㊽『力』の力
何じゃ? 唯一の武器であるナイフを仕舞って気でも触れたかと思ったが、儂に向けて片手を上げよった。何をするつもりじゃ?まさかこ奴も魔術師か!?
咄嗟に「ウインド」を止めて左手の刻印を発動させる。これで魔術師だとしてもお主の「術」は儂には効かんぞ。
「【レンデリア】!!」
反射されて己の術に殺されるがいい。
「『アサルト』!!」
俺の手先から放たれた光の銃弾が魔術師に放たれると同時に、感が良いのか咄嗟に防御魔術に替えやがった。もう止まれない! 行け!!!!!
やはり魔術かっ、しかし何じゃこの速さ!?こんな速さは『エレメント』では不可能じゃ!!
儂の知らぬ術か??それこそあり得ん事!
パパパパパパパパパ!
うぐ、ぐ、ぐ、!! 何かの衝撃が体を貫きおった。。。
初手は間に合わんかったが残りはレインデリアで返してやるわ!!
パパパパパパパパ!
が、が、が、ぐ、???衝撃が止まん?何故じゃ??
パパパパパパパ!
あ”、あ”、あ”、あ”、まさか儂の術が効かんじゃと!?
パパパパパパッ!!
あ、ぐ、ご、が、 何なんじゃコレは!!
なぁ~~~~~~~~~~~~なんじゃあああああああああ!!!!!!
がはっ、、、、、、、、、
暗い空が見える。倒れたのか?儂が?
儂が負けた?魔術で?? 新しい術式???
知りたい、、もっと極めたい、、このままじゃ、、、、
はぁはぁはぁ、流れていた血が乾き顔がごわごわする。重い体を引きずり魔術師の元へ行った。
あいつは人かも怪しいからな確認しとかないと。死骸はぼろ切れ様にになって横たわっていた。
顔の刻印が擦れて半分消えていた。こいつは「書き込み」の純身魔術者だ。まだ人としての一線を越えて無かったのか、そこまでの覚悟が無かったのか。今となってはどうでもいいけどな。
パパさんの所へ行こうとした時、誰かに足首を掴まれた。ぎょっと振り返ると死んでると思った魔術師だった。
「あ、あれは何じゃ?」
「・・・・。」
「おおおおおし、、えてくれ、、、何じゃっ、、、、たんじゃ?」
「わ、し、、の、、知らな、、、い、ま、じゅ、、、、」
足首を掴んでいた力が抜ける。最後まで魔術に魅せられた者の狂気か。
久し振りに人を殺した、、、、いや、やっぱ人じゃ無いよ魔術師は。
俺は問いに答なかった。教えれるもんならいくらでも教えてやったさ。
『アサルト』を撃ち切って解った事、こいつは30発弾倉だった。
そしてこの『力』の新しい発見もした。『アサルト』は魔術師が途中で発動させた防御魔術を通り抜け着弾していた。どうしてだ!?
魔術師は「自分を超える術でないと無理」と言っていたが、そもそもこの『力』は魔術じゃない。魔術が効かないのか!?考えても答えは出ないし、また一つ謎が増えただけだった。
俺はパパさんの元に行き無事を確認する。侍従コヒ・メズは血まみれだったが、胸が上下に動いていたのでまだ生きていると解った。
「鳥人の肌は羽毛に覆われているからね、即死は免れた様だ。でも脈が弱い、このままだと持たない。」
自分の上着をコヒに掛けてやっていた。本当憎らしいよ、そういう所が。
俺はカーラから受け取っていた薬の瓶を思い出し取り出す。
「これ、コヒに。」
「これは?」
「カーラがもしもの時の為に渡してくれた薬です。何に効くのは知りませんけど。」
「自分の娘ながら涙が出るほど気が効く子だ。これでひとまず助かるよ。」
パパさんは瓶から一粒取り出しコヒの口に入れ何とか飲ませた。
そして彼の胸に耳を当て、少ししてから頷く。
「何の効果があるんです?」
「これはね、乱暴な言い方をすれば心臓を無理矢理動かす為の薬なんだよ。弱い力でね。
流れた血や、傷は癒えないけど死なせずに済む。応急処置だけどね。心臓さえ動いていれば何とかなる。失血で後遺症が残る、内臓に深手を負って臓器不全に陥るなどの危険性は勿論あるけど、今此処で死ぬ事は無い。後はどれだけ早く彼を治療出来るかだ。」
「院社じゃ無理ですよ?一体何処で?」
「皆が皆、規律を守ってる訳じゃ無いよ。そんな教えに反発している直階医や権階医も居るんだ。そんな彼等を領で囲ってるんだよ。でも知識と技術があっても特別な薬だけはどうにもならない。養父もそれを考えて自分で手に入れていたんだ。」
カーラもナンコー領の亜人族の事を考えて後を引き継いだのか。
ツルギ領の誰と取引するのかは知らないが、今回の彼女の仕事もそんな感じなんだろう。
「君は大丈夫かい?」
パパさんが俺の傷を見て言ってくれた。
痛みはあるが血は止まっている。
「かすり傷ですよ、痛いの我慢して格好つけてますけど。」
