⑦⓪ド寝坊
読んで下さる皆様有難う御座います、第三章はこれで終わりです。
本当にグダグダのガバガバで中々進まない展開ですが、これからも懲りずに読んで頂けたら嬉しいです。
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「やっちまった。」
そう俺は、いや俺達はやっちまってしまった。
『遊女亭シノガ』で慰労会って名の半ば悪ふざけ飲み会は盛況の内に無事終わり、、、、いやそれは嘘で盛況の意味が違うし無事でも無かった。
パパさんは泥酔の果てそのまま寝るし、執事さんは物足りないのか「次の店だ!」とか叫んでた。騎士ナサは獣人達とどっかに消えてたし、俺もママさんのお膝元で横になり吐き気と戦ってた。
酒を飲んでない侍従コヒが馬車を呼んでくれ領主館に帰ったのが朝方。
当然寝過ごし、今日出発するつもりが起きたら午後も遅い時間で二日酔いだった。
「すんません。」
「何やってるんですか。」
「ダメだよフツ~。」
領主館三階にある客室で目を覚まし、飛び起きて二階の談話室にいたカーラとステトに事情を説明した結果、こうしてお説教を受けている。
因みにパパさんはまだ夢の中。家に帰った執事さんも奥さんに怒られてると願う。
騎士ナサの野郎が良い目合ってたら呪う。コヒは有難うな
「今日の出発は無理ですね、今から出ても着くのは夜中になりますから。」
「申し訳ない。」
「オレ達もう準備出来てたんだぞ~。」
「面目ない。」
俺が朝方に帰って来た時点で諦めていたんだそうだ。
本っ当に恥ずかしいごめん!!
「お父様が言い出した事ですし致し方ありませんけど、、、、寝坊とか飲みすぎとかは構わないんです。殿方にはそういう時も有りますから。」
「いや酒を飲んでも飲まれたら駄目だろ。今日を無駄にさせて悪かった。」
「酒がフツを飲むの?どうやってさ??」
「酔い過ぎるまで飲んだら駄目だって意味だよ。」
「そ・れ・よ・り!!」
「はい?」
「たいそう綺麗なママがいらっしゃるお店みたいですね?フツさんが気に入られてその女性に膝枕をされていたとタキ様が教えてくれました。」
あの馬鹿力執事!何余計な事教えてんだ!絶対面白がって言いやがったな!!!
「吐きそうだったんだ、それを介抱してくれただけだよ。」
これ何の弁明?俺は悪い事してないぞ??
そう思ってはいてもカーラの態度を見ると口には出せない。
慰労会とか言い出したパパさんのせいだ。
執事さんも傷口に塩塗りやがって、嫁に尻敷かれまくって死ね!!
あと関係無いけど男前騎士も寝首かかれやがれ!!!
コヒは、うん有難うな。
「フツも雄だもんな、オレは許すよ。」
「ステトさん、それは狡いです。」
「だってモテない「ツガイ」よりモテる「ツガイ」の方がイイじゃん。」
「それはまぁ、、、ゴホン!とにかくフツさん、明日の朝に出発しますからいいですね?お酒もそれまでにちゃんと抜いておいて下さい。」
「はい。」
ステトの「ツガイ」発言でこの場は助かったな。
その表現で卑猥さを感じなかったのはこれが初めてだ。
カーラはメスティエール商店にステトを連れて顔を出しに行った。
俺は風呂を貰い、やっとさっぱりして再び談話室で時間を潰す。二日酔いのせいか体が熱いので扉は開けたままにしておいた。
「あら?お姉様とステトさんは居ないのですか!?」
濃い目の黒い茶を飲んでると妹ちゃんが入って来る。
今日の妹ちゃんは自然な髪型で、あのけばけばしい化粧もしてなかった。
「ああ、ちょっと出掛けてるけど直ぐ戻って来ると思うぞ。」
「そうなんですの?今日お姉様達と遠出なさると聞いてましたけど。」
「言わないでくれ、俺のせいで明日に延期になった。」
「座ってもよろしいです?」
「どうぞ。」
向かいの椅子に妹ちゃんが座ると黒いお茶を入れてやる。
「有難うですわ。」
「そのまま飲むと苦いぞ。」
「これくらい大丈夫ですの、、、、にがっ!」
置いてあるステトの蜂蜜を継ぎ足した。
「何ですの!?」
「いや何か雰囲気変わったなと思ってさ。」
「昨日お姉様とステトさんと出掛けて私、気付きましたの。」
着飾る事や綺麗に見せる事は決して悪い事では無い。生きて行く為に絶対必要な物でも無いが、女にとって生活に潤いを与えてくれる。市井の者達も流行りは知ってるし追う者も居る。価値観は人それぞれだ。妹ちゃんはそれに振り回されて背伸びしていた事に気付いたらしい。
「お姉様はそんな事に興味が無いのにあんなにお綺麗ですわ。ステトさんも乱暴に見えて、それが逆に何て言いますの?格好良いですの。美しさとは内面から磨かないといけないのですわね。」
「あいつは見えてじゃ無く実際そうだけどな、でも言いたい事は解るよ。それで昨日は3人で出掛けてたんだろ?楽しめたのか!?」
