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⑥④領主の帰還

ナンコー領はもう少しで終われそうです。

展開が遅くて申し訳ない苦笑

支店長就任が決まったウルが唯一希望したのは丁稚ホクの同行だった。ウルと行動を共にする機会も多かったし、意外でも無かったのでカーラは承諾する。ウルもこれからは支店開業に向けて忙しくなるから気心知れたホクの存在は心強いだろう。


それからの俺達は雇い主に合わせて動き回った。

頻繁に家族が滞在してる一軒家に顔を出したり、スタダ領に何回も足を運んだり、領内の運営に必要な調整をする者達に会ったり、問題があればその現場に行く事もあった。執務で「ヨノ館」に閉じ籠もってる時などステトにカーラを任せ、俺だけ準男爵兼執事のタキ・ゴンゲの手伝いに駆り出される羽目になったりしてた。そうして気が付くとあっという間に半月近くが経っていたのだった。


俺は今、修復を終えた領主館の一室で雇い主のカーラと相棒のステトの着替えを待っている。

今日はナンコー領主クスナ・ナンコー国属伯爵が王都から帰ってくる日で、それなりの格好をする為にカーラはステトにも衣装を用意してくれたみたいだった。


「何か、疲れた。」


俺がぼやいていたら2人が着替えを終えて部屋に入って来る。カーラは領主代行していた実務的な服よりも女性らしいドレス姿で、ステトも露出抑えめのドレスを着ていた。俺は正装なんて似合わないから

いつも通りの格好だけど、案外この猫娘とドレスの組み合わせは似合ってる。


「フツさんはそのままでよろしいんですか?何だったら燕尾服などご用意しますけど。」

「絶対着ないって解ってて言ってるだろ。」

「エンビって?」

「ドレスの男性版といった感じの服ですよ。」

カーラがステトの質問に解りやすい例えで教えてやる。

「フツのドレス姿見て見てみたいな〜。」

「いろんな意味で誤解を招くぞそれ。」


「この半月、色々手伝って頂き本当に有難うございました。お陰様で私の出番もようやく終わり、これでやっと本来の仕事に戻れます。」

「しかしカーラは本当凄いな、正直に言うと俺はちょっと疲れた。」

「慣れない事をすると余計疲れますからね。私は店の経営が領の運営になっただけで、それほどやる事は変わりなかったですから。」

「オレは楽しかった。」

そりゃ楽しいに決まってるよなお前は。雇い(カーラ)の側を離れず護衛の役目は果たしてたが、基本食って乗って食って食ってしてただけなんだから。


もう襲われる心配も減ったし、護衛である俺達の仕事は楽な筈だった。精力的に動くカーラと行動と共にしてる内に、何故か言付けを頼まれたり、それを伝えに行ったり、説得したり、脅してみたりとカーラの業務を手伝わされ、そんな俺を尻目にステトはのんびりしてたって訳だ。


部屋の外が慌ただしい、そろそろパパさんのご到着みたいだな。

領主館の前で主な面子が揃って主人を出迎える。カーラは当然先頭で隣にステトを連れていた。そしてタキ・ゴンゲ、文官や騎士に領兵達が立ち並び、後ろでは使用人達も出ている。

騎馬の領属騎士ナサ・ミツクが先頭で領主一行の馬車の姿が見えてくると、領主館から少し離れた場所で野次馬達も集まり始めていた。


ステトはドレスまで着せられてるので前でも良いが、俺は平民姿のままなので使用人達の端で目立たない様にしてる。


一度王都に行ったからって完全に決着するにはまだ時間が掛かるだろうな。

パパさんからすれば甘い処罰は到底受け入れられないが、縁戚であるオーダ家の分家や寄り合い貴族家への影響まで考えると追い込み過ぎても恨みを買う。パパさんが王都で恨みを買う様な方法を取るとは思わないが、自尊心を傷付けられた者はそれを忘れないもんだ。これからも難しい交渉が続くだろうし、下手をすれば「中央領」と対立する構図になる恐れがある。


それと並行して今は自領の事に集中しないといけない。正妻と嫡子の事を正式に発表しないといけないし、周辺領にも今回の出来事を説明して安心させないといけない。

当分忙しいぞこりゃ、気の毒に。


派手な出迎えに応え馬車を降りて来るパパさんを見ながら、カーラの準備が出来次第出発しようと考えていた。

こんな状況で俺の欲しい情報を手に入れてくれてると思わない方がいい。今まで知らなかった事も教え貰ったし、後はツルギ領に行って自力で情報を集めよう。


軽い休息を挟んで一階の執務室にナンコー領の関係者が集い、カーラが領運営に関する事柄を、準男爵兼執事タキが襲撃後の影響とそれの対応結果を、その他にも文官達がそれぞれ受け持っている役目の進捗や結果など、パパさんの留守中の報告が行われている。


途中まで中に居た俺とステトは必要無いと判断し、一番最初に訪れた時に酒を飲んだ部屋でお茶を飲んでいた。何と魔術師(じじい)の魔術で重傷を負っていた侍従コヒ・メズが職務に復帰していたのだ。傷はまだ完治には至ってないが動ける様になったので、本人の希望も有り負担の少ない業務からとこうして俺達にお茶を出してくれていた。

