⑤⑧説明
要するに妹さんも玩具になってるって事だった。
「フツ~、どうにかしてよ頭」
髪を編まれてプフで盛り上げられ、飾り付けられたステトの頭は、、、、
芸術??
「それが最先端の髪型なんじゃないか!?」
知らんけど。顔も何か塗りたくられてる。
「彼方がフツさんね!王都育ちってお姉様が仰ってましたけど、どうですかステトさん?
綺麗になったでしょ!?」
顔は正妻さんに似て幼いからか小柄な少女に見える。
自慢気に言って来る妹さんは自分の髪も飾り立て化粧も濃かった。
何歳なのか知らないがその容姿と不釣り合いで滑稽に見える。
「いやまぁ綺麗かどうかは解らないけど、貴重な経験になったと思うよ。」
「王都育ちなのに流行もご存知無い?」」
「興味が無いからな。」
「やはりナンコー領では私を理解して下さる方が居ないのですね。は~どの様なお方か期待してましたのに。王都育ちの男性と話せる機会を楽しみにしておりましたの。残念ですわ、でも殿方なら髪型の事なんて知らなくて当然だったかしらね。」
う~む突っかかって来るなこの妹。
カーラに助け船を求めた。
「オシカ、フツさんは余り流行などに詳しく無いんですよ。」
「そう、全く知らないんだ。悪いね。」
「もういいですわ、お姉様もナンコー領に居たら流行に後れますのよ!」
いや、この妹さんも拗らせてたわ。
「ステト、もういいから髪止めろ。」
「イイの?良かった~邪魔で仕方無いよコレ。」
ステトが頭に乗せられた色んな装飾を乱暴に外していく。
編まれた髪はそのままに他は元に戻した。
「な?何て事をしますの!せっかく外に出ても恥ずかしく無い姿に差し上げたのに!!」
「オレこの方がいい。」
そして顔も服の袖を使って拭い取っていった。
「ああ!!お化粧まで!!」
「オシカ、フツさんもステトさんも護衛のお仕事があるんです。もういいでしょう!?」
「お姉様もお化粧くらいちゃんとされたらもっとお美しくなるのに。」
「私は商人ですからこれでいいのです。」
「やっぱり私に田舎は合いませんの!このままだと将来舞踏会などで恥を掻きますの!!」
面倒くさい。これはもう血筋だな。
「妹ちゃん、王都なんて皆同じ格好してるぞ?あれが流行りだってんならそんなもん何が楽しいんだ!?
君の良さも消えてしまうんじゃ無いかな?それにナンコー領は田舎じゃ無い。王都育ちの俺が見ても目新しい物が一杯あったしこの領の個性があったよ。それと一緒で君も自分の個性を磨いた方がもっと綺麗にるんじゃないかな?流行りを追うその他大勢の1人じゃ無くてさ。」
「ふん、何もご存知無い癖に。」
「そうだな、色々追いかけるのに疲れちまいそうだからな。」
「・・・・・・。」
やべぇ泣かしてしまったか?いかん矛先を変えよう。
「ステトはもうちょっと女らしさを持った方がいいぞ。」
「オレはこれでイイんだ。」
話を一刀された。
「カーラ、伯爵さんが領内を回るって言ってたぞ。」
今度はカーラに振ろう。
「ええ、これから用意します。ではオシカ貴女も一緒に行きますよ。」
何か凹んだ妹さんを連れて部屋を出て行った。
助かった。
「御免なさいね。」
声を掛けて来たのは今まで目立たず静かに窓辺に座っていた正妻さんだった。
穏やかな表情で、昨晩初めて見た目の吊り上がった女とは別人みたいだ。
「いや俺が悪いんですよ。妹さんが自慢してる事に余計な口出しして。」
「私がいけなかったのです。中央の話ばかり聞かせておりましたから。」
「夫人さんは外に出て無かったんでしょう?知らない事を話せませんよ。」
「カーラさんがおっしゃってた通りの御方ですわね。」
柔らかい笑顔でそう言った。
「何て聞いたか怖くて知りたく無いですけど。」
「フフフ、それではお教え出来ませんね。」
「ステトは迷惑掛けなかったですか!?」
「勿論ですよ、ステトさんは素直でお優しい人ですから。」
亜人族への恐怖も薄まったのか、もう見下す訳でも虐げる訳でも無い態度だった。
俺は隣に居るステトの様子を見る。
「何をした?」
