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⑤②オーダ家

パパさんが説明してくれた内容は、欲をかいた者の愚かさだった。


オーダ家の内情は随分前から破綻していたらしい。

ナンコー領までの国道を誘致する為にパパさんはオーダ家に協力を仰いだ。ダイユ・オーダ伯爵は軍属でその役目を活用して王宮に働きかけ、パパさんも中央の貴族達に見返りを約束して無事国道が開通する事に漕ぎつける。

そして経済が回り出しナンコー領は豊かになった。パパさんは約束通り協力してくれた貴族達に金をばら撒き、品をばら撒き、取引に際して優遇した。そのお蔭もあって子爵から伯爵の陞爵(しょうしゃく)も決まる。

妻の実家であり、協力をしてくれたオーダ家にも当然の対価を支払った。法衣貴族では得られないくらいの対価。普通に家の運営をこなしていたら次世代にも財産が残せる程の金銭。

約束を果たしたパパさんは自領の発展に集中し、オーダ家も得るものを得たからか何の音沙汰も無く公式の催し以外に顔を合わす事も無くなっていた。


正妻(リウ)が行った事をオーダ家にも一応伝えていたが、軟禁されていると知ってもオーダ家からは苦情や抗議等の使いは来ていない。リウは既にナンコー家の者なので当然なのだが何も言って来ないのが意外に思った。中央貴族の常識としてオーダ家は「外側領」ナンコー家の事を見下していたからだ。同じ伯爵家に成った事も面白くないと感じてるに違いない。案の定暫く経ってから正妻(リウ)に対する扱いにかこつけて金の無心が度々来る様になる。少なからず後ろめたい気持ちもあってか仕方なく程ほどの額をオーダ家に融通し続けたが、正妻(リウ)の軟禁を解き自由も与えた事によってその要求を断る事にした。


パパさんはそこまで話して向かいに座らせた正妻さんの反応を伺った。

「お前は実家の内情を知ってたかぃ!?」

「い、いえ。でもまさかそんなに苦しい状況だったなんて、、、」

「要らぬ欲を出したみたいだね。」

「どう、、、言う事ですか?」

夫婦のやり取りに商人で娘のカーラが割って入った。


「投資に失敗したのですね?」

「とう、し?」

パパさんは頷くが正妻さんはよく解ってないみたいだ。


「リウ様「投資」と言うのは物を買って値が上がると売る、その差額の利益を得る事です。逆も有り得ますし金銭で無くても投資は出来ます。例えばナンコー領に国道が通る事を見越して金銭の代わりに労力を差し出し、その見返りに利益を要求するなどです。ご実家のオーダ家はこの投資には成功されました。」

それからカーラが正妻さんが飲み込めるように解り易く説明を続ける。

女の役目は家を守る事。いくら伯爵家で育ったとは言え礼儀作法や読み書き、簡単な算術に芸事くらいしか学ばない。投資の事など知り様がないんだよな。この場合カーラがが特殊なんだ。


「ダイユ殿はナンコー領から得た利益を元手に様々な投資を行ったみたいでね。」

「え、、、、父はその投資で利益を得られなかったという事ですか?」

「そうだ。ダイユ殿は軍属で経済には疎い。それでも懲りもせず次から次へと投資をして、利益を出す所か莫大な借金だけが残ったんだよ。」


パパさんとカーラの話で正妻さんも何となく状況が解ったみたいだった。

それにいつの間にかカーラとの距離も縮まってる気がする。


「どのくらいの?」

「詳しい額は解らない。しかしもう手遅れだった事は間違いない。私だけでなく色んな所に借金があるみたいだったからね。金の融通を断られると次は投資話を打診して来た、一口乗らないかと頻繁にね。損を取り返そうと必死だったんだよ。私が乗らないと直接領の者達に話を持って行った。目に余ったのでオーダ家からの相談には気を付ける様通達したくらいさ。それでも縁戚の家を使ってまで同じ事を繰り返す、もうなりふり構って居られない状況だったんだ。」


ウル・コウムの実家の店が潰れたのも元はと言えばオーダ家から始まった投資話だったのか。

「そんな、、、、父が誰かに騙されてるとか、利用されてるとか、、、、」

「それは無いよ。リウ、辛いが聞いておくれ。私がお前に離縁を言い渡さなかったのはね子供達の為もあるが、、、、、ダイユ殿がお前を売ろうとしてたからなんだよ。」


全ての要求を断られたオーダ家は、急にリウを返せと言い出した。別居しているなら離縁をしても構うまいと勝手な物言いだった。

「何を言ってるんですか!?父が私を?そんな事、、、、」

「お前と離縁しろ急に言い出した事がおかしいと思って調べたんだ、今までそんな事を言って来なかったからね。ダイユ殿は借金相手の一人にお前を差し出すつもりだったんだ。その相手は貴族でも何でもない金貸しの男さ。」

