⑥⑧新しい人生
後一、二話で次の章に移れそうです苦笑
本当ゆっくり進行ですが読んで頂いた皆様、有難う御座います~
私は寝室のベッドで横になっていたが中々寝付けなかった。お父様が王都からお帰りになって開いた報告会議がようやく終わった時の事を思い出す。
会議に参加されていた皆さんが退出するのを見送っていた。
フツさんとステトさんが、ナサ様やコヒからツルギ領の話を聞いているみたいなので、私もその場に行こうと部屋を出ようとするとお父様に呼び止められた。
「カーラちゃん、少し話があるんだけどいいかぃ?」
「はい?」
直ぐに口を開こうとしない、誰も居なくなるまで待っているみただった。
「どうかしましたか!?」
「うんちょっとね、座って話そうか。」
「?」
私はさっきまで座っていた椅子に再び腰を降ろすと、お父様は隣に座った。
「父親として聞くけど、お前はフツ君の事どう思ってる!?」
唐突な質問に驚き、返事が出来なかった。
「間違って無いと思うけど彼の事が好きなんだね?」
「、、、、、、はい、そうだと思います。」
お父様に誤魔化しは通用しない。私は正直に答えた。
でも何故いきなりこんな事を聞くのだろう?今回の悲劇で私はお父様の後継者になった、ゆくゆくはナンコー性に戻さなければいけない事も解っている。平民であるフツさんとじゃ身分が違うと言うつもりなのだろうか?
「流石は私の娘だ、見る目があるよ。」
「!」
「彼の事は王都で調べたよ、決して褒められたものじゃ無いけど大したものだった。彼が歩んで来た道は何て言うか、まさに男のロマンだね。」
「ロマン?」
「その事は今は置いておこう、彼は苦労して来たし修羅場も知ってる。それにあの【秘魔術】で別世界まで経験してるんだ。でも彼はそんな環境で生きて来たのに腐らず、他人のせいにしない。それどころか少し運が悪かった程度にしか思って無い。」
私はお父様の言わんとしている事に頷いた。
フツさんは私達のせいで命を危険に晒されたにも関わらず恩着せがましい態度など一切取ってない。
思いやりが有り、自分を犠牲に他人を助ける。
「彼がまるっきりの善良な男だとは言わないけどね、自分が思う「悪」には相手が誰であろうが立ち向かう男だ。これ程心強い相手は居ないよカーラちゃん。」
「え???」
お父様は笑顔になって私の手を掴む。
「申し訳ないけど、私の跡を継ぐのはお前だ。もし彼が婿になってくれたら私も安心なんだけどね。」
「え?ちょ、ちょっと待って下さいお父様、、、急にそんな事仰られても、、」
「ははは、そうだね。いきなり過ぎだったかな? お前の恋路を応援してると言いたかっただけさ。」
顔が熱い。面と向かって「恋」とか、、、もうお父様ったら!!
