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㉜個性的な領主

微笑ましい?親子のやり取りに圧倒されつつレンに耳打ちする。

「いつもああなのか?」

「はい、と言ってもお嬢様が店をお継ぎになられてからあのようになられました。前回などお嬢様が店に居ると知って仲介所(ギルド)から派遣された方々が、店を取り囲んでいましたね。お嬢様を逃がさない様にとの依頼らしくて。」

レンは微笑みながら言ってるけどそれ笑って言う事?

ステトは目が点。そりゃそうだ。


「お父様、検問所の注意事項って何ですかあれは。

まるで犯罪者扱いみたいじゃないですか!」

「え~だってカーラちゃん黙って戻って来て、すぐどっか行くじゃなーい。

それって罪だよ。パパを淋しがらせるツ・ミ!!

今回は直ぐには行かせないからね!数日は泊って行きなさい!!」


検問所で娘手配するとか、見越して賄賂に高級菓子買っとくとか。

うん、何か、うん親子だな。


「さあー乗って乗って!! 旅の話聞かせてよ。

今日はカーラちゃんが好きな「レビタン」の煮付けだからね!!」

「すいません、ちょっと行ってきます。二、三日で戻って来ますから。」

急かす親父さんいやパパさんか、を落ち着かせカーラは棒立ちの俺達に申し訳なそうに言う。


「いや全然大丈夫なんだが、、、悪い圧倒されて。

急いでないんだったら気にせずゆっくり親子の時間を過ごしてくれよ。」

「カーラ、お土産ある??」

ステトが期待を込めて言った。

パパさん所に行くのに土産期待するなよ。


「ええ、何か用意しますね。ではレン留守の間お2人の事お願いしますね。」

「お任せ下さい、お気を付けて。」

「ちょい待ち!!」


パパさんがこっちに来る。

「レン君、この紳士淑女の方々は?新しい従業員!?」


紳士淑女??誰が!?

滅茶苦茶見られてる、いや睨まれてる。特に俺。

レンが答える前にカーラが説明してくれた。

「今回の仕事でお世話になっているお2人で護衛を兼ねてお手伝いをお願いしているんです。」

「護衛??危険なの!?言ってよパパに!!よし!カーラちゃんの身はパパが守るよ」

「止めて下さい!!お父様にお任せしたら、とんでもない人数になりますから!

それにこのお2人とは気心も知れ、頼りになって下さってます。」

騎馬の騎士に何か言おうとするパパさんをカーラが(たしな)める。


「たたたた頼り?気心??」

ステトの方に近寄る。

「子猫ちゃん、名前は?」


ステトはビックリして

「ストト! 違うステトっ!!」

噛んだ。


「ステトちゃんね、君強そうだね!!」

と笑顔でステトの手を握って言う。

「毎度どうもね。カーラちゃんの事宜しくね!!」

毎度って。

そして俺の所に来る。


「君、名前は?」

目が笑ってないんですけど。


「フツ」


足先から舐める様に俺を見て

「フツ君か。」


それ以上聞かず更に近寄り

「解ってるよね?もし私のカーラちゃんの身に何かあったら・・・・」


「死ぬよ?」

(ささや)いた。


ゾクリ、、、、


ほんの少しだけの沈黙。


笑顔になって俺の手も握る。

「毎度どうもね!! 宜しくお願いね!!」

「さぁカーラちゃん、早く乗って!! ほらほら時は金なりってね!」


カーラを連れ馬車は走り去った。

只の親馬鹿じゃない。それこそ田舎だったナンコー領を『外側領の窓口』にまでした男だ。軽そうに見せてるがそうじゃ無い。


あれは人を殺せる男の目だった。


やる事も無い俺とステトは少し外をブラつく事にする。

雇い主のカーラが数日居ないんだ、この際領都を見ておこう。

案内に丁稚(でっち)犬人のホクを付けてくれた。

「恐らくクスナ様の手の者が監視してるでしょうが御気になさらず。」

出掛ける俺達にレンが何か面倒くさい事を教えてくれる。

過保護だな本当に。気持ちは理解出来るけど。


ホクは店に来てまだ3年の修行の身だって。

基本従業員は全員住み込みらしく、仕事とはいえ外に出られて嬉しそうだ。

尻尾振りまくりだし。獣族分かり易いぞ。


街並みを見ながらホクにナンコー領の事を聞く。

「ここいらじゃ中央領の物も手に入るんだろうけど俺は王都育ちでさ、別に珍しいとか無いんだよ。

ナンコー領って何が有名なの?そっちの方が興味あるな。」

「そうですね、湧水が豊富なのでそれを『ナン水』としてブランドにもなってます。

飲水魔具(カナレ)』には出せない柔らかい口当たりで内側領では貴族様に人気ですね。

ナンコー領の周辺領は穀物や果物の生産が盛んですから、それ等を加工して商品を作ってます。「ナンコー生煎餅」や「イイモ饅頭」などは昔からある定番の土産物ですし、最近は新しく「ナワラス」って言う薄いクッキーに色んな果物のジャムを挟んだお菓子が若い人に喜ばれますね。」


