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㊸準男爵

やっと少し動けました苦笑

黒装束の者達が手にしてるものは特徴的な武器だった。

一般的なサイスとは違い小さく刃が返る程に曲がっている。


「あれは暗具の一種です。あの者達は(あや)める事を生業としているのでょう。」

コヒが自分の細い剣を構えて言う。

ただの雇われた者達じゃないって事か、だから暗くなって行動したんだな。


デンが弟君を差し置いてその者達に号令する。

「伯爵と娘だ!殺せ!!」

「何を言う!待て!!デン!どういうつもりだ!?

私はそんな事許した覚えは無いぞ!誰も傷付けないと言ったはずだ!!」

弟君はデンの言葉に詰め寄る。


「そんなあまい考えで領主の座を奪えると思っているのですか?

あの2人さえい無くなればもう邪魔する者は居りません。いいから私にお任せください。

必ずケンダ様を伯ナンコー領の救世主にしてみせます!やれ!!お前達!!!」

「待て!止めるんだお前達!!」

黒装束達は弟君の言う事に聞く耳持たず、デンの命令で動き出した。


黒装束達が散らばってパパさんに向かって来る。

それを騎士と仲介所(ギルド)の男達が防ごうとする。

喧嘩(たたかい)」が始まった。


双方の者達ぶち当たったがまともに斬り合う事にならなかった。

騎士達は剣を黒装束達に振り下ろすが、相手にされずに脇をすり抜けられていた。

仲介所(ギルド)の護衛達も一部の集団と斬り合うが同じく回避され、戦う相手が居ない状態になっている。無駄な争いは避けこっちに突き進むつもりだ。こいつらの狙いはこの2人だからな。

(カシラ)を狙う」だ。

俺とステトはカーラを、コヒ・メズはパパさんを守ろうと構え

怒号が聞こえる輪から飛び出して来た黒装束の相手をした。


闇に溶け込んんだ黒装束が持つ暗具(サイス)が俺の顔を掠める。速い。

俺はナイフを横一線に振るがもう相手が居なかった。

振り返ると再びサイスで斬り付けて来る。

首や腹、脇に腿を重点的に狙っていやがる

こいつ等人の殺し方を熟知してる、無駄な労力を使わず血を失わせるつもりだ。

でも・・・

俺はわざと隙を作り、そこを攻めて来たサイスを握っている腕をナイフで斬った。

狙う場所が解ってるんなら簡単だ。

「がっ」軽い呻きを発したが、構わず続けて攻撃を仕掛けて来る。

「おい、よく見ろよ。」

黒装束は肘から先が無くなってる事に気が付いた。

「な、、、」

「これを造った職人はすげえだろ?!」

有難うなコワジ氏。頭をナイフの柄で殴ると黒装束は気を失い倒れた。

後ろのステトも黒装束の相手をしている。

相手の速さより彼女の方が速い、難なく退け殺さずにぶっ飛ばしていた。

流石だよ元剣闘士。

コヒも2人黒装束を斬り倒している。

初手は上手く回避されていた騎士達や仲介所(ギルド)の護衛達が、逆に背後から黒装束達を捉え突破を阻止してくれている。一気に来られたら厳しいが細切れなら俺達でも何とかなるもんだ。


「カーラ大丈夫か!?」

ステトの脇に下がっている彼女に声を掛ける。

「え?えぇ大丈夫です。それより何者達なのでしょう?領都には仲介所(ギルド)に依頼して入って来る方々の監視も行っているはずなのに・・・・」

気を失っている黒装束を見て誰に言う訳でも無く問い掛けた。

「今は気にするな。もう弟君の反抗期どころじゃ無い、これは(はか)られた反乱だよ。」

カーラは頷いて自分の肩を抱いた。


「フツ、あっちから新手が来るよ!」

ステトの言葉に振り返ると今いる黒装束とは別に15人くらいの同様の奴らが現れた。


「こりゃ本気で乗っ取るつもりだな。ステト油断するな、向こうが数で上回ったぞ。」

ステトは短剣を、俺はナイフを握り直し此処迄辿り着く新手の黒装束達に備える。

騎士達は黒装束を捉えられてない、わざと避けられてる。仲介所(ギルド)の護衛達は何とか行く手を阻んで乱戦になっていた。黒装束の奴らは護衛達に(とど)めを刺す手間を掛けないですり抜けて来る。

パパさんとカーラを殺す為、あくまで目的を果たす為に動いている。


カーラを狙った黒装束の攻撃をステトが受け、その隙に俺がナイフで斬る。

俺達は殺す事が目的じゃない、守る事だ。

取り敢えず相手を動けなくするだけでいい。

また来た黒装束を体当たりで退け、片膝をついた隙に左手のナイフで足首を斬り、右手のナイフで膝を斬りつけた。そいつを飛び越えて襲い掛かって来た奴にナイフを投げつけ、肩に刺さったが相手は構わずサイスを振る。それを躱して背中を斬る。倒れて呻く黒装束からナイフを取り戻し振り返ると、続け様にもう1人が俺をすり抜けカーラを襲う。俺が足を引っ掛けると態勢を崩した黒装束はサイスをカーラに投げようする。ステトがそいつのサイスを蹴って暗具を落とさせると、俺は裏腿をナイフで突き刺しカーラの側から引きずり離した。

