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㊺愚か者の最後

「フツ君、コヒも機会を伺っている。次に若造(デン)魔具(あれ)を発動させたら離れて気を逸らせてくれるかい?」

「やってみますけどね、失敗したらあんたも逃げて下さいよ?!」

「カーラちゃんとステトちゃんが先さ、それに私は息子(ケンダ)の後始末をしなければいけない。」

「死んだら何にもなりませんよ。」


「まるで亀の様だな!!田舎者の癖に調子に乗るからだ!!成金貴族」もこれで終わりだ!!!

ははははははは!!!!ざまみろ、これでナンコー領はオーダ家の、私の物になる!!死ね!!!

【ウインド・パロ】!!!」


連続した風の衝撃が襲うと同時に俺は走り出す。

デンは口元の魔具(クジキ)を発動しながら俺にその風を向けて狙って来た。


ブォッ、ブォッ、ブォッ、ブォッ、ブォッ、ブォッ


その風が俺を追い掛け、走る足元の土を抉っていく。

俺はマントルの端を掴んで体の半分を守りながらもう片手でナイフを握る

デンが俺に的を絞ったのを見て、何処からかコヒが素早く飛び出しその細い剣をデンに振り下ろした。

「くあ!」

悲鳴が聞こえ風の攻撃が止んだ!!やったか!?

息を切らしデンを見ると首を押さえて苦悶の表情を浮かべている。

まだだ、首から血が流れていたが致命傷には至ってない。


「おのれ~~~~~この下賤な下等な!!醜い亜人が~~~~~~!!!」

デンはコヒに口を向け「【ウインド・パロ】」と発動させる。

今度は俺がその隙にデンを襲う、気気付いたデンは俺にも連続で発動しようと叫んだ。

「無駄だ!【ウインド・カノ】!!」


やばい!岩の方だ!真面(まとも)に受ける!!

・・・・・・・・・・・・・・・風の衝撃が無い?

「が、が、が、が、ががががががががががが」

デンは口に付けた魔具(クジキ)を苦し気に握り締めて膝を付いた。

何だ?

俺はナイフを持った手を降ろしコヒに近寄る。

「無事か?」

鳥人は目だけ動かせないのでコヒは顔ごと俺に向き直る。

「はい、貴方は?」

「ああ、どうしたんだ?あいつ。」

俺は苦しみ続けているデンを指して聞く。


「魔核切れだね。」

横からパパさんの声がした。

デンの顔色がみるみるうちに青くなって(よだれ)を垂れ流し目が裏返った。

やがてその体は干乾びた干物の様に(しぼ)み、倒れたデンは動かなくなった。



「何てこった、、、」デンだった死体(それ)を見て俺は呟いた。


自然界の魔力補充は時間が掛かる、だから携帯型の魔具(クジキ)には魔核の魔力が利用されている。

普通魔核の魔力が切れても魔具(クジキ)が使えなくなるだけだ。新しく魔核を入れ替えれば再び使える様になる。あの顔が見えないマントル男がパパさんの言う「道を外した魔術師」だとして、あいつがこの魔具(クジキ)を造ったとして、こんな事になる危険な魔具(クジキ)なんて誰が欲しがるんだ??

これじゃまるで魔具(クジキ)に生気を吸い取られたみたいじゃねぇか。

そんな魔具(もの)を実際に使わせるなんて。


「こいつも使い捨てかよ。」

俺はそれを口に出して言った。


「フツ君、大丈夫かい?」

パパさんが干乾びたデンを見ていた俺に声を掛けて来た。

「まだ終わってませんからね。そっちはどうです!?」

「いけないねもう魔具(クジキ)が限界みたいだよ、威力が強過ぎて魔具(クジキ)自体が耐えられなかったんだ。高かったのに。」

防御魔具(クジキ)の亀裂が広がっていた。

「そんな事言ってる場合ですか、どうします?逃げますか!?」

カーラとステトに目をやり確認する。

「いや無駄だろうね、済まない。実行部隊は把握してたんだけど、これほどの術師が居る事は情報に無かった。こうなったら応援が来るまで時間を掛けるしか無いよ。」

「どうやって?相手は魔術師でしょう?もう守る方法が無いんでしょう!?」

「君は多少大丈夫だ。その義父のマントルはね『マンティコア』の皮が使われていて細かい説明は省くけど、ある程度の魔術に耐えれる物なんだよ。でも気を付けなさい「物理」に対してはそんなに期待は持てないからね。」

「で?俺は何をすれば!?まさか特攻しろと?」

「うん。」

「!?」

「君はとにかくあの得体の知れない魔術師の気を逸らせて欲しい。もう他に刺客は居ない様だしカーラちゃんとステトちゃんは此処から出来るだけ離れて貰おう。コヒは済まないが此処でフツ君の援護だ。」

俺達はパパさんの言葉に頷く。

「フツさん」

カーラの声に振り返った。

差し出したのは小さな一つの瓶。彼女の本来の目的である商品「(コセ・ポーション)」だ。

「すいません、、、、こんな事に巻き込んでしまって。これを、何かあった時これを一粒飲んで下さい。」

俺は受け取ったが効き目を知らない。取り敢えずズボンのポケットにねじ込む。

「カーラのせいじゃないだろ、大丈夫だよ。俺はしぶといしステトはもっとしぶといからな。」

「私、、、、フツさん、、、私は、、」

(これ)、有難な。」そう言ってポケットを叩いた。

「いいから行け、ステト頼むぞ。」

横で短剣を手に切り裂いたドレス姿のステトに顔を向ける。

「任せて」と言う彼女も真剣だ。俺は彼女を引き寄せ「終わったら美味いもん一杯ご馳走になろうぜ相棒」と言って前を向き、マントルで顔が見えない魔術師と思われる奴に飛び出して行った。