「うあ~食べてみたい、そのジャムってやつ。」

ジャムかよ。


水を売るって発想が俺には新鮮だった。

幾ら珍しかろうが水を買うなんて金を持ってる者しか出来ない。

富裕層向けの物だ。元手は無いに等しい湧水なんだし。


「これは自慢にならないんですが、、、、」

「何だ!?」

「『色町』が有名です。娼婦館や連れ込み宿、女性が接待してくれる遊女店などナンコー領に来る人々が楽しむ歓楽街として有名で、それを目的に来る人もいるみたいですよ。地元人には縁が無いですけどね。」


訪れる者にも金を落とさせる様に仕組まれてる。

流石「成金貴族」と言われるだけあるな。


ぶらつきながら買い食いしたりして領都を散策した。ステトはジャムを買ってたけど蜂蜜と変わらないんじゃないかそれ。ひと際大きな建物は仲介所(ギルド)だった。依頼が途切れる事は無いらしく、

種族問わず頻繁に出入りがあった。隣設された建物を覗くと身なりの良い者達が何かを指示したり話をしてた。そこは仲介所(ギルド)の商業部門専門の場所でまさに取引の最前線だとホクが説明してくれる。『取引所』と呼ばれ、仲介所(ギルド)が買い手売り手の橋渡しをして諸々の手配を行っているらしい。一通り見学したんで店に戻ろうと引き返す。

ホクに饅頭を買ってあげたら喜んでくれ、尻尾振りの勢いが強過ぎて風が出そうだ。


後ろから急ぎ足で来た男達が「邪魔だ!チンタラ歩きおって」と吐き捨て俺達を押しのける様に追い抜いて行った。


「何だよ?! ()けて行けばいいじゃんか。」

ステトが言った言葉に男達の1人が反応した。


「何だと! 誰だ!!?? 今言ったのは!!」

残りの男達も立ち止まり、こっちを振り返る。


「オレが言ったけど?」

「この亜人が!もう一度言ってみろ!!」

にじり寄ってステトに言う。

それをホクが間に入り取り直そうと彼女を庇ってくれた。


「旦那、こちらの方々は観光でいらっしたんです。

お忙しい皆様のお邪魔なったのなら申し訳ございません。」

ホクは丁寧に頭を下げる。


「観光?お前は何処の召使いだ?」

「いえ、僕は『メスティエール商店』の従業員です。」

「従業員? お前みたいな下等な種族がか?それが本当なら、ろくな店ではないな。

フン、もういい!! どけっ」

ホクが持っていた饅頭の包みを叩き落した。


「なんだって?」

ステトが素早く男の首に爪を押し付ける。


「ななな何だ獣人!?私の身分が解っているのか??下等種族には理解出来ないかも知れんが許される事ではないぞ!」

騒ぎが大きくなり、残りの男達が「無礼な!!」「亜人族め!」「我々は貴族様付だぞ!!」

叫び始め、周りにも人が集まって来た。


「ホク」

俺は下を向く丁稚に声を掛ける。


「『貴族付(つき』って?」

「各領の貴族様の代理で取引に来た商人の方達です。」

潰れた饅頭の包みから視線を逸らさず答えた。

「なんだ貴族じゃないのか、解った。お前は先に店に戻ってろ。後で代わりを買っといてやるからさ。」

「ステト」

俺が声を掛けると彼女は男から離れた。

「お前はホクと店に戻れ。」


「でも・・・・」

「お前は悪目立ちするな、この領の亜人族の為に。ホクの事を頼む。」

ステトは後ろめたそうだったが、ホクと一緒にその場を離れた。


「何処から来たんだ?」

貴族付(つき)と言う男に聞く。


「は?あれはお前の奴隷か?(しつけ)がなってないじゃないか!」

首をさすりながら俺の問いに答えずに文句を言った。


「あんた解ってないな、彼女は奴隷じゃない。あんたがどんな身分かは知らないが、ここいらじゃ下等種族なんて居ないんだよ。『メスティエール商店』も知らないなんて本当に商人か!?

それより、だ。その潰れた饅頭の事だけどな。」

「は?!饅頭だと? 何言ってる私は、、、、」


「勿体無いだろ」

俺はそいつをぶん殴った。

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