「こりゃきつい。」

息を切らしている俺をカーラは心配そうに見る。

俺は大丈夫と手を振ってそれに応えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「何てことだ、、、、」

私はデンが連れて来た者達と、我が領の騎士達と仲介所(ギルド)に雇われている護衛達のと「争い」いやこれはもう「戦」だ。その模様を茫然と見ていた。

違う、私はこんな事を望んでいない!ああ、、、双方が傷付き倒れて行く、誰も彼も必死で戦っていた。

止めろもういい、止めるんだ。


「デン!もう止めさせろ!! 私はこんな事をする為にお前に任せたつもりは無い!!!」

デンは私を見て薄笑いを浮かべている。

「何を今更。貴方を領主にする為にしている事ですよ? 貴方は黙って私に全て任せておけばよろしい。あの2人を亡き者にして貴方が跡を継ぐ事をダイユ様、オーダ家が望んでおられるのです。手段なんて気にされません。貴方は望み通り領主となってナンコー領の安全でも守ってて下さい。」


「お爺様?オーダ家の意向?どういう事だ!!お前と母上が手配したのでは無いのか!?」

「リウ様がした事は、あの2人を閉じ込める為の人員をご実家のオーダ家にお願いした事くらいですよ。領主夫人の紹介は便利なものですな、検問でも問題無くは入れました。どんな素性の者達かもご存知ありません。もっともそのリウ様も見捨てられましたが。」

「母上を見捨てる?何だそれは!!どういう意味だ!!」

私は咄嗟にデンの肩を掴んんだ。

デンは今ままで見せた事のない目で私を見た。

「言葉通りの意味ですよ。ご心配なさらず、オシカ様は含まれてませんので。」

掴んでいる手に力が入る。

「オシカだと!?妹に何の関係がある??答えろデン!!」

「痛いですよ、いずれ解りますから今はそこで大人しくしてて下さい。」

そう言ってナンコー勇団員達に渡した魔具(クジキ)の拘束具「ブライドル」を私に発動させた。

「う!ぐぐぐぐぐ。」石像の様に体が動かなくなり、口も開けなくなる。

その場に倒れた私はもうただの「物」の様に放置された。

母上まで、、、、私は決してこんなつもりじゃ、、、申し訳ありません父上、姉上。


「あの組織の噂は聞いていたが苦戦しているじゃないか。よもや打ち損じる事はないだろうな!?」

「さて?儂はあの黒装束達(あのものら)とは別口でしての。確かに田舎領の割にはよくやっとりますな。じゃが安心しなされデン殿、儂が居るのですからのう。」

「ヌゲと言ったな?魔術師が1人で何が出来るのだ!? まぁいいダイユ様がお前を寄越して下さったのだ。それなりの術師なのだろう。それよりオシカ様の方は?ケンダ様をオーダ家に恭順させる為の大事な人質だ。」

「別の者達が向かっとるじゃろうて。」

「これに成功すれば私はナンコー領領主代理として此処を治める事になる。貴様も大金が入るんだからな、期待を裏切るなよ。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「何か昔を思い出すよ。」


ステトが短剣を持つ手首を回しながら言う。

闘技場(アレナ)じゃ決闘だろ?」

「いつもは一対一だけどね、たまにあったんだダンタイセンってやつ。

戦い方が全然バラバラで酷いモンだった。フツとの方が上手くやってるよ。」

笑ってそんな事言ってる。

「本当頼りになるよお前は、パパさんじゃ無いけどいい相棒だ。」

「・・・うん。」

こんな時に照れてる場合か。


何て思ってたら5.6人の黒装束が突破してきてパパさんに一直線に向かう。

これは不味い!コヒ1人じゃ手が足りない!!

俺はパパさんの所に行こうとしたが、カーラの事を思い出し足が動かなかった。

コヒが1人の攻撃を受け止めた所に残りの者達がパパさんに襲い掛かる。

「伯爵さん!!」

俺が叫ぶもパパさんは平然と俺の声に笑顔で答えた。

その時黒装束が1人1人と投げ飛ばされ、残った者も頭を鷲掴まれ最後には投げ飛ばされる。

人夫姿のナンコー領属準男爵タキ・ゴンゲがそこに居た。

「有難うねタキ。」

パパさんはタキを労う。そのタキは肩を回しながら

「少し運動不足ですな、やはり私には執事など合いません。」

とまだ不満を言っていた。


俺は投げ飛ばされた黒装束を見た。

呻きを上げてる者、気を失ってる者、首が変な方向に曲がってる者など。

何て馬鹿力だ、あれで本当に人族か!?


パパさんが俺達の方に来て、いつもと変わらない態度で同じ様に倒れている黒装束達を見下ろした。

「この者達は殺しを専門とする組織だね、田舎領相手に奮発したものだ。」と言ってから

「フツ君もステトちゃんも流石カーラちゃんの護衛だよ」褒めてくれた。


「いや仕事ですからね、それより執事さん?何ですかあの人!人族離れし過ぎですよ。」

「タキかい? そうだろうね彼の先祖には亜人の血が入っててね。でもかなり前の世代の話だからタキ自身は人族として扱われているんだよ。本人も何の種族の血が入ってるかさえ知らないみたいなんだ。 タキ、さっきは名前を教えて無かったね、フツ君だそちらはステトちゃん。」

改めて紹介されたが準男爵はさっきの俺の言葉が気に入らないらしく、初めて会った時の不愛想で

「どうもお客人、俺は執事じゃ無い。」

と睨みつけて来る。

「いや、そこは別にどうでもいいんだけど?」

「どうでもよくは無い。」


面倒くせぇなもう!!


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