「別に。オレお母さんと仲直りしただけだよ。」
どうしてそうなったか知らないが、ステトも正妻さんを悪く思わなくなってる。
一度死ぬつもりだったんだから人が変わっても不思議じゃ無い。
俺もある意味そうだ。異世界で死んで生き返ったからな。
今更王都へ戻ろうなんて思って無いし、新しい人生を歩みたい。
変な度胸も付いた気がする。
「タキやナサにも謝りました。勤めであっても彼等はこんな私を守ろうとしてくれたんですから。何も見ようとしなかった事、カーラさんの言った通りです。余りに無知で臆病で恥ずかしいですわ。でも、、、、もう取り返す事は出来ません。」
原因の一端はあるにしろ、俺でも今のこの人を死罪には出来ないな。
「その気持ちが本気なら大丈夫だと思いますよ。形は違っても夫人さんは夫人だ。」
「リウと呼んでくださいませ。もう「夫人」ではなくなりますから。」
「お母さんはどうなるの?悪いコトしたけどハンセイしてるんだ。」
「今から話す。」
正妻さんに向き直る。何処まで聞いてるかを確認しなとな。
「ふじ、、リウさんカーラから何か聞いてますか!?」
「いいえ何も。オシカもタキも居ましたし話辛かったのかしら?」
妹の前では言えなかったか。執事さんが納得しない内容かも知れないからな。
多くの者が被害に遭ったんだから許せないと感じてても責められない。
これを俺から告げていいもんだろうか?
「どうしたのフツ?」
無言になってる俺を心配してくれてる。
ステトにも言わなくちゃいけないし、実際に行動するのは俺達だからこの機会に説明した方が手間が省けるか。
「リウさん、あんたの沙汰が決まりました。まだ伯様さんとカーラと俺の3人しか知りません。」
「はい、どうぞ仰って下さい。覚悟は出来ております。」
俺は別館の火事で既に死んだ事にする事、新たな身分で平民としてナンコー領から去らねければならない事を伝えた。
「え?それでは、、、罪を償う事にならないのでは!?」
「平民で生きて行くんですよ?これがどれ程大変なのか解ってませんね、食うに困るって事を身をもって知るかもしれない。貴族だったあんたが耐えられますか!?」
その意味を理解しようと正妻さんは黙る。
「ケンダは、息子はどうなってしまうのでしょうか?」
「弟君は今晩死にます、俺とステトが殺しに行くんですけどね。」
「!!」
「殺すの?フツはイヤなんじゃなかたっけ!?」
弟君が死ぬ事より俺が殺す事の方が疑問らしい。恐ろしい思考だが剣闘士だった彼女が命を奪う事に抵抗感を持ってないのは当たり前の事で、どの世界でも命は軽いものだった。
「ステトもよく聞け、俺達の仕事はな」
それから正妻さんと相棒に説明する。
「本当にそれで宜しいのでしょうか、、、、息子の命を助けて頂ける事は感謝致しますが私は、、」
「それは解りません、他の面子が納得しない可能性もある。」
「そう、、、ですよね。皆被害を受けてるんですもの当たり前の事です。」
「でもね、さっきも言いましたけど生き延びるだけですよ。あんたも弟君もただの平民として生きて行く事になるんだ。死罪より辛いと思いますけどね。」
「・・・・・いえ、一度死んだと思えば何程のことでしょう。本当に有難う御座います。」
「礼を言うのはまだ早いですよ。それに礼なら伯爵さんとカーラにお願いします。」
「それはどういう、、、」
本人曰くパパさんの深慮遠謀を伝えたら正妻さんは肩を震わせ涙を流した。
「私は愚かな女です。愛されてないとずっと思ってました。旦那様の優しさが全く解っていなかった。
自分の至らなさを棚に上げ、カーラさんの母上ケイさんを目の敵にし何の罪もない娘のカーラさんにまで酷い仕打ちを、、、、どうしたらこの御恩を返せるんでしょう?」
「それは俺に答えられる話じゃ無い。でもせっかく死ぬんですから、これから考えたらどうですかね?」
一度死んだら何でも出来るさ。
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