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⑤⑦新たな情報

「私なりに情報を探ってみるよ、ツルギ領の事や「院社(ヤック)」で君とステトちゃんが手配などされてないかなどね。」

これほど頼りになる人達は居ないな。心からこの出会いに感謝した。

「伯爵さん、カーラ、本当に有難う。」


俺の話も終わり、正妻さんと弟君の事も目星が付いた。

カーラが正妻さんと妹さんの元へ戻ろうと立ち上がる。

「フツさん、、昨日はその、すいませんでした。」

「昨日?疲れてたからよく覚えてないな。」

「・・・・・・・」

パパさんが居る所でこの話は駄目だ。

俺の意を汲んだのか直ぐに切り替える。

「そうですね、では私も商人から情報を集めますね、「ミネ」と取引のある商人が見つかるかも知れませんから。」


彼女が部屋から出て椅子に座り直すとパパさんが怪しんでいた。

「何か2人の間にあったのかな!?」

「有りませんよ、俺達が着いた時熱い抱擁で歓迎されてぶっ倒されただけです。心配してくれてたみたいですね。」

唇を奪われたなんて絶対言えない!!


「ふ~ん。」

怖い。

「いっその事娘(カーラ)と一緒になるかい?」

「ぶ!!何言ってるんですか!冗談でも笑えませんよ。」

「そうでも無いよ、あの子は将来ナンコー領を背負って立つ。君の様な伴侶が居れば心強いに違いないと思うんだ。」

「貴族に婿入りとか絶対無理です、身分が違うし柄じゃない。止めて下さいよ本当に。」

「そう?何がどうなるかなんて誰にも解らないよ!?若いしね2人共。」

パパさんがこんな事言うなんて、どっちにしろ怖い。


「これはカーラちゃんも知らない事だけどね」パパさんの顔が真面目になった。


「ナンコー領から山林を超えないのは『東方伯』さんと「ある取引を」してるからなんだ。」

「ちょ、ちょっと待って下さい急に何ですか?『東方伯』って?」

いきなり知らない名称が出て来て訳が解らない。


「知らなかったかい?君が行こうとしてる「ミネ」の自治領主さんの肩書さ。」

確か「方伯」と言う爵位を国王から直接賜ったとタツ院国・正階医(セーイ)のテンウ・スガーノから聞いた。何が違う?

「俺が聞いた話では「方伯」って爵位ですけど、、、」


「「ワヅ王国建国初期の「方伯」は肩書で爵位では無かったんだ。当時の王国は領土拡大の為周辺国と戦の真っ最中だった。その前線を任されてた貴族が「方伯」呼ばれ自分の裁量で自由に物事を決めれたらしい。戦線は今の「要側」に当たる西と「岩側」に当たる南、「聖側」の北にあってそれぞれの「方伯」の頭に方角を付け呼んでたんだよ。「西方伯」「南方伯」「北方伯」という感じでね。」


「爵位では無かった?それじゃ今の「方伯」は何なんですか!?」

「今の「方伯」はれっきとした爵位だよ、伯爵位より上で侯爵位より下とされている。「方伯」は爵位名で「東方伯」と言うのは「ワヅ王国の最東方向を治めている方伯」の意味の肩書になるのさ。」


それでも伯爵さんより地位が高いのか、普通なら有り得ないよな。


「聞いた話だと随分と「方伯」って爵位は空位だったって。どの位なんです?」

「当時の方伯達が力を持ち過ぎてね、独立を企む方伯も現れたらしい。領土も広げ戦も落ち着いた事を切っ掛けに「方伯」という枠組み自体無くしたんだよ。勝手に名乗る事の無い様に正式な爵位にしてそれ以来ずっと空位だった。」

「それって、、、」

建国初期以来?てことは四百年から五百年近い前!?それ以来振り??

自由裁量権を持つ爵位を与えるなんて、有り得ないを通り越している。


パパさんが頷いた。

「「方伯」が爵位になって初めての陞爵(しょうしゃく)だったんだ。それを騎士爵の資格を得たと言っても平民に賜れたと聞いた時、王宮内どころか王国内の貴族が震天動地の騒ぎだったよ。勿論まだ爵位を継いでいなかった私もね。反対する貴族家も多かったけど与えられた領地は誰も欲しがらない魔領の隣で未開の地だし、これまでずっと空位だった爵位なんか有って無きに等しいと思う様になった。それに国王の一存で決められ宰相などの反対も無かったと言うから表立って異を唱える者達も受け入れざるを得なかったみたいだよ。でも前代未聞の事だったから色んな噂が立ったもんだ。」