「でもフツ君はカーラちゃんの気持ち知ってるのかな!?」
「、、、解りません。」
「う~ん、焦る必要は無いけどね、ライバルに負けちゃうよ?」
「ライバル??」
お父様は敢えて口に出さない。ジッと私を見る。ステトさんの事だ。
「まぁね、こればかりは相手の気持ちもあるからね。」
それ以上の事は言わずに別の話を切り出した。
「でも娘思いの私は少しでも想い人との時間が過ごせる様にと色々考えたんだ。」
それが私をお父様の名代としてフツさんと一緒に「辺境自治領ミネ」に行く事だった。
まだ彼との繋がりが切れない、この粋なはからいに感謝した。
「それにこの先の事を考えるとね、味方を作って起きたい。」
「王都で何かあったんですか!?」
「もうこんな時間か、これも後で話すよ。彼等もお腹が空いてるだろうしね。」
私も自覚しないといけない。ナンコー領の未来を背負ってしまったのだから。
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翌朝疲れも見せずパパさんは、正妻さんと弟君に妹ちゃん達が滞在している一軒家に向かう。
最低限の人数と普通の馬車で目立たない様に最後の別れを伝えに行くのだ。
俺達も同行している。車内で昨日のステトの体に起こった事を考えていた。「傷が治る」奇跡の様な現象。詳しい事を知るには本当にステトを実験台にしないと解らない。
彼女をそんな目に合わせる訳には行かないし、知った所でステトはステトだ。
やはりこれは誰にも言わないでおこうと決め、ステトにも怪我をしてもむやみに傷を見せるなと言っておいた。もしテンウ・スガーノの消息を掴めれば本人に確認すればいい。
一軒家に着きパパさんとカーラが中に入る。俺やステト、目立たない服装で随伴している男前騎士ナサと領兵数人は外で待機していた。家族の別れを邪魔しちゃ野暮だしな。
ステトが挨拶する声が聞こえ、その相手のナサが俺の隣に来た。
「お主の考えと聞いたが?」
母息子の死を偽装した事だ。
「余計な事だったか?」
「主はそうは思わんだろう。」
「あんたは?」
「死罪が当然だと思っている。」
騎士達や領兵達、仲介所から請け負った護衛達の中には重症の者や死んだ者も居る。
準男爵兼執事のタキ・ゴンゲも怒っていたし、ナサの言い分は正論だった。
「しかしあの方達からすれば平民になるなど死罪より辛かろう、お主も惨い仕置きを考えたものだ。」
「いやいや決めたのは伯爵さんだから。でも嘘でもそう言って貰えて気が楽になったよ。」
「タキ様も受け入れているのに今更俺がとやかく言う事は無い。それにお主も被害者だった、何も気に病む事は無いぞ。」
「俺はこうして生きてる、被害者なんかじゃ無いさ。」
ステトもこっちに来てそのでかい胸を張る。
「オレもヒガイなんか無い!ヒガイは黒装束達の方だよ!!」
「「被害者」だ。襲って来た者達を被害者扱いとはな、変わり者同士は気が合うか。」
「相棒だもん!!」
「ふ。」
パパさんと妹ちゃんが出て来るとナサが俺達から離れて行った。
別れは終わったみたいだな。
俺達に向かって頷くと、乗って来た馬車に妹ちゃんと乗り込みナサ達護衛を連れて一軒家を後にする。
事前に打ち合わせした通り、丁稚兼補佐となったホクとウルの両親は既にスタダ領に建てた仮店舗兼住居で受け入れ準備を終えていた。そしてこの後支店長となるウルが手配した馬車で支店に向かう途中に平民となる母息子を拾う事になっている。領主のパパさんがウルに見られると母息子の身元がばれる恐れが出て来る。正妻さんは長らく引き籠ってたから面は割れてない筈だけど、弟君はどうか解らないが平民の身なりで名も変えてる今、まさか死罪になった嫡子とは思わないだろう。
疑われても白を切り通す事を約束させている。
身元が露見すれば本当に死罪にせざるを得ないからだ。
カーラが出て来て平民姿の正妻さんと弟君が後に続く。
正妻、いや元貴族のリウさんはやはり高貴な雰囲気を消せてない。元嫡子のケンダの方は案外馴染んでいた。
リウさんが俺に気付き近寄って来る。
「フツさん、ステトさん、本当にお世話になりました。」
深々と頭を下げる彼女なんて数日前まで想像出来ない姿だ。
「名前は何になったんですか?」
「シウ、『シウ・ノデン』です。カーラさんが考えて下さいまして。」
「シウ」の名は「リウ」に似せて付けんたんだろうけど、「ノデン」と言う家名は何か意味でもあるのかな?カーラを見たら教えてくれる。
「ナンコー領の一部地域に咲いている花が「ノデン」と言う名前なんです。」
「そんな事も知らなかったなんて、、、、本当にナンコー領の事を何も知らなかったのですね。」
元正妻さんは悲しそうにそう溢した。
「これから色んな事知らないと駄目なんですから遅く無いですよ、え~っと「シウ」さん?」
「はい、そうですね。これからたくさんの事を勉強致しませんと。」
その言葉には女の逞しさがあった。
弟君の方を見ると、どこか恥ずかしそうに佇んでいる。
「弟君は?」
「エイダです。『エイダ・ノデン』になります。いけない!あの子にも、、」
「いや別に、」
「エイダ!このお2人に貴方も挨拶しなさい!!」
嘘の襲撃者とは言え気不味い。それに今まで散々な言われ方してたしな。
弟君がこっちに来てステトに会釈する。気付いて無いのか?