両手にナイフを持つ。ステトじゃないが思い出すよな。

(ファミリー同士の抗争(けんか)じゃいつも殴り込みは俺の役目だった。下の(もん)はそんな俺の事を「飛出(スティレット)しナイフ」って呼んでたっけ。

こうなったらまずカーラの安全だ、後はもうどうでもいい。

あれ?いつの間にかしっかり護衛してるじゃないか。

「ミネ」に行くのに都合が良いって理由で引き受けただけなのにな。

でも必要とされるって悪い気はしない。

俺は笑っていた。



「だから言っておいたじゃろう、それの連続発動はいかんと。折角儂が今回の為に(しつ)えたのにの。

しかし伯爵の持つ「ウォール」を打ち崩せんかったか、、、まぁいい改良の余地がある事が解っただけで収穫じゃ。どれ、では楽しませてもらうとしようかの。」



魔術師と思われる奴が頭まで被っていたマントルを下ろして顔を見せた。

良く見えないが男だ。近づくにつれ細かい所まで見えて来る。

(デン)の様に肌は干乾び、骨ばった老人だった。

顔は黒く目だけが白く浮いて見える。黒いのは・・・・顔に何か書いてある? 


「【ウインド・アロー】」


とっさにマンティコアで作ったマントルで身を庇う。

バシュッ!バシュッ!と

風に突かれる様な衝撃がマントル越しに襲って来た。

俺は勢いに押されよろめいて地に手を付く。老人を見ると手に何も持ってない。

デンの様に口にも何も巻いてない。魔具(クジキ)は何処にも無かった。

「どこから出たんだ?」

素早く立ち上がって老人の魔術師に対峙する。


「ほ!そのマントルのお蔭かの!?魔術耐性持ちの素材で出来とるんじゃな?なるほど良い品じゃ。」


更に老人をよく見るとやはり顔に何か印が描かれてあった。何の為に?

「これはどうかの?!」

老人は懐から紙束を取り出しそれを巻き散らす。


「【フィシカ】・【アロー】!」

それぞれの紙が「矢」になって弓から放たれた様に飛んでくる。


俺は咄嗟にマントルを構えたが矢が突き刺さる。所々内側に矢先が貫通して来た。

「本物!?」

やばい!!このマントルじゃ無理だ!次々と矢が飛んでくる。

後ずさる事しか出来なかった俺の前に侍従コヒ・メズが立ちはだかって矢を剣で防いでくれた。

矢を払いながら「フツ様、後ろへ」と俺達は下がった。

その勢いのままパパさんの近くまで押し戻される。


「「様」は止めてくれ。」

(かしこ)まりましたフツ様」

「・・・・今はいいや。それよりあれは?魔術が本物の矢になったぞ!?」

「「紋様魔術」だよ。」後ろからパパさんが言う。

「何の違いが?」

魔具(クジキ)に使われてるのは「刻印魔術」で基本的に火・風・水・土の『エレメント』を発動させるんだ。「ウインド」は風で形が見える類では無い。その他も目には見えても「物」では無い、「現象」なんだよ。「紋様魔術」は描かれた紋様によって触媒が「物」に変換する術さ。魔核は使えない自然界の魔力のみ取り込められる。使い捨てみたいなものだね、あの外れ魔術師は「(ウインド)」の使い手みたいだし「紋様魔術」も使えるとなるとやはり高位な魔術師だったんだ。」

「そこはどうでもいいですから、何か手は?!」

「魔術はフツ君、物理はコヒで時間を稼いでおくれ。「紋様魔術」は仕方ないが「刻印魔術」の方はいずれ魔核切れを起こすはずだよ。物理だけなら何とか、、、ね?」


確かに、よし魔術を使わせてやる。

再び俺とコヒは魔術師(じじい)に向かって走った。辿り着けば殴り倒してやる。


先に俺が近づくと「【フィシカ】・【アロー】」と紙を投げつけて矢を放つ。

それをコヒが振り落として近づくと「【ウインド・アロー】」と風の矢を放って来た。

すかさずマントルで2人を(おお)い防ぐ。

何回か同じ攻防をしていると魔術師(じじいが苦しむ声を発し始めた。


「ふう、魔核の魔力が切れたみたいだな。」

息を切らし膝に手を付いてコヒに言う。これで物理だけになった。

「いえ、何かおかしいです。」

俺は苦しんでいる魔術師(じじい)を観察した。

「でも魔具(クジキは結局何処に持ってるんだろ!?」


コヒは直ぐには答えず苦しむ様子を見ていた。そして表情が解り辛い鳥人が初めて誰が見ても解る険しい顔になっている。

魔具(クジキ)では有りません、あれは『純身魔術』です。」

「?、どっかで聞いた事あるな。」

俺は再び魔術師(じじいに目をやると、マントルの懐から今度は緑色の石の様な物を取り出している。

「あれ魔核か?魔具(クジキ)も無いのにどうするつもりだ!?あんな(もん)。」




「うがががが・・・やれ、切れた様じゃ。」

魔術師(じじい)はその緑の石を飲み込んだ。


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