「つけなくても今の君は格好いいよ。」
「おじさんに言われても気持ち悪いだけです。」
「不敬罪だねそれ。」
こんな軽口が効けるのも生き残ったからだ。
俺達は生きているが周りは悲惨だった。
ぼろ切れになった魔術師と干物になったデン、負傷者達を介抱する騎士達と護衛達。黒装束達も死んだ者や負傷している者が殆どだ。うめき声や互いを励ます声、恨み事を叫んでる声など俺が思い出したくない凄惨な戦場の景色だった。
「フツ君、さっきの・・・・」
その悲惨な状況を眺めながら
「いや、今はそれ所じゃ無いね。」
俺の『力』を問いただそうとして思い留まる。
「まだ終わってないからね。」
そう言ってパパさんが向かったのは拘束具「ブライドル」で倒れてる弟君の所だ。
そして側に転がってた魔具を踏み潰した。
「かっ、はぁはぁ、、、ち、、父上。」
「良く見るんだケンダ、この惨状を。」
戦いが終わった景色に顔を向ける。
動ける様になっても弟君は立ち上がろうとせず目を背けた。
俺はこの息子がこれ以上の間違いを犯さない為にパパさんの隣に立つ。
「ちゃんと見なさい。惨状はお前が招いた事だ。
お前の幼稚な思い上がりで多くの者が傷付き、そして死んだ。」
「・・・・・・」
「領主の座がそんなに欲しかったら私を納得させる力量を見せたらいい。認めさせたらいいんだよ。それはお前が苦手としている商売じゃなくてもいい、本当にお前がナンコー領の安全を仲介所に任せたく無いんだったら騎士達とすればいい。そしていずれお前が陣頭指揮を執ったら良かったんだ。自分で事を成すならまだしも、人に任せ、利用され、騙された。それで人の上に立てるとでも?」
弟君は膝をつき俯いたまま。
「結局お前はカーラに嫉妬していただけだ。私と同じ事が出来ている姉に敵わないからと。」
「ち!違いま、、、」
パァン!
パパさんがの頬を張った。この人が手を出すなんてな。
「何時まで甘えるつもりだい!?これ以上醜態を晒してはいけないよ。」
「す”す”す”いませ”んち”ち”う”え・・・・・」
肩を震わせむせび泣く。そんな弟君をパパさんが抱きしめた。
「私もいけなかった、お前を試す様な事ばかりして。決してお前に才覚が無いなんて思っていなかったんだよ。苦手があって当然だからね、私も苦手が沢山ある。それを補ってくれる者を側に置けばいいんだ。。」
「うぐ、ち”ち”うえ”~~」
「姉が弟の補佐をする、なんて未来もあったかも知れない。」
その時後ろから馬の足音が聞こえる。
騎兵隊の到着だ。その方向を見ると執事さんと数人の騎士が馬に乗り、馬車も連れて来ている。後に続く新たな護衛達は相当な大人数を手配されたみたいだった。
「お前が犯したその罪の重さ、それはお前の命以上の重さだ。」
「、、、、、はい。」
「とは言えデンの事は私にも責任がある。
裏があると思っていたが、それをお前を試す為に利用してしまったからね。」
「あ!母上が、オシカが!!」
「解っている、これから行くよ。お前への沙汰は事終わってからだ。」
そう言ってパパさんは立ち上がる。
馬を降りた執事さんが駆け寄って来た。
「クスナ様!!よくぞご無事で!」
「タキ、至急コヒに治療を。そして此処の後始末を頼むよ、私はまだ別の始末を付けなくちゃ行けない。」
「は。ケンダ様はどうなされますか?」
「牢に。誰とも接触させるんじゃない。」
「了解しました。しかしこれは、、、、」
準男爵であるタキ・ゴンゲもこの惨状に言葉を失っていた。」
「本当によくぞご無事で・・・」
「このフツ君のお陰だよ、彼は命の恩人さ。それにお前と皆もだ、有難ね。」
「は。-お客人いやフツ殿、主を守って頂き心から感謝致します。」
人夫姿の男には見えない礼儀で腰を折ってくれた。
「失礼な物言いで悪いけど止してくれ執事さん、あんた等が居なかったらとっくにくたばってたよ。」
「いえ、貴殿が居なければナンコー領は路頭に迷う事になっていたでしょう。
でも私は執事では無い。」
そこは変わらないんだな!もういいや。
「それよりカーラは?俺の連れは見なかったか!?」
「お嬢様と連れの女子は仲介所に居なさった。まだ居られると思うが。」
おなごって。カーラが何処に行こうがもう刺客は倒したし、ステトも付いてる。
「タキ、私達は直ぐに出る。数人貸しておくれ。フツ君もお願い出来るかな!?」
「ここまで付き合ったんだから御供しますよ。」
「面倒くさくてごめんね、有難ね。」
こんな時でもその台詞出るんだ。
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