⑥⑨宴
すいません、ちょっとしたおふざけ回です。
「淋しくなるね~、フツ君?聞いてるかい!?私はね、妻を亡くして男やもめになったんだよぉ?息子も亡くたんだ、それをカーラちゃんとまで引き離されるなんてさ、これは罪だよ!ツ・ミ!!」
「妹さんが居るじゃないですかっ。」
「フツ殿それは違うぞ!クスナ様が言いたいのはカーラお嬢様の心の事だ!!」
「何だよ心って?」
「お主は鈍いの~、私でも見ててピーンと来たわ!!」
「そうでしょタキ、私の気持ちが解るでしょ!?」
「心中ご察しします!此度の忌まわしい参事で唯一の幸いと言えばカーラお嬢様がナンコー家にお戻りになられる事!!それなのにこの男はお嬢様をかっさらって行くつもりなんですからな!!」
「いや彼女の仕事で行くだけ、、、でもないけど「さらう」は違うだろ。」
「さらうのかい??私の娘をさらうのかぃ????」
「いやだから、、、」
「でかしたぞフツ君!!!」「お主も男だったか!!!」
面倒くせぇな!!!!
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メスティエール商店スタダ領支店の従業員となった元正妻のリウ・ナンコー(シウ・ノデン)と元嫡子ケンダ・ナンコー(エンダ・ノデン)が共にナンコー領を去り、パパさんはナンコー領主一家襲撃事件が中央貴族のオーダ家が主体となって行われた事件で、それには直接的では無いにしろオーダ家次女である自分の妻、嫡子である息子が関わっていた事を認めた。しかしその妻は自害し、息子は襲撃犯の残党によって殺害された事も公に発表する。これで王都で開かれる予定のオーダ家に対する審問以外は全て決着し、今後も変わりなくナンコー領の為に尽力すると宣言した。
周囲の者達には長女をいずれ後継者にすると打ち明け、概ねそれは好意的に受け止められた様だった。そしていよいよ明日、俺達は本来の仕事に戻る。カーラが『薬(コセ・ポーション』を売る相手に会いに隣の領スタダ領に行くから俺とステトはその護衛だ。そして無事取引が終わったらそのまま「辺境自治領ミネ」に向かう。最初はその為に受けたカーラの護衛で取引を終えたら依頼完了の筈だったが、ナンコー領主名代としてのカーラとツルギ領出身の騎士ナサの助力も得れる事になった。
そこでタミ・イワに会い、彼が本当に【秘魔術】で異世界に飛ばされ戻って来たのか、俺の様な『力』を得たのか聞きたい。俺とステトがタツ院国から逃げて以来の目的にやっと一歩前進出来るのだった。
「慰労会をしよう。」
職務を終え、領主館に戻って来たパパさんはいきなりそんなを言いだした。
「慰労会?」
黒い茶を飲みながら俺は聞き返す。
ステトはカーラと妹ちゃんと3人で何処かに出掛けてた。
「今回は皆本当に頑張ってくれたからね、労わないといけないし君達は明日ナンコー領を発つんだ。その送別会も合わせてさ、やろう!」
「また訳の解んない事を言い出して。皆となると大人数になりますよ?」
「仲介所から請け負ってくれた彼等には特別報酬を出すから大丈夫、騎士や領兵達には交代で休暇を取らせる。」
「じぁ誰を慰労するんです?」
「私だよ。」
「は!?」
「私の慰労だよ!!頑張ったんだから良いでしょこれくらい!!」
気持ちは解るけどあんたが蒔いた種だろに。
「は~、1人で労ったらいいじゃないですか?」
「それじゃ慰労にならないよ!苦労を共にした仲間と一緒でないと駄目!!」
「はいはい。慰労会って何をするんです?」
「飲みに行こう!」
「は!?」
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慰労会にかこつけた飲み会には何も変わらないいつもの面子。馬車に乗り込んだのは自称主役のパパさん、既婚者と初めて知ったナンコー領属準男爵兼執事のタキ・ゴンゲ、無理矢理連れて来たナンコー領属男前騎士ナサ・ミツク、病み上がりなのに律儀に付き合う侍従コヒ・メズ、そして俺の男だけ。
飲みに行く先は美人の豹人ママさんの店『遊女亭シノガ』だった。
何と今日は貸し切ってるらしい。
「他の文官達も別のお店で飲んでるから気兼ねしないでいいからね。」
部下への心配りも忘れてないのは流石だ、、、っていや待て。
「カーラは?ステトは??あの2人の事も労わないと駄目でしょう!?」
「女性を男の社交場に呼ぶ訳には行かないじゃないか。それに女性陣は女性陣でオシカちゃんと一緒に夜の街に繰り出して楽しんでいるみたいだよ。」
「フツ殿、こういうのは男だけで盛り上がるものなんだぞ!」
彼女達はもっと健全な楽しみ方をしてると思うけど。執事さんが変に気合い入ってるし。
既婚者だから久し振りの夜遊びか?
