⑤③再びの奥の手
正妻さんが今まで籠ってた奥の部屋に身支度の為向かおうと離れた時、俺はパパさんにそっと耳打ちをした。
「1人にさせない方が良いんじゃないですか?」
「そうだね。カーラちゃん、リウに付き添ってあげてくれるかい?」
夫であっても男が女の身支度に付き合う事はしない。それ故同じ女である娘に頼んだ。
その意味を悟ったカーラは頷いて正妻さんの後ろを付いて行く。
扉に手を掛けたその時正妻さんは腰に紐で付けていた丸い鏡の様な物を外した。
「【バスア】」
彼女が呟くと、後ろを歩ていたカーラが何に遮られる様にそれ以上進めくなる。
「!? リウ様!!」
「ごめんなさいね、でもけじめをつけないと。」
「何を仰ってるのですか!」
カーラがその遮ってる何かを叩くがビクともしていない。
魔具の様だが何の効果があるのかパパさんに確かめる。
「伯爵さん、あれは?」
「『遮断板魔具』の一種だよ、リウ!!」
そう教えてくれ妻と娘の元に行った。
あれだスタダ領で俺が襲った倹税官のツヒ・カクミが持っていた魔具と一緒だ。
物を遮る効果があるやつだ。ただ正妻さんの方が範囲が広い。
「リウ様!お止めください!まだケンダも、弟も母親を必要としています!!」
「リウ落ち着きなさい。」
「・・・・旦那様」
「けじめを付けるにしても別の方法で付けたらいい。いいから魔具を解除しておくれ。」
「ケンダを今回の騒ぎに巻き込んだのは私です。私が罪を償いますので息子を、どうかケンダに寛容なご処置を。」
「止めるんだリウ、ケンダもオシカも私も、そしてカーラもこんな事を望んではいない。」
「リウ様!罪を償うと仰るのなら逃げるんじゃ無く、もっと、もっと私達と向き合って下さい!!」
「お母様!」
妹さんがただ事でない状況に気付き父姉と同じ母親の元へ走って行った。
父娘3人が正妻さんの魔具に遮られ近づけない。
ステトも心配になったのか俺の元に来る。
「お母さんはナニするつもりなの?」
「正妻さんは自ら罪を償おうと死ぬつもりだ。」
「ダメだよそんな事!」
「・・・・・・。」
俺達は成り行きを見ているしか無かった。
「オシカもお姉様の言う事をちゃんと聞くんですよ。カーラさん、妹をそして良ければケンダを弟の事を宜しくお願いします。」
「リウ様、、、、義母様!!」
「旦那様、今まで煩わせてしまって申し訳ございませんでした。」
「考え直すんだリウ、申し訳無かったのは私も同じだ。時間は戻せないがこんな別れでなくてもいい。」
正妻さんはそれ以上何も言わず扉の取っ手に鏡の形をした魔具を引っ掛け、発動させたまま部屋に入って扉を閉めた。
「リウ!」「リウ様!!「お母様!」
そしてすぐに扉の隙間から煙が湧き出る。
こんなに早く燃えるって事は「火灯具(火を起こす魔具」で火を付けたな。
別館は石造り、壁も石塊を積み上げ作られている。扉から部屋に入る以外無理だし、それも防御板魔具で難しい。これじゃ救うのも間に合わない。
黒い煙がどんどん吹き出して扉の隙間から赤いものが見え始めた。
時間が経てば外部屋全体に火が回る恐れがある。そうなれば別館全体に広がるだろう。
一家を非難させないといけない。
俺は遮られたままの3人の元へ行き、重い雰囲気の中声を掛けた。
「伯爵さん、言い辛いですが外に出ないと。」
「そんな!」「お母様が中に居るの!!」
カーラと妹さんが反論した。
「まずは自分達の安全だ。何の為に騎士や仲介所の護衛達が命を掛けたと思ってるんだ?」
「そう、だね、、解っていたのに。本当に私は彼女を不幸にしただけの夫だよ。」
「後悔は後で頼みます。まずはあんた達の安全だ、ステト」
相棒に声を掛けたが彼女も諦めきれずにいる。
「おいステト」
「フツ、呪いを使って。」
そう来たか。
「オレを助けてくれた時みたいにあの壁ぶっ壊してよ!!このままだとお母さん燃えちゃう!」
「無茶言うな、あの部屋狭いんだぞ?そのお母さんごとぶっ壊すかも知れないんだからな!?」
「でも、でも、、」
「それに今日はもう「別」の使っちまったんだよ。まだよく解ってないんだ、出るかどうかも解んねえよ。」
「でも、、、、、」
