⑦②ツルギ領
四章では過去や異世界の話などが絡んで戦う機会が余り無いかも知れません。
自分の中では結構重要な章にしようと思ってるのでよろしくお願いします~
次回の更新は4/26になります。
藪から出て来た5〜6人の男達は全員人族だった。持ってる武器は粗末な物だが、一応安全の為カーラを後ろに行かせ俺とステトが前に出る。
「はいはーい、アンタ等余所から来たよな?ここから先に行くにゃ通行料を払ってからだぜ。野郎の2人は良いトコ見せようなんて思うなよ?大人しく言う事さえ聞きゃ怪我はさせねぇ。」
1人が手に持つ剣を俺達に突き付けて脅して来た。
何だかやけにぬるい事言う賊だな?
女を寄越せとか男は殺すとか無いのかよ。
よく見れば首に奴隷の「付輪」がはめられられていた。
見た目は同じだが軽罪奴隷の付輪は罰として締まり、重罪奴隷の付輪は高熱で焼かれるよう出来ている。
「お前等奴隷だろ?こんな事したら首絞められるか燃やされるぞ。」
俺は首にある奴隷の証の効果を一応言ってみる。
それを行使出来るのは持ち主だけだが何処に居る?
「まさか持ち主はお前等を野放しにしてんのか?」
「ベラベラうるせーんだよ男前、関係ねぇだろ。いいから金目のモン寄越せ。」
いや男前はそっちの方だけど。
カーラと一緒に後ろに居る本物の男前ナサを見やると何か頷いてるけど?
お、こっち来る。
ガン!バコ!!ドカッ
そして3人を殴り倒す。いきなり??
「こらこら、これじゃどっちが賊か解んねぇだろ。」
「俺を見たのはやれと言う事だと思ったが違うのか?」
「いやそうじゃ無いけど~楽でいいけど~問答無用過ぎる。」
「当たり前だ、俺はこういう輩に容赦する気は無い。」
駄目だこの人、とか言って俺も止める気無かったけどさ。
そうこうしてたら残りの賊達が我に返り喚き出した。
「ふざけんなよテメー等!甘い顔してたら調子乗りやがって!!」
「無事このまま行けると思うな、他の奴等が黙ってねぇからな!!」
残った3人の内2人がナサに向かって襲って来る。
「うわ、べっ!!」
「女〜!!はごっ」
今度はステトが硬い籠手で殴り気を失わせた。
「へへへ、オレも負けてらんないからね。」
「名はステトだったな、良い動きだ。」
「聞いたフツ?兄さんにホメられたよ!」
「偉い偉い。でもこの人と張り合わなくていいから。」
俺は無事でいる1人の首には付輪が無いのに気付く。
「な、何だよ?」
「お前だけ奴隷じゃ無いよな?どう言う繋がりだ!?」
「・・・・」
「それと教えてくれよ?犯罪奴隷がこの何でこんな自由に出来るんだよ?」
「・・・・」
駄目だ、何かを恐れてるのか喋ろうとしない。
「口を割らせるか?」
ナサがそう言うので後ろに居るカーラを見た。
「その必要は有りませんナサ様。この調子だとこれからもこういった場面に合うと思いますので、いずれ解ると思います。今は先に進みましょう。」
「は。」
その1人を捨て置いて俺達はそのまま歩き続ける。
ツルギ領の領都は「アラギ」と言って、カーラの取引相手は領都に居らしい。向こうから接触して来るみたいで、前もって渡されている割札を見せると取引相手本人の所まで案内してくれる手筈だった。おそらく検問所で見せる自分証明魔具で『カーラ・マハが来た』との連絡が先方に入るんだろう。
ナンコー領でも自分の父親に同じ様な事されてたけど。
「相手の事は何も解ってないんだな?」
「はい。祖父が最後に受けたお客様ですが「行けば解る」と何も教えて下さいませんでしたね。」
「どうやって注文を受ける?」
「メスティエール商店に届く封筒の中にこの割札と注文の品が書かれています。期日は三ヶ月とありました。」
「そんな数の『薬』なんて簡単に手に入らないと考えてかな?」
「そうだと思います。封筒を受け取ったのが二か月と少し前でした。幸運にもまだ期日まで余裕がありますから焦らず行きましょう。」
ツルギ領の地理的な事は把握してるみたいたが、カーラも初めて入る領なので実際徒歩でどの位の距離なのか詳しい事は解って無い。
出来れば野営は避けたいので、人里に出ようと開けた道を探す。
しかし続く道は相変わらず傾斜の激しい道だった。
いくら田舎領でも民家の一つも見当たらないなんて珍しいな。
それから何回か賊に出くわしたがナサとステトが撃退する。そいつ等も奴隷の付輪ツクモ)が首にはめられていた。
どうもおかしい。はなから殺す気も無いし、女に手を出そうとしない。
そもそも犯罪奴隷達が自由に行動出来てるのもおかしいんだけど。
やはり伯爵さんが言った通りツルギ領は何か変だ。
西日が陰ってくる、こりゃ本当に野営する羽目になるなと覚悟していたらまた賊が現れた。
「いらっしゃ~いお客さん達、ここに来たのが運の尽きだ。ほら、サッサと金目のモン出してよ。」
人族3人の男が変わり映えのしない文句で錆びた剣や斧を向けて来る。何なんだこいつ等?まるで小遣い稼ぎをしてるみたいだぞ。3人共これまでの奴等と同じ奴隷だったが、首にはめられてある付輪の色が違う。さっきまでの犯罪奴隷達の付輪の色は茶色でこいつ等のは黒だった。
ナサも気が付いた様で隣のカーラに何か言っている。もう賊に耐性が出来たのか、それを聞いたカーラは前に出て来て賊の男に問い掛けた。
「彼方達の付輪の色、今まで出会った茶色の方達と違いますね?何か意味があるのですか!?」
「あ?茶輪の田舎者と一緒にするんじゃねぇ、俺達黒輪は都会生まれなんだからよ。」
「都会?ですか。」
「そうさ、まぁ奴隷にとっちゃ此処も、」
「馬鹿!余計な事言うな。」
口が回る男を別の1人が止める。
そして再び持ってる武器で俺達を脅して来た。
「女に2人に軟そうな男が1人。そのデカい奴さえやればいいんだからよ。楽なこったぜ。」
「お主言われてるぞ?」
ナサが面白がってる。
あんたと比べたら誰でもそう思うわ!
