言えばあった‥‥な」
「フツ?」
杭は領境を示したものじゃ無かったのか?
だとしたら茶輪奴隷達も何かを作ってるって事かも知れない。
「いや何でも無い、とにかく杭があったら言ってくれ」
「任せて!」
歩いてる道は道と呼べないものだったが、筋の様な凹みが有りそれに沿って東に進んだ。
山の近くなので魔獣や野獣が出てもおかしくない。
川も見当たらないし乾燥している。こんな土地で何が出来るんだ?
「あった、杭だよ!!」
杭は規則正しく打ち付けられていて、どっち側にも雑草が生えており、作物の姿は見えなかった。
「ナニを探すんだィ?」
「俺もよく解ってないんだ。少し見て回るからお前は周辺に気を配ってくれ」
「うん」
ステトに周りを警戒して貰おう、その間にまず俺が確認すればいい。
雑草が踏みつけられて人が入った痕跡がある。
ニノが言っていた東の方向に杭がある場所は多分此処の事だな。
俺は杭の両側を何か目新しい物がないか注意深く見回す。
それから踏みつけられた跡を何回も往復したが、いくら探しても作物らしき姿は見当たらない。
絶対何かある筈だ。
視点を変えて雑草に目をやる事にすると、違う葉が生えている事に気付く。
その葉を引っこ抜くと根が深いのか、最初は重かったが何とか引っ張り上げる事が出来た。
ずるずると出てきたのはその根に何個も付いてる赤茶色の何かで、土を落としてそれを手に取る。
「何でこれが‥‥」
俺はこれを知っているが知ったのはこの世界じゃない。
飛ばされた世界のベトナムという国でだ。
現地では『ホワイラン』と呼び、
英語では『スイートポテト』と呼ばれる芋の一種だった。
次回は5/17更新です
読んで頂き有難う御座います。
☆マーク押して頂けると励みになります。
評価頂けるとやる気になります。
レビュー頂けると頑張れます。
宜しくお願いします~。