彼女にとって正妻さんが何をしたかなんて関係ない。家族が心配してる姿をっみて助けたいと思っただけだ。全くこの正妻さんのせいでもあるんだぞ、それを助けろってどこまで純粋なんだよお前は。でもそんな相棒の願いを聞き入れ無いなんて事は、、、、、
「出来ないよなぁ~。」
「??」
「お前はあの3人を下がらせろ。直ぐに別館から出るからな。」
ぱぁっと表情が明るくなって頷き、家族を下がらせる。
「フツさん?一体、、、、」
すれ違い様カーラが俺に何をするつもりか聞いて来た。
「あれだよ、「お・く・の・て」さ。いいから下がっててくれ。」
母親が閉じ篭ったっ部屋から火が起こった衝撃で泣き崩れてる妹さんを抱きながら同じく下がってくるパパさんも俺に声を掛けて来た。
「どうするつもりだい?避難するなら君も、、」
「しますよ、正妻さんを出したらね。」
そして俺は煙の勢いが増す扉の前に立つ。
ステトにああは言ったが多分「出る」だろう。謎は残ってるが前も一日一回それぞれの『力』は出せた。
恐らく彼女は部屋の奥に居る、狭い部屋だと壁を狙うと正妻さんに当たるかも知れない。
賭けだが試してみるしか無いか。『アサルト』は魔術師の防御魔術を突き破った、なら防御板魔具の術も貫ける、と思う。俺は腕を扉の下に向けた。
扉だけぶっ壊す。
『アルピジン(RPG)!』
ドガーーーーーーーン!!!!
腕先が光り太い光線となって飛び出し「防御板魔具」を通り抜け扉を木っ端みじんに破壊した。入口から黒煙が一気に噴き出して前が見えない。
煙を吸わない様手で口を押さえ中に飛び込むと正妻さんが座っていた椅から飛び上がり、いきなり飛び込んで来た俺を信じられない目で見る。
炎は部屋にある家具や装飾品類に燃え広がり部屋の中はかなりの高温になってた。
「あ、あ彼方どうやって、、、、」
「死ぬにはまだ早いみたいですよ伯爵夫人。」
「私は、、きゃあ!」
このままだ熱とと煙にやられる。
有無を言わさず担ぎ上げ急いで部屋から出た。
「お母様!!」「リウ様!!」
駆け寄って来る娘2人に正妻さんを渡してステトの元へ行く。
パパさんは棒立ちになっていた。
「君は一体、、、何者なんだ?」
「それよりまずは出ましょう。ステト、まだ黒装束達が潜んでるかも知れないから先導頼む。」
「うん!」
喜んでくれて良かったよ。
お前が頼まなかったら俺は助けなかったかも知れなかったからな。
ステトが先を行き一家を別館の出口まで連れて行く。俺は最後尾で警戒しながらついて行き全員外に出る事が出来た。
領兵が明かりを灯して残党が居ないか見回っていて、倒されてる黒装束達は生きてる者も死んでる者も縛り上げられている。
これでやっと全部の決着がついた様だな。
パパさん一家を安全な所に行かさないとって、それはもう俺の仕事じゃないか。
俺は別館に乗って来た馬車が停まってるのに気付き御者席に居た男に手を振った。
馬車が俺達の所まで寄せて来ると俺は扉を開けて家族4人で乗る様に促した。
先に妹さんを乗せ、次にカーラを乗せようとする。
「フツさんとステトさんは?」
「俺達は歩くよ。馬車は4人乗りだし家族の邪魔なんて出来ないからな。
「ですが、」
「いいから気にすんな。」
次は正妻さん、、、ザワリ
「アブナイ!!!」
ステトが叫ぶ。
俺の後ろに居る正妻さんとパパさん目掛けて馬車の後部に潜んでいた黒装束の生き残りが1人飛び掛かって来た。
くそ!完全に死角だった、ナイフを抜いたが相手のサイスが早いっ!
ガン!!!
俺の頭上に風が舞う。振り返る間も無く黒装束はその大きな鉄の塊で殴られ首が捻じ曲って倒れた。
正妻さんが恐怖で倒れそうになるのをパパさんが支える。
ステトが俺の所に来て俺の背後に会釈した。
俺は手で自分の髪が無事か確かめる為にさすったが多分剥げてはいない。
「フツ!大丈夫!?」
「少し薄くなったかも。」
「?」
「有難うねナサ。」
パパさんが俺の背後に向かって男前騎士の名を呼ぶ。
振り返ると大剣を持った赤い目をした男がにやついて立ってやがった。
「大丈夫だ髪はある。この先は知らんが。」
「いやこれからも剝げねぇよ!」
失礼な。
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