ガン!!
「ぐえっ」
「フツは軟なんかじゃないよ。」
それを言った男の頭をステトが殴った。
「ステト、もう1人の方頼む。」
「兄さんが早い。」
ゴン
今度はナサが殴る。
「そいつはいいのか?」
「ああ。」
俺は1人残ったお喋り男に近付いてナイフを抜いた。
「な、何だよ?俺を殺すのか!?奴隷だからって簡単に殺していいと思ってんのかよ!」
「奴隷じゃなくても追い剥ぎなんかしたら殺されても文句言えねぇだろ。」
「金目のモンさえ出しゃ、アンタ達を殺すつもりは無かったんだよ!」
「関係ない、これが逆だったらお前はどうする?」
「そんなの、、解らねぇ、、、、」
正直な奴だ。卑劣な奴じゃ無さそうだし、この男なら女相手でも無茶はしないだろう。
まずは雇い主が先だ。
「カーラ、何か聞きたい事あるか?」
「さっき彼方が言っていた黒輪が都会生まれとはどういう事ですか?!」
「・・・・・」
答え様としないのでナイフを耳に添える。
「ほら、教えろ。片耳になりたくないだろ?」
「お、俺達黒輪の奴隷は皆中央領の出身なんだよ。」
「茶色の付輪の奴隷達は彼方達とは別の犯罪奴隷で構成されてるんですね?」
「ああ、茶輪の奴隷は岩側領出身の者が多い。」
「ツルギ領の奴隷は付輪で色分けされてるんですか!?」
「強制じゃ無ぇ、「黄輪」以外は自由に選べる事なってんだ。」
「「黄輪」?他に何色の奴隷集団があるか教えてくれませんか?勿論お礼はします。」
商人らしい情報の引き出し方だった。ナサは絶対力尽くで聞き出すだろうし、俺とステトも似た様なもんだ。
こいつも股聞きみたいだが、ツルギ領に犯罪奴隷達が増え始めると出身地が近く話も通じる奴隷同士が集まった。それで色分けする様になったという。
犯罪奴隷達の集団は中央領出身者が多い「黒輪」、岩側領出身者か多い「茶輪」、要側領と中間領は「白輪」、女の奴隷が集まる「黄輪」の四つで、新入りはどの色の奴隷集団に属するか選べるが簡単には替えられず、そして何故か聖側側出身の奴隷は受け付けてないらしい。
「人数的には何色が多いんだ?」
「ハッキリした事は解らないけど「黒輪」「茶輪」が多いかな、「黄輪」と「白輪」はそんなに多くないって聞いた事がある。なぁもういいだろ?これ以上喋ると俺がヤバいんだよ」
「最後に一つだけ、彼方達犯罪奴隷はツルギ領ではどんな仕事を課せられてるんですか!?]
「農作業だ。」
「農作業?」
「ホントにこれ以上は勘弁してくれ。」
カーラは少し考えて、その男を解放しようとしたが引き留める。
今度は俺が聞きたい事が一つだけあった。
「ちょっと待ってくれ、なぁ何処か宿はないか?」
「領都以外で宿なんて無い。」
「ここまで民家も見なかったし、お前等奴隷は何処で寝起きしてるんだよ?」
黙る男にまたナイフをちらつかせた。
「俺は彼女みたいに優しくねえぞ?」
「お、俺達黒輪の奴隷集落があるんだ。」
「よし、これから俺達をそこに案内してくれ。良いよなカーラ!?」
「え??」
「だってもう日が暮れそうだし、もっと情報欲しいだろ?」
「正気ですか?無謀過ぎます。」
「理由は解らないけど奴隷達は乱暴しても殺す気は無かったみたいだしさ。それにナサさんやステトも居るんだし大丈夫だよ。」
「確かにこのまま何も知らず領都まで行くのも不安が残りますけど、、、。」
賊である犯罪奴隷達の住家に泊まらせて貰おうなんて常識外れもいいとこなんだけどさ。
「ステトもナサさんも良いよな?」
「食いモンあるかな~?」
「俺は構わない。」
俺達は保存食しか持って来て無いし最近舌が肥えたのか出来れば遠慮したい味だ。
お喋り君に確認しとかないと。これってやっぱり正気じゃ無いのかな?
まいいや、俺はもう決めた。
「食い物とかある?」
「は?」
「あまり不味いのは嫌なんだけど?」
「は??」
変なツルギ領なんだから、これは『郷に入っては郷に従え』と言えなくも無い。
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