「今の女性がステトさんよ、そしてこちらがフツさん。私の、いえ私達の命の恩人です。ほら貴方もちゃんとお礼を言いなさい。」
「は、、、お前は!」
パコン!!
シウと生まれ変わった母親が息子の頭を叩いた。あの正妻さんだった人とは思えない。
「何が「お前」ですか!!フツさんのお陰で貴方はこうして生きているんですよ!!」
「はい、、すいません母上。」
「その呼び方止めた方が良いな。」
「え?」
「平民は「母上」なんて呼ばねぇよ。「母さん」くらいにしろ。」
「あ、ああ。解った。」
「礼ならカーラに言えよ、彼女が骨を折ってくれてるんだからな。」
「姉う、、カーラさんにはもう伝えた、フツ、、さん本当に有難う。」
エイダに生まれ変わった元弟君は、慣れない仕草で頭を下げてステトにも同様に礼を言った。
「お互い平民同士なんだ、「さん」は止めようぜエイダ。」
「あ、ああ解った。フツ、母う、、母さんの事も助けてくれて有難う。」
「もう受け取ったよ、これからしっかりシウさんと頑張れよ。」
力強く頷く姿を見て、この元弟君も大丈夫だなと思った。
そうこうしていたら車輪が地面を駆る音が聞こえ馬車の姿が見えた。
どうやら迎えみたいだ。
ウルが自分で御者席に座り手綱を握っていて器用に馬を操り、俺達の前で停車させる。
「お待たせしましたカーラ様!!」
「お時間通りですウルさん、ではお手数をお掛けしますがよろしくお願いします。」
「いえ!既に仮店舗も出来上がっておりますし、後は現地で勉強させて頂きます!シウさん、エイダさんも順備はいいですか!?」
カーラは笑顔でウルに応え、馬車の扉を親子の為に開けてやった。
2人はカーラと俺達に再度頭を下げて乗り込む。
「あれ?フツ君にステトさんも居たんだ?」
「さっきから居たぞ、わざと言ってるだろ?それよりもう親子とは会ってたのか?」
「・・・・・・・」
ウルはまたステトの胸に魂を奪われている、相変わらずだなこいつは。
「おい、帰って来い。」
「ゴホン、ごめん。うん、仕事内容の説明をしに顔見せしてたからね。」
ウルはこの母息子が領主の元妻と嫡子と気付いて居なさそうだった。
「自分で馬車を操縦して来たのか?お前も色々お荷物背負わされて大変だな。」
「こんなの全然大丈夫だよ。これからも私が1人で来る機会が有るかも知れないからとカーラ様も仰ってるし、経費の削減にもなるしね。」
ナンコー領を出るまでは極力母息子を人目に触れさせないカーラの配慮だ。
「頑張れな支店長。」
「頑張ってシエンチョー!!」
「有難う、スタダ領に来る機会が有ったら寄ってってよ。それまでにしっかり形にしてるから。」
その顔には責任とやる気が満ち溢れていた。
ウルも母息子もこれから新しい人生が始まる。
夫婦、親子喧嘩にしては重い結果だったかも知れないが、今世の別れにはならないだろう。
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