「例えばどんな?」

「それはもう有りとあらゆる事だよ。「国王の落し子」、「他国の王族」、「魔王の手先」、挙句の果ては「異世界人」とかね。でも、、、君の話を聞いて腑に落ちた。彼は君と同じ【秘魔術(カヘテレーバ)】で異世界から帰って来て、何かしら国王と個人的な話をして「ミネ」を預けられたに違いない。」


信じてくれる存在が居るって事がこれ程心強く思えるとは。

それに貴重な話をしてくれている。

「伯爵さんは直接会った事があるんですか!?」

「私が爵位を継いでからはね。国中の貴族が集まる催しは数多く有るけど、国王の誕生祭だけは参加する義務を課せられてるんだよ。病で臥せっても無い限り名代も許されない。東方伯さんは、いやタミ様は照れ屋さんなんだよ。愛想も無く挨拶を済ませると早々に退場なさる、取り付く島もないくらいさ。」


照れ屋って。そんな事言うのパパさんだけだと思うぞ。

「そんな彼の事を他の貴族達は蔑称の意味で「辺境伯」と呼んでいるけどね、彼は全く気にもしていないし私も「成金貴族」なんて呼ばれてるから気持ちは解るよ。」


結構馬が合うのかも知れないな。山に隔てられてるとは言えご近所さんなんだし。

肝心な事を聞かないと。

「その「取引」と言うのは?」

「私が父から爵位を継いで初めての国王誕生祭に参加した時だ。愛想の無い男が近付いて来て「自領に戻ったら話がしたい」と言って来た。それがタミ・イワ様との初対面だった。当時は忙しくてナンコー領に戻って政務に勤しんでいたら何と彼が1人で現れたんだ。まだ子爵だった私はまさか方伯様が直接会いに来るなんて夢にも思わなくて飛び上がったよ。見た目は特級剣士のそれだったけど身分は彼が上だ。お迎えもせず恐縮してる私に彼は気さくに接してくれた。彼が言い出した取引は「ナンコー領側の森から魔獣を狩る為に入るのも含めて誰も入れないで欲しい」と言うものだった。その対価として魔核か銀塊かと聞かれ、私は銀塊と答え、それ以来一年に一度誕生祭で王都に行くとタミ様から直接では無く王都の仲介所(ギルド)を介して銀塊が届くんだ。視察で君も見てるだろうけど、それもあって山沿いに見張りをやり森に入るのを禁じているんだよ。勿論景色を守りたいって言ったのも本心だけどね。」


そうか、あれは取引の為でもあったのか。あそこまで徹底してたのも頷けた。

「銀塊はどのくらいの金額になるんですか!?」

「金貨三百枚にはなるね。銀山でもあるんじゃないのかな?」

「「ミネ」に入られる事を相当警戒してますね。」

(うち)との取引はあるんだけど全て仲介所(ギルド)を介してなんだ。引き取りに来るのも代理の商人みたいだし、アレコレと聞き出す訳には行かないでしょ?だから私も詳しい事は知らないんだよ。他領とも付き合いが薄いし謎が多い所なのは間違いない。考えても仕方ないね、もっと情報を集めてみよう。」

「有難うございます。」

「お安い御用さ。」


一歩進んだ事は確かだ。まだツルギ領に向かうまで半月ある、また何か新しい情報が出て来るかも知れない。

それから俺はステトと高級宿(ここ)での留守番を頼まれた。領主が襲われた事が知れ渡った為、民を安心させる意味でカーラと妹さんを連れて領都を馬車で回るんだそうだ。

健在振りを見せてこれまでと変わりない事を周知させる、これもある意味心配りだよな。

夜に成れば弟君を殺さないといけない。殺す振りだけど本人は知らないからな、目一杯反省して貰おう。


パパさんの部屋を出ていい加減ステトも起きてるだろうと部屋に向かう。

途中で執事さんに出くわした。

「話は終わったか?」

「悪かったな、大した話じゃなかったんだけどさ。」

「そういう事にしといてやる。」

「ははは、そうだな。有難さん。」

「お主の相棒は今奥様の部屋に居るぞ。」

「何で?」

「私が誘ったんだが、オシカお嬢様にな、、、」

「何だよ!?何かやらかしたか??」

「行けば解る。その先の部屋だ。まだカーラお嬢様もいらっしゃるから入って見てみろ。」

「お、おう。」

何だよ、絶対何かしただろステト!!


俺は不安で申し訳ない気持ちでその部屋の扉を叩いた。

亜人族嫌いの正妻さんも居てるんだぞ~お前言ってたよな嫌いとかって~

張っ倒したりして無いよな~

カーラが扉を開けてくれたが、笑いを堪えている?

中を覗くとステトの髪が何か、何あれ!?


妹さんに髪型を改造され、物凄い事になって頭の上がもう鳥の素状態だった。

読んで頂き有難う御座います。

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