領主御一行様が店に入ると早速俺の隣にママさんが座り、
パパさんと執事さんには兎人の可愛い子ちゃん2人がそれぞれ付いた。
全員に酒が配られ慰労会の開始の音頭をパパさんが執る。
「命を掛けてくれた君達とこうして飲みたかったんだ。本当に有難ね、では乾杯!!」
次々と酒が運ばれ砕けた雰囲気も手伝って皆ペースが早い。
侍従のコヒは病み上がりだから酒を飲まず優雅にお茶を飲んでいた。
そんな中、店の獣人達に囲まれながら男前騎士ナサは隅でしっぽりと飲んでいる。
くそ絵になるな。
ママさん達店の獣人達は俺達の無事を無事を祝ってくれた。
執事さんは武勇伝に花を咲かせ、騎士ナサは質問攻めに合ってる。侍従コヒは仕事柄か接待側に回って獣人達と競ってるみたいだ。お茶じゃお楽しめねぇか、悪い。
俺達客の砕けた態度も手伝ってか従業員の獣人達も順調?に飲み続け、テーブルの上にはボトルの空き瓶に空のグラスが増えていった。
俺の隣に居るママさんは良い匂いがする美人で、それだけ距離が近い。
今日はママさんも酒が入って職業然としてない態度だ。
「ママはフツ殿が気に入ってるんだな、ちょっと妬けるぞ。」
「結婚してるんでしょ執事さん?あんたこそ奥さんに怒られますよ。」
「私達の愛はこんな事では揺るがんし、妻は私を執事と呼ばん。」
「知らねぇーよ!」
「フツ君。」
「ちょっと伯爵さん目が座ってるんだけど?」
「君はカーラちゃんの事どう思ってるんだぃ!?」
「どうって言われても、頼りがいのある女性ですよ。」
「私も気になっていた、フツ殿お嬢様の事を愛していないのか?」
「あんたが『愛』とか似合わないから止めろっ、カーラの事そんな目で見た事無いし。
大体いきなり何の話??」
「フツさんはクスナ様のお嬢様と?」
ママさんまで変な興味出してくるし。
「身分が違うよ。」
「身分なんて。」
「ママさんも面白がらないでくれよ。」
「いやママの言う通りだ、愛にとっては些細な事だぞ!」
「『愛』止めろ!」
「フツ君はカーラちゃんの気持ちを解ってないのかぃ!?あの子はね、君の事を、、グス、、私はね、あの子には幸せになって欲しいんだよ。」
泣き上戸?
「あの子はね、君の事が好きなんだ!」
「自分が何言ってるか解ってます??」
「でも君にはステトちゃんが居る。」
「無視かよ、ってどうしてステト出て来るんです?」
「私もおりますクスナ様。」
ママさんが俺の腕を組んだ。
「ママも居る!!」
「私には妻が居る!!
「そこ聞いてねーし!!」
「はぁ~あのね伯爵さん、娘が心配なのは解るけど男の見る目は心配しなくても良いんじゃないですか?いくら何でも俺みたいな男に惚れる訳無いでしょう!?」
「解って無いのは君だ、私は君の父になる覚悟もしているんだよ!!」
「だから何の話だよ!!」
執事さんが頷いているけど、お前等相当酔ってるだろ!!
「でもカーラお嬢様がフツ様を頼りになさってる事は間違いないですから。」
1人素面のコヒが口を挟む。
「いい加減「様」は止せって。俺も頼りにしてるって言ってるじゃねぇか。」
「と言う事は相思相愛なのでは?」
「お茶で酔うのか鳥人は?」
「まぁ冗談では無いけどそれはさて置き。」
「それどっちですか?」
「これから君達が赴く場所は謎が多いんだ。君とステトちゃんも勿論だけど、カーラちゃんの事宜しく頼むよ。」
急に真面目な事言い出した。
「解ってます。何が有っても彼女を無事にお返ししますよ。」
「お返しして奪うなんて二度手間だね。」
「真面目な話してたんじゃないんですかっ。」
「フツ殿~、クスナ様は真面目に言ってるんだぞ。もうちょっと伯爵心解ってあげて頂きたい。」
「乙女心みたいに言うな!!」
「フツさんがクスナ様のお嬢様ともし、、、、」
「ママさんならないって。」
「私も「ツガイ」の1人に加えて欲しいです。」
「「ツガイ」の言い回し止めてっ。」
「フツ君!ツガイって言うのはね!!」
「そこに食い付いてどうするんですか!」
「私は妻をツガイとは呼ばんし、執事とも呼ばれん!!」
「だから知らねぇって!!」
何が「慰労会」だ。「俺を弄ぶ会」じゃねぇかよ。
こりゃもう飲むしかやってらんねぇな。
この話題に乗ってこない奴が1人だけ居た、もうこの場を締めて貰おう。
「この酔っ払い達にあんたも何か言ってくれよナサさん。」
「モテる男は辛いな。」
「女に囲まれてるお前が言うな!!」
こうして締めるどころかズルズルと夜も更けていくのだった。
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