昨晩女性陣の慰労会??の内容を教えてくれる。妹ちゃんが真面に領都を出歩くのは初めてだったそうで、屋台で買い食いしたり、大道芸を見たり、若い女が集まる繁華街で服飾店を覗いたり、カーラの説明を聞きながら領都の名所を回ったりしてたみたいだった。
「ナンコー領はてっきり田舎領だと思ってましたの。ところが訪れたお店の人達が言ってましたの、王都にも負けない素敵な領だと。」
「俺もそう思うぞ、ステトはこの領が気に入ったみたいだけどな。」
「ステトさんは美味しい食べ物がいっぱいあるから好きだって。」
「あいつの基準は参考にしなくていい。」
「そう聞いて私は意外でしたわ。するとお姉様は比べるものでは無いって、その土地土地の良さがあるって仰ってました。」
「そうだな、人も土地も自分が良いと思ったら他人の言う事なんて気にする必要無いからな。」
「はい!だから私も自分に自信を持つ事にしましたの!!」
自分の自身の無さが過度に流行りを気にする事に繋がってたんだろうな妹ちゃんは。
「それにこれからはこのナンコー領の事をもっと知ってお客様に自慢しますの!!」
「おう自慢しろしろ、王都育ちの俺が言うんだから間違いねぇよ。」
違う意味で拗らせてた妹ちゃんだったが根は素直な娘だ。母親と兄があんな事になって淋しいだろうに、その笑顔は明るかった。
妹ちゃんのお陰で時間を潰せたが、俺の「妹ちゃん」呼びに姉のカーラが呼び捨てで自分が「ちゃん」付けなのは子供扱いだ!!と言うのでオシカと呼ぶ事を強要された。実際子供だろと突っ込むと15歳の成人だと怒られた。全然成人に見えんぞ妹ちゃん、もといオシカ。
夕方になりカーラとステトが戻って来た。明日朝にメスティエール商店の番頭レンが自ら馬車でツルギ領の領境まで送ってくれるらしい。しばしの別れになるからな、レンもカーラの事が心配なんだろう。
やっとパパさんのが復活して、俺と同じ様にカーラに苦言というか説教される。
夕食の時間になったが俺とパパさんは胃が受け付けないので辞退。
女性陣が食事してる間、パパさんの私室で軽く向かい酒を飲んでいた。
これ怒られない?
「明日行っちゃうのか~淋しくなるねぇ。」
「色々助かりましたよ。」
「何言ってんの?私の方が返し切れない借りを作ってしまったよ。」
「それはもう終った事なんで気にしないで下さい。それより本当に良いんですか?カーラとナサさんをお借りして。」
「ふふふ、野暮は言いっこなしだよフツ君。本人が望んでるんだからさ。ナサも生まれた土地に行けるし良い休暇になる。」
「はぁ。」
「それより君が無事にタミ様に会えたとしてどうするんだい!?」
「何をです?俺は聞きた事聞くだけですけど。」
「聞いてからさ。」
「?」
「フツ君、辺境自治領ミネはおいそれと出たり入ったり出来ない場所にある。」
「はい。」
「山で隔たれてるとは言えナンコー領とはお隣さんだ、なのに交易も必要最低限の関りしか無いんだよ?「あの取引」を持ち掛けて来たのもタミ様が自領の事を余り知られたくないからだと思う。」
「確かに。」
「そうまでして他との交わりを控えてるのに君が知りたい事を知って素直に帰してくれるかな?それにだよ、『秘魔術』で異世界を経験した者同士でも「力」がタミ様が持って無かったとしたら?脅威だよね!?私だったら君を取り込むか排除するけどね。」
「なるほど、、、、」
殺されて戻ったと言う前提も仮説だし、俺が持つ「力」の謎を知らない可能性もあるんだった。話を聞くには自分の事を話さないと駄目だろう。話してからそんな目には遭わなかったと言われればそれで終いだ。パパさんの言う通りそんな俺を利用しようとしても不思議じゃ無い。
「でも「力」も無いのにいきなり『方伯』の爵位や領地を賜れるとも思わないけどね。きっと何かがあったんだよ、その何かは「力」なのか「知識」なのかは解らないけどね。」
「そうですね、俺もそう思います。」
「だからフツ君、ミネで君とステトちゃんがどうするのか、どうなるのか関係無くカーラちゃんとナサはタミ様に手紙を渡し次第帰らせる事になるよ。大事な娘と部下なんだ、済まないね。」」
「当たり前ですよ、伯爵さんの名代として行ってくれるだけでも感謝してるんですから。」
「このままナンコー領にずっと居るって選択肢も有るけど?婿にでもなればいいじゃない。」
「まだそれ言います?気持ちは有難いけどやっぱり知りたいんです『秘魔術』を経験したという人の話を。」
「そうだよね、私でもそう思う。これでも人を見る目は有るつもりなんだ、タミ様は決して悪い人物じゃ無いよ。きっと大丈夫さ。」
気休めでもその言葉に勇気づけられた。
そしてツルギ領に出発する朝を迎える。
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