相変わらず表情は読めないが、少し距離が縮まった気がするな。多分、いや解らん。


コヒに礼を言われたが、何の事だか解らなかった。俺が考えてると「『(コセ・ポーション)』を融通して頂いたお陰で死なずに済んだとご主人様から聞いております」だって。あれはカーラが渡してくれた物だと説明し、礼は要らないと言ったが譲らない。まだ「フツ様」だし頑固な鳥人め。


コヒと入れ違いで男前騎士ナサが部屋に入って来た。

珍しいな、格好も騎士然としてない普通の身なりだし1人で俺達に会いに来るなんて。

「こんにちは兄さん。」

先にステトがナサに挨拶をする。

頷いた男前は俺達の向かいに座った。


「あんたは執務室に居なくていいのか!?」

「俺は政事(まつりごと)など解らんからな。」

再びコヒがナサの分のお茶を持って来て、そのまま隣に座る。


「お前もいいのかよ?」

「養生中ですので。」

いや働いてんじゃん!!


混血のナサに鳥人のコヒ、四分の一人族の血を引く猫人ステト。何だか俺が浮いて見える。

「何だ?騎士さんと侍従が改まって。」

「ナサでいい。」

「解った、じゃナサさん。」

「ナサ兄さん!!」

何故か喜ぶステトだが、お前の兄さんじゃ無いからな。


「カーラお嬢様とこれからツルギ領に行くつもりだと主から聞いた。」

「ああ、カーラの仕事で行くんだよ。ツルギ領で取引相手と会うんだってさ。」

俺達は勿論だがカーラも相手の詳しい事は知らない。俺の目的を言うつもりは無いので他に言いようが無かった。


(あるじ)に俺もお嬢様の護衛としてお前達と一緒に行ってくれと頼まれた。」

「そりゃ、、、心強いけどいいのか!?」

「お前達が行く先でお嬢様の護衛を終えると聞いている。お戻りになられる際、誰かが御守りせねばならん。」

そう、取引が済めばカーラとの仕事は終わる。そこから何とか方法を見付けて『辺境自治領ミネ』に行くもりだった。そうなるとカーラは1人になるし、話を聞いた限りツルギ領は色々きな臭い土地だ。パパさんからすれば跡取りが確定してる娘の安全を考えるのは当然の事だよな。


「ナサさんがその話をしに部屋に来たのは解るけど、コヒは?暇つぶしで部屋(ここ)に居るのか!?」

「俺とコヒはツルギ領出身だ。」

俺の質問にナサが答えてくれた。


「断っておくが生まれがツルギ領なだけで詳しい事は知らん。俺の母親はツルギ領で育ったが、父親は人族でナンコー領出身だ。俺達家族は暫くツルギ領で生活していだが、俺が幼き頃ナンコー領に移った。理由は知らんし両親は既に死んでいる。親戚が居るかも知れんが他人と同じだ。」

「コヒは?」

コヒも首を横に振る。

「私も同じ様なものです。両親はツルギ領出身ですが、私が生まれて直ぐにナンコー領に移住したみたいので私自身はツルギ領の事を知りません」


「そうなんだな、伯爵さんは今のツルギ領は何か「変」て言ってるけど、あんた等が知ってる事で何かあれば教えてくれ」

「記憶にあるのは俺が住んでいた集落は領都にあった。人族は数が少ない、くらいだ」

「私の両親は御領主のハヤ・ツルギ子爵様を知っていたみたいですが、両親も他界しておりますので詳しい事は解りません」


「ツルギ領って何が美味いの??」

ステトが好奇心を出して全く関係ない事を聞いてるし。


「知らん」「特に聞いて無いです」

「え?」

2人に即答されたら何も言えないよな。

美味くは無いにしても食い物はあるだろう。


「何喰ってたんだよ?名産とかも無いのか!?」

「肉だな」「木の実などと言ってました」

何その原始的食事。

ステト、そこまで凹まなくてもいいんじゃない?


「ツルギ領の土地は痩せていたが食うには困らん、森には野獣や魔獣が多く生息しているのだからな。森に入って木を伐採し、それを売って微々たる金を得ていた。領民の大半は俺達亜人族だ、力では人族の及ぶ所では無い」

「両親が言っていたのは主食は狩って来る獣肉で、後は野生の食用草や木の実などです。たまに領都に来る行商人にそれらを売る事もあったとも言ってました」

2人が知っている又は聞いていた当時のツルギ領の様子を話してくれた。


現在の情報は皆無か、これは中々きついぞ。

そんな過酷な環境が5年で変わったとパパさんは言っていた。


「じゃ今のツルギ領に人族が増えてる理由って何だと思う?」

「・・・・正直言いますと信じられませんね」

「鉱山でも見つからん限り有り得んと思うが」

コヒの言葉に頷き吐き捨てる様にナサは言う。


いや、鉱山じゃ無いにしても何かを見つけた可能性はある。

(ポーション)」の原料を栽培してるって噂もあながち本当かも知れないな。

読んで頂き有難う御座います。

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