「そ、、ん、、な、、、、」


「離縁しないと解り、中央貴族連中に私が自分の娘にとんでもなく酷い扱いをしてると触れ回った。さも私が汚職をしていると匂わせ、ナンコー領を罰する様に王宮で声を上げていた。私は随分前からそんなオーダ家の動向に目を光らせ、先回りして一つ一つ噂を潰していたがもう我慢の限界だった。どうにかする方法を模索していたんだよ。デンを送り込んで時間を掛け私に不満を持つ様に仕向けたのも解っていたし、お前は私がカーラを跡継ぎにしたがってるとオーダ家に伝えた事も知っていた。カーラに過剰な態度を取ってお前の不安を煽り、ダイユ殿が行動に出る様に仕向けたのは私だ。オーダ家がこれをナンコー領を乗っ取る絶好の機会と思い凶行に及ぶまでは思惑通りだったが、ケンダがあそこまでデンに踊らされるとはね。その結果お前まで狙われる事になってしまった。全ては私の甘さが招いた事だ。」」


「で、も、、何故、私を?」

「これに成功してケンダが領主になればお前はもう必要なくなる。お前の性格からしてケンダをお飾りの領主にされるなんて許さないだろう?だからさ。」


すすり泣く声が部屋に響く。

酷い話だが自分の娘を売るなんて話は珍しい事じゃない、食うに困ってる者は食う為に何でもするからだ。しかし嫁に出してる娘を借金の(かた)に差し出すとか利用価値が無くなると命を狙うとか貴族ってのは、、、いや貴族とか関係ないな、屑野郎は何処にでも居る。

ただ俺が嫌いなやり方なだけだ。


泣き崩れた正妻さんをカーラが抱きしめた。

「リウ様、、、、。」

「お前を利用したのは私も同じだ、それでも彼等を一掃したかった。本当に済まない。」


パパさんはそう言う正妻さんを抱きしめているカーラごと2人を抱きしめた。

「もっと私がお前と一緒に居るべきだった。お前は私の妻だ、それは今までも変わらない。ケイを愛していた事は否定はしないが、お前とケイを比べた事なんて無かったんだよ。お前はお前、ケイはケイだった。政略結婚だったが私はお前を大切に思っていた。カーラの事もナンコー領の事も好きになって欲しかったんだ。」

「う”う”う”う”う”・・・・」


3人は少しの時間そのままで抱き合っていた。

そして正妻さんがパパさんとカーラから離れ立ち上がる。

「カーラさん、私は貴女の母親ケイさんの事が大嫌いでした。」

「・・・・解っています。」

「先に妻となっている事も、恋愛結婚であった事も許せなかった。いえ、、、、、、羨ましかったのです。」

「リウ様それは」

「いいえ言わせて頂戴。伯爵家で育った私が平民の女に愛情で負けるなんて許せなかった。でも旦那様にどうしたら関心を持っていただけるか解らなかった。周りの者達も王都から来た私をどこか恐れてました。何も悪い事などしていないのに私を避けるのです。私はそんな態度が癪でした。その怒りを周りにぶつけました。接点がなかった私は亜人族が怖かった、私は彼等を避ける様になりました。自分が民に避けられてるのに同じ事をしていたのです。孤独でした。でも私は馴染もうとしませんでした。馴染んでしまえば猶更ケイさんに勝てないと考えていたのです。彼女はナンコー領の人、領の事を良く知っていて当然旦那様とも話がお合いになる。そんな2人の間に入るには王都の伯爵家育ちの私には無理だった。その事を認めたくなかった。」


中央領が外側領を見下していると同様に保守的な外側領は中央から来た者に冷たい。正妻さんが馴染むまで孤独を感じてたとしても当然だ。


正妻さんはカーラに向き直った。

「今更謝るつもりは有りませんし仲良くしようとも思いません、あの特の私は、、、」

「もういいのですリウ様。母は病で死にました。それで私も孤独を感じました。ですがリウ様のお蔭で私に弟や妹が出来たのです。亡くなった祖父や母、今は王都で隠居している祖母と同じ家族が増えたのです。それはリウ様も含めての家族ですよ。あ、父は「仕方なく」が付いてますが。」


「私が「仕方なく」というのは悲しいけどね。」

「元凶はお父様ですから。」

「耳が痛いよカーラちゃん。」

パパさんが苦笑いしてる。痛い所つかれたな。


「自分のした事が許されるとは思っていません。ですが、、、、有難う。」


扉の前でステトは短剣を片手に警戒してくれている。妹さんはまだ襲われた恐怖から立ち直っていないんだろう、パパさん達の会話にも加われず自分の髪を引っ切り無しに触って髪に乗せてるプフが崩れてきてる。


「それで、、、、息子はケンダはどうなるのですか!?」

「残念だがあの子がした事は重罪だで多くの者が被害に遭った。罪を問わなければならない。」

「私もですよね?」

「哀しいが私は領主なんだよ、身内の罪だからと言って不問に処す事は出来ない。」

「解りました。」


少し持ち直した正妻さんが身なりを整える。そして妹さんを呼び彼女を抱きしめた。

不安げに正妻さんにしがみ付いている。

「オシカ、旦那様とカーラさんと行きなさい。」

「お母様は一緒に行かないのですか!?」

「・・・・・・旦那様。」

「なんだい?」

「身支度させて下さいませ。」

「解った。」

「有難う御座います。」


嫌な予感がした。


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