⑦④過去との後会
拙い文章で申し訳無いですが、少しでも楽しんで貰えたら幸いです。
ニノ・イシロは『ゴート』に入って二、三年のまだ駆け出しの男だった。
俺より年上で、確か歳は25くらい。
変な喋り方をする要領の良い野郎で、元々仲介所で働いていたと聞いた覚えがする。そんな奴がどうやって三大ファミリーの一つである『ゴート』に入れたのか理由は知らない。どうせ誰かに取り入ったくらいにしか思ってなかった。
本人の希望か解らないが頭に言われ、俺の下で修業する事になる。いざ舎弟に加えても荒事が苦手で扱いに困る野郎で、本当何で組に入ったんだと首を傾げたもんだ。取り敢えず読み書きと算術が出来るので縄張り内の娼婦館や賭場の事務仕事の一部を手伝わせ、それ以外では死なない様に俺の後ろを付いて来させてた。そんな奴がツルギ領で奴隷になって、しかも奴隷集落の一つで奴役って言う纏め役に選ばれてるなんて本人を知ってる俺からしたら信じられない。
絶対役不足だと思うんだが。
俺の通り名を持ち出し、自分はその片腕だったって?
俺の陰に隠れただけじゃねぇか。
「全くよく言うぜ。」
「ナニが?それよりもうソコだよ。あ!」
独り言をステトに突っ込まれてると、集落目前でお喋り君達奴隷3人衆が俺達を置いて走り出して行った。
「アンタ等を連れて来たなんて知られたら何されるか解んねぇからな、勝手に来た事にしてくれ!!」
「俺達はアンタ等を知らねー、集落で初めて会ったんだ!!」
「そうだ!何も喋ってねぇからな!!」
そう言って集落の中に入って行く。この状況はどう考えてもお前らが連れて来たって言ってる様なもんじゃねぇか。あっけに取られ棒立ちになってる後ろを歩いていたカーラとナサに追い付かれた。
「置いて行かれましたね。」
「追い掛けなくていいのか?」
2人も呆れた様子で奴隷3人の走り去った姿を見ていた。
「問題無い。ちょっとした伝手が出来たみたいだしな。」
「伝手ですか?」
「あいつ等集落の奴役ってのがな、、、」
そのニノの事を皆に説明する。
「幸運と言って良いのか解りませんが、まさかフツさんの下で働いていた人物がツルギ領で奴隷になってるなんて。世の中は狭いですね。」
「へ~フツの知り合いかぁ、じぁ食いモンも大丈夫だな!」
カーラとステトは解ってるが、ナサは俺の王都でやってた事を知らないから軽くその辺を説明する。
「『ゴート』と言う組はそんなに有名なのか?お主もやるじゃないか。」
「自慢する様な事じゃ無いけどな。でもまぁそれが役に立ったよ。」
そのまま4人で集落の前まで歩いて行くと設れていた柵が開けっぱなしだった。
平屋は見える限り四棟あり、放し飼いの鶏が居る。此処が「黒輪」の新顔奴隷達の集落かはまだ定かじゃないが誰かの住家で間違い無さそうだ。
「何だお前等!」
「うわ!余所モンが居るぜ!」
敷地に居た数人の男達が俺達を見て慌て始める。
「コイツ等まだ奴隷になってねぇ!!」
「女も居るぞ!どうなってんだ??」
「誰か奴役を呼んで来い!」
「どうして集落を知ってんだよ!?」
乗り込まれるなんて初めての事だろう。
決まりがあるからか、喚き騒いでても俺達に害を与えようとしない。
「俺達は仕事でツルギ領に来たんだよ、もう日も暮れるし宿が見当たらなかったから一晩世話になりたくて頼みに来た。」
俺は騒いでいる奴隷達に声を掛ける。
「はぁ?コイツ何言ってやがんだ??」
「何処だと思ってやがる!!」
「頭おかしいのか!!」
また頭おかしいとか言われたし。この罪は最初に言ったあいつ等に償って貰おう。
