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⑥相棒との旅路

「……ォィっ、オイってば!!」


俺はステトの呼び掛けで我に返る。

「あ?ああ悪い、ちょっと考え事っていうか思い出してた」


「だから何で『ミネ』なの?」


「あそこは色んな種族が平等に暮してるって言うからな、まぁ魔領に近から危険はあるかも知れないけど」


「イイじゃん、オレも行ってみたくなったヨ!!」


「無事着けるかどうかも解らないんだぞ?」

「でも今よりヒドくならないじゃんか」

「まぁそこに行くまでが大変なんだけどなぁ」

ステトが明るく言って帽子をくるくると起用に指で回し、俺はその能天気な態度に苦笑する。


俺は辺境自治領国に是非とも行ってみたかった。それはワズ王国属領にして、完全な自治を与えられた男、噂によるとミネの領主は15年前に「秘魔術【カヘテレーバ】」で異世界へ行き、そして帰還を果たしたタミ・イワらしいからだ。

俺は会いたい。そして異世界で何を経験したのか聞いてみたい。俺の様な出来事が起こったのか。



俺達はトヨノ領を2日徒歩で通り過ぎ、隣の「イソラ」領に入る。王国属貴族のアトベ・イソラ男爵が治めるイソラ領はトヨノ領よりも大きい。「村」の集まりではなく「町」が点在しているが、それでも田舎の部類だろう。王国は扇型をしていて、西の根元の部分は湾となっており海がある。要塞が築かれてる事からこの辺りの領は『(かなめ)側領』と呼ばれ、海沿いの国境の先にはグアン帝国がある。

扇の中心に王都「シエ」周辺領は『中央領』と呼ばれ、「(かなめ領」「中央領」を総じて『内側領』と呼ぶ事もある。


扇の外側になる東に行くにつれ辺境や魔領に近づく『外側領』、南は『石側領』と呼ばれ岩山がそびえ立ちチスク国に近い。北側はタツ院国その先にはイクノ皇国があるので『(ひじり)側領』と呼ばれている。


俺達は今身分を証明できるものが無い、だから敢えて検問の少ない扇の外側の領をつたって自治領ミネを目指しているのだ。山森沿いになる扇外側の各領は治安も不安定で賊の類も出没するから、今の俺達には都合のいい環境だった。


俺は懐具合を確認する、テンウ・スガーノや追って来た男達から奪った貨幣と貴金属類が有って、当分は大丈夫そうだし今日はどこか宿にでも泊まるか。


「ステト、今日は野営じゃなくゆっくり休める所を探そうぜ、体も拭きたいし、何か情報も欲しいからな」

「それと肉!!酒も!!久々のシャバ!?だしさっ」

「ははは、娑婆か。そーだな娑婆だよな」

俺達はイソラ領の外れで宿がありそうな町を探す事にした。



この世界の言語・通貨は共通だ。元々大半が王国だった事も関係しているんだろう、通貨の種類は金・銀・銅・ルテの四つで、庶民が一月暮らせる金額が大体金貨3枚くらい。

ルテ10枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚という感じだ。


身分を証明する魔具(クジキ)は「マエマ」という板で、これには持ち主の名前・性別・種族・身分・犯罪歴・出身国。現在の国籍などが登録されている。基本的に人族は出生時登録する。亜人族達は任意だ。山奥・未開の地でしか生きていかない亜人族達でもなければ大半は所持していて、人族は1歳を超えるまでは基本無料で登録出来る。

それ以上の年齢からの登録申請、紛失等の再申請は非常に高額になるので皆大切に身に着けていた。

亜人族達の年齢は解りずらいので年齢制限はないが、初申請時は無料だ。登録情報は犯罪や身分、家族の情報などが更新される。婚姻又は別離、死別、養子縁組、婿入り、移住亡命等などでの国籍変更と家名変更だけは証人の同席が必要で証人の身元も調べられる。それ以外での身分偽称は重罪で、即奴隷となり刑期はない。終身奴隷それほど重い罪なのだ。


そしてマエマが無ければ各国々での世俗で生き辛い。

公共施設の利用が出来ない、特に「仲介所(ギルド)」はあらゆる仕事の依頼やその受注、各種の国の行政の代行業務を担う場所で、各国の各領には必ずある世界共通施設なのだ。


マエマに関する管理は王都で行っているが、登録・更新は仲介所(ギルド)が請け負っている。

その情報を年に一回王都で開かれる「ギルド長議会」で集まった各領のギルド長が王都に報告している。(だから正確な情報を国が把握するのに時間差が生まれる)


マエマは仲介所(ギルド)の活動記録も解る様になっていて、その貢献度や信頼度で受けれる依頼も左右する。突出した活躍をした者は推薦され、貴族や軍、王宮などに仕えれる機会を得れる。

マエマを持たないモグリも大勢存在するが、仕事の安全性や保障等は当然ない。

正規の依頼は出来ず、売買に関しても暴利の取引を強いられる。

また、当然だが関所のある国境、それぞれの国の主要都市や領都に入れない。

院社(ヤック)」(人族のみだが)で診てもらえない。

規模の大きな領の宿・店では提示を求められる事もある。


そんな訳で市井で生きて行くには必要不可欠な物なのだ。


イソラ領の外れ町にあった古着屋で俺とステトの着替えを買い(庶民はもっぱら古着)、雑貨屋ではステトが欲しがった背嚢(はいのう)と俺は丸腰だったのでナイフを一本買った。

そして個人が営んでそうな宿に入り、部屋でひと息付く。


「同じ部屋でよかったのか?別に二部屋とっても良かったんだぞ」


「別にイイよ一つで、ここまで2人で来たんだし野宿もして来たし。ナニ?恥ずかしいの?」

ステトは笑いながら来ていた上着を脱ぎ、宿の主人に持って来てもらったお湯で顔を洗う。


いや恥ずかしくはないんだが。正直目のやり場に困る。

ステトは獣人でも生粋ではない、人族の血が四分の一混じっていて祖父が人族らしい。

猫人の彼女は細身でしなやかな体つきなのだが、出るとこが出過ぎて嫌でも目を引いた。

下着姿になって体を拭き始めたが、獣族が恥じらいを持ってない事は無く、彼女が無頓着なのだ。

剣闘士生活を送っていたのもあるだろうが。


別に女を知らない訳じゃ無いけど健康男子なんだぞこっちは。

俺は流石に直視するわけにもいかず、窓に顔を向け「さぁ飯を食いに行こうぜ。」と促した。


こりゃちょっとこれから考えもんだな。

読んで頂き有難う御座います。

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