「さっき戻って来た3人が事情知ってるから聞け。それと奴役っての呼んで来てくれ、話があるんだよ。」
「さっき戻った3人?」
「確かナワ達だ。」
「呼んで来い!それと早く奴役にも来てもらえ!!」
「お前等動くなよ!!」
後から出て来た奴隷達が睨みを利かせて俺達を囲み始める。
「オレあのトリは食えないよ、何かカワイイし。」
「俺が締めれるが?」
「え~ダメだよ兄さん殺しちゃ、カワイソーじゃんか。」
「そんな目で家畜を見た事が無いから解らん。卵はいいのか?」
「オレ卵って食った気しない。」
「お主は食に関して我儘だな。」
何の話してんだよ。
気が早い猫娘と混血男前が晩飯の話をしていると何食わぬ顔で平屋に入って行ったお喋り君達3人が連れて来られる。俺達を見て目を逸らした。
「ナワ、グン、ハタ、お前等が集落の場所を教えたのか!?」
「脅されたんだよ!見た目以上に強かったんだ、言う事聞くしか無いだろ!!」
「それにその綺麗な姉ちゃんは金を持ってるぜ!獲物をおびき寄せたって事だよ!!」
「そうだよ、皆でやりゃ大丈夫だぜ!!金目のモン頂いておっ帰しちまえばいいのさ。」
そう来たかお喋り3人衆、お前等の名前は覚えてやらんからな。
「よっしゃ、俺がその金貰う!」
「早い者勝ちだぁ!」
ブーーーーーン、ドコォン!!!
「ベヘッ」「ギャ」「ちょっ、ハギャ」
取り囲んでいた奴隷達の数人がカーラに襲い掛かると、ナサが鉄の塊の様な大剣を鞘ごとそいつ等に殴りつけてぶっ飛ばした。
「この野郎!皆行くぞ!!」
「分け前は平等だからな~!」
それが引き金となっ奴隷達が動き出す。狙いはカーラみたいだが、ナサはそのまま大剣を鞘ごとぶん回して誰も寄せ付けなかった。
「あの獣人女と優男狙え!!」
近付ける的が俺とステトになると今度は俺達に狙いを定め、粗末な武器で襲い掛かって来る。
それをステトが赤い籠手で受け止め俺が殴り倒すを繰り返した。
はっきり言って弱過ぎるぞお前等。
10人ばかりお仕置きすると、もう残りはお喋り3人衆と1人だけ。
全員で16人と言っていたから此処に居ないのはあと2人だ。
「もういいだろ?俺達は泊めて貰いたいだけなんだよ。」
「食いモン!!」
「お嬢様には鍵付きの部屋を。」
君達は黙ってて。
「・・・・俺達じゃ決めれねぇ。」
「その奴役の方はどちらに?宿をお借りするのにお話がしたいのですが。」
するとカーラが無事な4人に向かって居場所を聞く。
「奴役は今、」
「何コレ??お前達何してるでヤンすか???」
その時、別の声が響き渡る。
この変な喋り方は間違い無く聞いた事のある声だ。
「奴役!!」 「ニノさん!!」
「どうなってるでヤンすか!!それにソイツ等は誰??」
声の主は1人引き連れている。
「奴役、そいつ等余所もんですぜ。おい!ナワ、グシ、ハタ!!説明しろ!!」
「アイツ等頭おかしんですよ、一晩泊めろって乗り込んで来たんです!!」
「皆やられたんです、何とかしてください!!」
「ヨトさんだったら負けぇ!!」
引き連れた奴はヨトと言うのか、奴役の守役って所だな。
「襲って来たのは奴隷達の方だ、俺達は本当に一晩泊めて欲しいだけなんだよ。」
「てめぇ等!無事で集落から出れると思うなよ!!」
「出れるぜ?奴役さんが許してくれるさ。」
「何を言ってるでヤンすか、そんな事、、、、え?」
「そうだろニノ、さん?」
「、、、、きゃああああ!!」
次回は5/2更新予定です。
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